128 スライムさんとハンモック
外に出ると、雲は全然なくて、風も、からっとかわいていた。
それでも歩いていると、だんだん、汗がじんわり出てくる。そういう天気だった。
「あ」
よろず屋の前にはスライムさんが出てきていた。
私が手を振ると、ぴょん、とはねてから、こっちにやってくる。
「こんにちは、スライムさん!」
「こんにちは! きょうは、すっきりと、晴れてますね!」
「うん。ちょっと暑いくらいだね」
「でもひかげは、すずしいですよ!」
「そうなんだ」
「こんなひは、はんもっく、どうですか?」
「ハンモック?」
「みてみたいですか?」
私たちはよろず屋の裏庭の先にある、木がならんでいるところに来ていた。林と、草原の境目のようなところだ。
「はんもっくは、こういうところでやります」
「どんなふうに?」
「ねます」
「寝る?」
スライムさんに言われて持ってきた箱を開けると、薄いふとんのようなものが出てきた。
ふとんのようなものの中を、何本ものロープが通り抜けているようだ。端で出てきて、束になっている。
一番端には、変なものが。
「これは?」
「きに、ひっかけてください」
「端の、これを?」
「そうです!」
端には、ぷよぷよした輪がついていた。
「わっかは、きにおしつけると、くっつきます!」
スライムさんに言われたとおり、輪を木の幹に押しつけると、つるん、と通り抜けて、引っかかった。
反対側も、近くの木に引っかける。
すると、空中にベッドができたようになった。
「たいじゅうが、かかるので、やわらかいものをひっかけないと! きが、きずつきます!」
「これに寝るの?」
「えいむさん! さっしがいいですね! そうです、これが、はんもっくです!」
「空中ベッドっていうこと?」
「! まさに! えいむさんは、なづけの、てんさいですね!」
「へへへ」
スライムさんは、ハンモックを飛びこえて、反対側に着地した。
「これにねると、ゆったりできます!」
私は、ふとんのようなところに手をかけた。
「寝てみていいの?」
「はい!」
「いいの? じゃあさっそく……」
私は体重をかけ、片ひざをついて、乗りこんでいこうとして……。
「あ、ちがいますえいむさん!」
「え?」
「はんもっくは、おしりからです!」
「おしり?」
「あしからいくと、おちます! さいあく、しにいたります!」
「死に!」
「だから、はんもっくは、おしりから。おぼえてください」
「わかった」
私は、スライムさんが指導するとおり、まず、奥の部分をつかみながら、おしりからハンモックに乗った。
「これでいいの?」
「はい! ななめに、ねてみてください!」
「わかった。よいしょっと」
倒れると、体が浮いたような感じになる。
ベッドとはまたちがう。
包まれている感じもあるけれど、ちょっと不安定で、それがよくもある。
「きもちいいですか?」
「うん。いいね」
「よかった!」
「このまま昼寝したくなっちゃう」
「いいですね! うらやましい!」
「スライムさんは、ハンモック、乗らないの?」
「ぼくはちょっと……」
スライムさんの声が、沈んだ。
私はハンモックを降りた。
「どうしたの?」
「ぼくは、あわないので……」
「どうして?」
「なるほど……」
私がいったん降り、交代でスライムさんがハンモックに乗ると、くるっと、包まれるようになってしまっていた。
これでは、外が見えないし、あんまりおもしろくなさそうだ。
「出してください!」
「はいはい」
私はスライムさんを中から出した。
「ぼくには、はんもっくは、まだ、はやかったのです……」
「じゃあ、一緒に乗ればいいんじゃない?」
「えっ?」
私がまず乗る。
頭側が空いていたので、そこにスライムさんに乗ってもらった。
そしたらスライムさんが、体を振って、ハンモックをゆらす。
「わー! はんもっくです! はんもっくです!」
「ちょっとスライムさん!」
「はっはっは! ぼくは、はんもっくです!」
「死にいたるんでしょ!」
「はんもっくには、ぎせいがつきものです!」
「スライムさん!」
「はっはっは! はっはっは!」




