表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/425

123 スライムさんとひのきのぼう

 よろず屋に向かっていくと、お店の前に箱が置いてあった。

 箱の大きさは、私が入れそうなくらいの大きさだ。

 上が開いていて、棒がたくさん入っているのが見えた。

 なんだろう。


「いらっしゃいませ!」

 たくさん入っている棒の中から、スライムさんがにゅっ、と出てきた。


「うわあ!」

 私は尻もちをついて、そのまま後ろに一回転してしまった。


「え、えいむさん、だいじょうぶですか!」

 飛び出してきたスライムさんが、私のまわりをぴょこぴょこ動く。


「うん、だいじょうぶ。ただ、ちょっと……」

「ちょっとなんですか!」

 スライムさんが、私のひざを、むにむに押す。

 ちょっとすりむいているけれど、血は出ていない。


「ここですか!」

 むにむに、むにむに。

「ちょっと、土で汚れちゃったっていうだけだよ」

 私は立ち上がって、ほこりを払った。


「髪の毛も、ほこりっぽくなっちゃった」

「すみません……。よかれとおもって、とびだしたんですけど……」

 スライムさんが、しゅんとした。


「次から気をつけてね」

「はい! よきときに、とびだします!」

 よきとき。


「えっと、それで、この棒はなに?」

 私は、スライムさんが飛び出したときに落ちた棒を一本拾った。


「あ、おつかれさまです! これは、ひのきのぼうです」

 スライムさんは言った。


「ひのきのぼう?」

「はい! これは、ぼうけんをするひとの、にゅうもんしゃが、つかいます!」

「入門者?」

「これが、さいしょの、ぶきです!」

「これが、武器……」


 私は、ひのきのぼう、をよく見た。

 握るところは、すこしだけ削った線がぐるっと一周している。それが三本。

 それが、すべり止めになっているみたいだ。持ちやすい。


 棒は角ばっていなくて、細長い円柱形だ。

 きれいに整っている、ただの棒というか……。


「これで、魔物と戦ったりするの?」

「はい!」

「でも、丸い部分で戦うの? あんまり、痛くなさそうだけど。角材のほうが強そうじゃない?」

「えいむさんのぼうりょくせいが、あふれる……!」

「あふれてないよ!」

「しかしですね……。えいむさんは、ひのきのぼうの、いちめんしか、みていないのです……!」

「一面?」


「はい。このぼうをつかえば、たとえば……、りょうりにも、つかえますね?」

「料理……? ……あ、たしかに」

 母が、器になにかを入れて、こんな棒の先ですりつぶしているのを見たことがある。


「あと、なにかこねて、それの上で棒を転がして、伸ばしたりしてるのも、見たことある」

「でしょう! もしかしたら、えいむさんのおかあさんは、ぼうけんしゃ、だったのかもしれませんね……」

「食堂で働いたことがあるって言ってたよ」

「さらに!」


 スライムさんは、ぷに、とひのきのぼうを、持ち上げた。


「えいむさん。においを、かいでみてください」

「におい?」

 鼻の近くに持っていくと、たしかに、においがする。


「どうですか?」

「うーん、かいだことがあるような、ないような。なんていうか……」

「そうです! むしよけの、こうかも、あるんです!」

 スライムさんは言った。


「虫よけ?」

「そうです。ぼうけんちゅうは、もりのなかで、ねたりするのです。そういうとき、これさえあれば、むしよけになるのです!」

「なるほど? そんなに、虫よけ効果があるの?」

「りろんじょうは」

 スライムさんは、重々しく言った。


「理論上は」

「はい。ですから、りょうりよう、むしよけよう、まものよう、と、3つも、つかいみちがあります!」

「ふうん。でも、料理と、魔物は、一緒にしたくないね」

「そこです!」

 スライムさんが、びしっ!


「ひのきのぼうは、ひとつでは、よくない、そのようにいわれたので、ぼくはこんかい、まとめてしいれました!」

「でも、ずいぶん多くない?」

「そんなことはないのです! ぼうけんしゃには、ひっすですから! ただ……」

「ただ?」

「3ほん、しいれるところを、30ぽん、しいれてしまった……。そういうところは、あったかもしれませんね……」

 スライムさんは、遠くを見た。


「スライムさん? まちがえたの?」

「まちがいとは、のちの、れきしが、きめることです……。ぼくはただ、いまを、いきるのです……」

「たくさん買いすぎたから困って、遊びに使ってみたの?」

「そういうかんがえかたも、ありますね……。ぼくは、ひとのかんがえを、せいげんしません……」


「まさか、これって意外と高かったりしないよね?」

「やくそうと、おなじ、7ごーるどです!」

「ならよかった」

 すこしほっとした。


「じゃあ、うちでも1本買おうかなあ」

「え? かってくれるんですか?」

「なんでも便利に使えるんでしょう?」

「はい! それならこんかいは、とくべつに、1ほんかってくれたえいむさんには、もう1ほん、さしあげます!」

「そう? じゃあ、玄関に置いてみようかな。虫よけに」

「いいですね! それなら、よろずやのげんかんにも、おきましょう! えいむさん、てつだってください!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ひのきの棒っていい匂いしそうですよね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ