132 スライムさんと金庫
「こんにちは、おっと」
よろず屋に入ると、カウンターの前に黒い箱が置いてあった。
この前の、品物が入っていた木箱とはちがう。表面がなめらかで、つやつやの黒だった。
大きさは私は入れないだろうけど、スライムさんなら入れるくらい。
「あらいらっしゃい、えいむさん」
スライムさんが言った。
「スライムさん、どうかしたの?」
「あいさつが、いつもいつもおなじだと、ちょっと、あれかとおもいまして!」
スライムさんは、ぴょん、とカウンターの上の乗った。
「この箱ってなに?」
「これはきんこです!」
「金庫?」
「きちょうひんを、いれておきます! あけてみてもいいですよ?」
「どこを?」
私が見るかぎりでは、黒い箱はどこにもつなぎ目がないように見えた。
「こっちがわです!」
スライムさんはカウンターから降りてきて、金庫のカウンター側をのぞく。
「ぎゃくにすれば、すぐわかりますよ!」
「できるかな」
「かんたんです!」
「あ」
てっきり、金庫だというからすごく重いのかと思ったら、ひょいっと持ち上げられた。
木の箱より軽いかもしれない。
箱をくるりと回転させると、金庫のふたのような部分と、真っ黒い太い帯がふたつ、ついていた。
「ここに、うでをいれて、せおいます!」
「これを?」
「どうぞ!」
私は、スライムさんにすすめられるまま、金庫を背負って見た。
「軽いね」
首をひねって確認。
たしかに私は金庫を、ちゃんと背負っているけれども全然重くない。
いったん、床に置き直した。
「そして、このきんこのふたは、とくべつなかぎでしか、あきません!」
とスライムさんが出してくれた鍵で開けてみると、中はもちろん空っぽだった。
「この中に貴重品を入れるの?」
「はい! これをせおったまま、ぼうけんします!」
「へえ。でもこんなに軽いなら、ふつうの荷物を入れてもいいね」
「! さすがえいむさん! つまらないせんにゅうかんに、とらわれないかんがえかたです!」
スライムさんが体を震わせた。
「そのひとは、これにきちょうひんをいれておくと、おかねがへらないので、いい、といっていました」
「お金がへらないって?」
「そのひとは、まものにやられてしまうと、きょうかいでめをさます、たいしつらしいです」
「なにそれ!?」
魔物にやられて教会で目を覚ます?
「冗談で言ってたんじゃないの?」
「そういう、たいしつ、らしいです」
「体質……。その人は、生きてるんだよね?」
「もちろんです!」
「そうだよねえ」
死んでしまった人の話、の思うなら自然な気がしたんだけれども。
「だから、そのひとは、まものにやられても、だいじょうぶは、だいじょうぶなんです」
「へえ……」
「でも、そのとき、おかねがはんぶんになってしまうらしいです」
「お金が半分? どうして?」
「わかりません。だから、とくべつなきんこに、おかねをいれておけば、おかねがはんぶんに、ならないんじゃないか、っていってました」
「なるほど?」
たしかに、話の筋は通っているような。
そもそもなにも通っていないような。
「そのひとは、しょうばいもしているそうなので、おかねのかんりには、きびしそうです」
「そうなんだ。この金庫は安いの?」
「100まん、ごーるどは、しますね」
「ええ!? じゃあ、中に入れるお金がなくなっちゃうよ!」
「おかねというのは、あるところにはある、そういうものなのです……」
スライムさんは遠くを見た。
「それに、きんこじたいが、きちょうひんなら、きちょうひんをもちあるけるので、あんしんです!」
「なるほどね。あ、でも、いいのかな」
「なにがですか?」
「こんなに持ちやすい金庫だったら、金庫ごと、持っていかれちゃったりして」
「!! たしかに!」
「ね?」
「これは、じゅうだいなもんだいに、きづきましたね! えいむさん! さすがですよ!」
スライムさんは、カウンターに乗ったり降りたり、乗ったり降りたりした。
「え、そこまでではないと思うけど」
「すごいです! さすが、じゆうなはっそうをもつ、えいむさん……。これをたたえるには、どうしたら……」
「スライムさん?」
「えいむさんまつりをするしか、ない……?」
「スライムさん?」
「こうしちゃいられない! さんかしゃ100にんきぼの、えいむさんまつりを、かいさいします!!」
「エイムさん祭り!? スライムさん、それより、金庫のことを」
「はっ! そうだった! さすがえいむさん! さすがしっかりものの、えいむさん……。これをたたえるには、どうしたら……」
「スライムさん?」
「えいむさんまつりをするしか、ない……?」
「スライムさん?」
「こうしちゃいられない! さんかしゃ200にんきぼの、えいむさんまつりを、かいさいします!!」
「エイムさん祭り!?」




