117 スライムさんとブーメラン
「あれー? どこですかねー」
よろず屋に入ろうとしたら、裏からそんな声がした。スライムさんの声だ。
ちらっ、と建物の向こうに青い影が見えたので、そちらへ。
「なんだスライムさん、こんなところに……、いたの」
こっちを向いたスライムさんを見て、私の声はだんだんしぼんでしまった。
スライムさんの頭に、なにかが刺さっているように見えたからだ。
「こんにちは! えいむさん!」
近づいていくと、やっぱりそうだ。
私の手よりも大きな木が、スライムさんの頭に刺さっている。
く、の形をしている。く、の長さはスライムさんの体くらいで、く、の真っ直ぐな部分の片方が、スライムさんの頭に刺さっていた。
棒、というよりはもっと平べったい、細い板のようだ。
「あ、えいむさん! ちょうどいいところに!」
スライムさんは元気だった。
「てつだってください! さがしものです!」
「探しもの?」
「はい! えいむさんにみせるための、とっておきです!」
スライムさんが軽くはねたので、体がぷるん、頭の木もぷるん。
「あの、スライムさん、そんなことより」
「そんなこととはなんですか! ぼくは、ぶーめらんを、さがしてるんです!」
「ブーメラン?」
「はい! このへんにあるはずなんですが……」
「でも、それより」
「えいむさん! ぼくは、まず、ぶーめらんをみせたいんです!」
スライムさんは、すかさず言った。
「わかった。でも、スライムさんの頭に」
「えいむさん! きいてください!」
「……はい」
私はしぶしぶ言った。
ブーメラン、を見つけないと、話を聞いてくれないようだ。
でも、頭に刺さっているなんて、危ないような……。
「あっ」
もしかして、刺さっているわけじゃないんだろうか。
頭につけて楽しむ、装飾品?
だとすれば納得できる。
とにかく。
「ぶーめらん、をさがせばいいんだね?」
探さないとだめなんだね?
「そうです!」
「このへんに落ちてるの?」
まわりを見た。
背の低い、草が生えている。
「くさよりおおきいので、おちていたら、わかります! あそんでいたら、うっかり、なくしてしまったんです!」
「ブーメラン、てどういうもの?」
「どうぶつの、かりなどに、つかわれています!」
「ふうん? 武器?」
「ふっふっふ。ぶきであり、あそびどうぐでもあるんです! ふっふっふ! ふっふっふ! あれを見てしまったら、えいむさんもむちゅうですよ!」
スライムさんがぴょん、とはねる。
すると、頭に刺さっていた板がすぽっ、と抜けて、スライムさんのうしろに落ちた。
「あっ」
「どうしましたか?」
スライムさんが私を見上げる。
「えっと……」
「そうだ! あっちのほう、だったかもしれません」
スライムさんがぴょこぴょこ進み始めた。
「スライムさん、待って」
私は、スライムさんの頭に刺さっていた木を拾って追いかけた。
スライムさんのうしろを歩く。
頭を見る。
スライムさんの、刺さっていた、と思われるところが大きくへこんでいた。でもよく見ると、へこんでいたところが、ゆっくりもどってきている。
刺さっていたというより、上から押しつけられていただけのようだ。
やっぱり、装飾品なのかもしれない。
「ブーメランって、どんな形してるの?」
「すばらしいかたちです!」
「えっと……? 具体的には、どういう?」
「ぐたいてきに……。あ! ぶーめらんの、え、があります!」
「絵?」
「それをみれば、まるわかりです! こうしちゃいられない! まっててください!」
スライムさんは、ぴょこぴょこぴょこぴょこ! とお店に向かって走っていった。
「えっと……」
じゃあ、どうしようかな。
わからないんじゃ探せないしなあ。
私はふと、スライムさんの頭に刺さっていたものを見た。
手のひらよりは大きい。
「あれ?」
装飾品にしては、ちょっと泥がついていたり、よごれている。
何度か落としたんだろうか。
それとも。
私はよろず屋の屋根を見た。
あそこから落ちてきて、スライムさんの頭にのっかったんだろうか。
もしかして、単純に、ゴミ?
そう思ってみると、ゴミがスライムさんの頭にのっかっただけのようにも見えてくる。
草原の中で、一部、土が見えているところがあった。
私はなんとなく、ぽいっ、と木のこれを投げてみた。
すると。
「えっ」
くるくる回って、木の細い板は、私のところにもどってきた。
見まちがいかと思ってもう一回やってみると、また、くるくる回ってもどってきた。
なんだろうこれ。
おもしろい。
二回、三回とやっているうち、もどってきた木のこれを、受け止められるようになってきた。
これ、スライムさんに見せてあげよう!
「えいむふぁーん!」
スライムさんが、筒状に丸めた紙をくわえてやってくる。
「スライムさーん!」
私は木のこれを振って応えた。




