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126 スライムさんとうさぎこう

 よろず屋に入ると、スライムさんがカウンターの上で水を飲んでいた。

 ワイングラスに入っている水を、なんとか顔を近づけて、すすっている。


「こんにちは」

「いらっしゃいませ!」

 スライムさんがこっちを見た。


「なにしてるの?」

「ゆうがに、みずをのんでいました!」

「ふうん?」

「さいきん、しょうばいにめざめましたので、ちょっと、ゆうがにしようとおもいまして!」

「商売に?」


「おかねをかせぐ。そういうことに、しんけんになるのも、いいですよね!」

 スライムさんが、きりっ、とした。

「そうだね。お店をやってるんだもんね」

「はい! まあ、ひさくを、てにいれましてね……」

 スライムさんがにやりとする。

「秘策?」

「ふっふっふ。うさぎこうです」


 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


「うさぎって、あのうさぎ?」

「はい! ぴょんぴょんと、どんどん、おかねをかせげるというなまえです!」

「どんなやり方?」

「えいむさんは、ほしがりですねえ。そんなにおかねがほしいですか?」

「じゃあ、いいや」

「すぐせつめいします!」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「これは、ふるいほんで、しらべたほうほうです。まず、かいいんしょうを、うります」

「会員証?」

「そうです。それを1000ごーるどで、えいむさんにうります」

「高いね」

「えいむさんは、それを、ほかのひとに、1000ごーるどで、うります」

「売っちゃうの?」

「はい」


「そしたら、1000ごーるどは、えいむさんと、ぼくで、やまわけします」

「500ゴールドずつ?」

「そうです。2かいめからは、えいむさんには、かいいんしょうは、ただで、あげます」

「ふうん?」

「それを、えいむさんは、1000ごーるどでうって、また、1000ごーるどのもうけは、ぼくと、やまわけします」

「ええと? 私は2回売ったら、1000ゴールドが、もどってくるってこと?」

「そうです! たくさんうると、ぼくも、えいむさんも、もうかります! さらに!」

 スライムさんが、にやり、とした。


「ここからがすごいですよ……」

「ふむふむ……?」

「えいむさんがうったあいても、だれかに、1000ごーるどで、うっていいです。そうすると、えいむさんは、そのひとに、かいいんしょうを、あげます」

「ふむふむ……?」

「そのひとがうれたら、えいむさんは、はんぶんの500ごーるどもらいます。その500ごーるどを、ぼくと、やまわけします」

「ふうん?」

「そんなふうにして、かいいんしょうを、うるひとを、ふやします! うったさきで、もうけがでると、どんどん、どんどん、ぼくがもうかるしくみです!」

「……おー……。おお?」

 私は、いったん、頭の中で整理した。


「私が二人に売れば、損をしなくなって、三人目からは、もうかるんだね?」

「そうです!」

「もしくは、私が売った相手が、さらに、誰かに売ってくれてれば、なにもしなくても、もうかるんだよね?」

「そうです! それが、すごいところです!」

「たしかに」


 売ればもうかるというのは、商売としてはふつうだ。

 でも、売らなくても、もうかるというのはすごい。


「もしかして、スライムさんが一番もうかるの?」

「いいところにきづきましたね! これは、はやくやれば、はやくやるほど、もうかるひとに、なれるんです!」

「なるほど……」


 最初の方の人がなにもしなくても、先の方の人たちが動いてくれれば、それだけでもうかってしまう。


「すごい方法だね」

「そうでしょう! ふるいほんに、のってました! これのすごいところは、もうひとつあります!」

「なに?」

「これをやれば、みんなが、もうかるんです!」

 スライムさんは、ぴょんととんで、くるっとまわって着地した。


「なるほど?」

 たしかに、売った先で、もうけさせてくれる人がいるんだから、いくらでももうかる……?


「だから、はやく、みんなにしらせて、みんなでもうかりたいです!」

「なるほどねえ。……でも、なんか……」

「どうかしましたか?」

「なんだか、みんなが、もうからない気もする……」

「ええ!? そんなばかな!」

「だって、ほら……。最初の方の人はもうかるけど、先の方にいくと、なんていうか……」

「なんていうんですか!」

 スライムさんが迫ってくる。

 ぷにぷに押してくる。


「はやくおしえてください!」

「だってね。先の方の人たちは、売る相手がいなくなっちゃうでしょ? もう、みんな買っちゃってたら」

「あ……」

「スライムさんはもうかるかもしれないけど、なんだか、もうからないのに、もうかるって、だまして売ってるみたいな……、スライムさん?」

 スライムさんの目から光が消えた。


「スライムさん?」

「それは、ふほんい、ですね……」

「えっと、だから」

「じゃあ、もう、これは……。はっ! そうだ! えいむさん!」

 スライムさんの目に、光がもどった。


「な、なに?」

「かんぜんな、あたらしいはっそうです! 2しゅうめを、やればいいんです」

「2周目……?」

「そうです! 1かいかったひとは、2かいめをかって、うればいいんです!」

「えっと……?」

「それで、またみんながかっちゃったら、3しゅうめです!」

「それは……?」

 私はお金の流れを想像した。


「それだと、私が売って、もらったお金をスライムさんにあげて、スライムさんは売ってもらった人にあげるけど、その人はまた……? お金がぐるぐる……?」

 想像できなかった。


「えっと、でも、2回は、買ってくれないかも……?」

「!! じゃあ、やくそうをつけましょう!」

「薬草?」

「7ごーるどをついかで、やくそうもつけることにしましょう!」

「それなら、ふつうに薬草を売ったほうが……?」

「こうしちゃいられない! かいいんしょうも、たくさんつくりますよ!」

「待ってスライムさん、もうちょっと考え直そうよ。あ、その会員証って、ひとつ作るのにいくらかかるの?」

「1000ごーるどですよ! さあ、ちゅうもんしてこないと!」

「だめだスライムさん! 考え直そう! 根本的に!」


 私は必死で、話を進めようとするスライムさんをつかまえて、説得した。

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― 新着の感想 ―
[一言] スライムさん。 それは駄目なシステムですw
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