125 スライムさんと朝昼晩の謎
よろず屋でスライムさんと話をしていたら、スライムさんが、ふと、体をびくんとさせた。
「……」
「どうしたの?」
「そういえば、さいきん、しごとじょうの、つきあいのひとに、なぞを、おそわったんですよ!」
仕事上の付き合いの人?
「謎?」
「そうです! いいなぞですよ!」
「ふうん? どういう?」
「それはですね。こほん」
「あさは、4ほんあし。ひるは、2ほんあし。よるは、3ぼんあし。このいきものは、なんでしょう」
言い終わったスライムさんは、私を見た。
「それが謎?」
「そうです!」
「ふうん……。どういうことだろうね」
朝は4本足で、昼は2本、夜は3本。
「時間で、足の数が変わる生き物なの?」
「そうらしいです」
「もしかして、スライムさんは答えを知らないの?」
「わすれました!」
「じゃあ、答えが合ってるかどうか、わからないんだね?」
「はっ」
スライムさんは、目を大きく開いた。
「しっぱい、しましたか……?」
「えっと、そうだね」
「しまっ……」
スライムさんはぴたりと動かなくなった。
「あ、でも、ひんとは、おぼえてます!」
動き出してくれた。
「どんな?」
「こたえは、にんげんです!」
「……答え?」
「たったいま、おもいだしました!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「いやあ、わすれたとおもってましたけど、おもいだせました! さすが、ぼくです!」
「そうなんだ。考えるひまがなかったよ」
「あっ、しまっ……」
スライムさんは動かなくなった。
「……でもスライムさん、思ったんだけど。朝が4本足って、どういうことかなあ」
私はよくわからなかった。
「えっと」
動き出した。
「なっとくかんが、あった、きがするんですけどねえ」
「そうなの?」
「ぼくはにんげんじゃないので、わかりませんけど。えいむさんは、あさ、4ほんあしに、なりませんか?」
「うーん……。あ、ベッドで起きるとき、よつんばいになるかも」
「それですよ! かいけつです!」
スライムさんは、くるっとまわった。
「おひるは、どうですか!」
「2本足で歩く」
「それですよ!」
スライムさんは、くるくるっとまわった。
「あとはよるだけです! よるは、どうですか!」
「3本足ってなんだろう」
「あしがふえたり、しませんか!」
「しないよ! それに……、寝るときは、夜もよつんばいになるよ」
「うーん……。おかしいですねえ」
スライムさんは、体をかたむけた。
「なんだろうね」
「こたえは、にんげんでは、なかった……?」
スライムさんの体がさらにかたむいた。
「朝。昼、夜」
「あさが、こどもで、ひるがおとなだったら、いいんですけどね」
スライムさんは言った。
「え?」
「きょうは、そとがはれてますし、おさんぽでもしましょうか……」
スライムさんはお店の外を見た。
「スライムさん、いまなんて?」
「おさんぽでもしましょうか……」
「そうじゃなくて。スライムさんが言ったとおりかも。朝とか、昼っていうのが、人生のたとえ話だとしたら、人間が答えかもしれないよ」
「えっ?」
スライムさんが、きょとんとした。
「そんな、だいぎゃくてんが、ある……? じんせいに、そんなことが……? まだ、あった……?」
「ほら、夜の3本足って、年をとった人が、つえをついているんじゃない?」
「!! えいむさん、めいあんですよ!」
「スライムさんが思いついたんだよ」
「いやいや、えいむさんがすごいんですよ!」
スライムさんは、私のまわりをくるくるまわった。
「やりました! やりましたよ!」
「でも、近所のおじいさん、つえを2本ついてるけどね」
私がつい言うと、スライムさんがぴたりと止まった。
「2ほんの、つえ……?」
「安定するから、両手で持つって。あ、ごめん」
「そういえば、ぼくのあつかったしょうひんにも、したに、ころころがついてるいすが、ありましたね……」
「コロコロ?」
「あるけなくても、すわったままで、うごけるんです!」
「それはすごいよスライムさん!」
「そうですか?」
「うん、歩けなくなった人が自由に動けたらすごいでしょ!」
「……じつは、ぼくも、そうかな、とおもってました!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「ケガとかしたら、年をとらなくてもふつうには歩けないもんね。大事だよ」
「はい!」
「他には、なにかあるの?」
「あります! ありますけど……」
スライムさんは、ちょっと自信なさそうな顔になった。
「なぞのこたえは、わからなくなってしまいましたね……」
「それは、スライムさんに謎を教えてくれた人に、またきいたらいいんじゃない?」
「!! それはめいあんです!」
「ね」
「はい! じゃあ、なぞはもういいので、いいしょうひんをしょうかいします! そらを、とぶいすです!」
「なにそれ! もう、ケガとか、どうでもよくなるやつだね!」
「はい!」
「なにそれ、見せて!」
「はい! たまに、かってにとぶので、あぶないですけどね!」
「えっ」
スライムさんは、うれしそうにお店の奥に走っていってしまった。




