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112 スライムさんとやらさせていただく

「こんにちは」

「ようこそいらっしゃいました」


 よろず屋に入ると、スライムさんがいつもとすこしちがう感じだった。

 ていねいに、おじぎをするように、体をちょっと前に倒した。


「えっと、薬草3つください」

「おつかいですか? おえらいですね」

「うん?」

 おえらい?


 スライムさんは、カウンターにならべられている薬草を3つ持ってきた。


「21ごーるどになります」

「はい」

 私はカウンターの上に21ゴールドを置いた。


「ちょうど、おあずかりしました。では、そのてさげに、やくそうをいれるのを、やらさせていただきますね」

 スライムさんは言った。


「ふうん?」

 私はカウンターに手提げを置いた。

 スライムさんが薬草を、ぱぱっと中に入れた。


「ありがとうございました!」

「やらさせていただく?」

「どうかしましたか?」

「なんか、あんまり、スライムさんが言ったことない言葉だと思って。今日はどうかしたの?」

「ふっふっふ。けいご、ですよ!」

 スライムさんは自信満々に言った。


「敬語って、ていねいな言い方?」

「そうです! けいごを、やらさせてもらいました!」

「私は敬語に詳しくないんだけど、それが敬語なの?」


 なんだか、やる、とさせる、が一緒になって、よくわからない。

 やるあとに、させてもらって、ええと、なんだ?


「私には、ちょっとむずかしいかも」

「えいむさんは、まだまだですねえ」

 スライムさんは、ふふふと笑う。


「急に敬語なんて、どうしたの?」

「ぼくは、まだまだすごいすらいむに、なろうとおもいまして。だから、ていねいにはなして、さらに、すごいすらいむになるのです! だからこそ、すごいすらいむに、なるのです!」

「なるほど」


「じゃあ、最初の、おえらい、っていうのも敬語?」

「そうです! お、をつければ、なんでもけいごになります!」

「便利だね」

「はい!」

「やらさせてもらう、っていうのも?」

「そうです! むむ、と、いうことは……?」

 スライムさんは、声をひそめた。


「えいむさん。ここだけのはなしですが」

「うん」

 スライムさんが、ちょっと近づいた。


「やらさせてらもう、に、お、をつけたら、かんぺきになのでは……?」

「おおー」

「ふっふっふ!!」

 スライムさんが、ぴょん、とはねる。


「じゃあ、私が言ってみてもいい?」

「しょうがないですねえ。いちばんは、ゆずりましょう!」

「ありがとう」

 私は一回せきばらいをした。


「いくよ。私は、お薬草を、お手さげに、お入れました」

「えいむさん! やらさせて、をわすれてます!」

「あ、そっか。お手さげに、お入れるのを、おやらさせてもらいました?」

「そうです! かんぺきです!」

 スライムさんは、ぴょん、とはねた。


「なんだかむずかしいね」

 頭の中がごちゃごちゃしてしまう。

「そうですか? うーん、それならえいむさん。いっしょにおれんしゅうをしましょう!」

「私も?」

「そうです! いっしょに、けいごのたつじんに、なります! あ、ちがいました、えっと、おけいごのおたつじんに、おならないといけません!」

「おなら?」

 なんか変な言葉が。


「えいむさん! おなら、おやらさせてください!」

「ちょっと、スライムさん」

「ううむ」

 スライムさんは、集中しているのか、私の言葉が聞こえないようだ。


「もっと、お、があったほうが、ていねいかもしれませんね……。おおならを、おおやらさせて、おおください! こうですかね……」

「スライムさん! いや、おスライムさん!」

「なんですか、おおおえいむさん」

「ちょっと、なにを言ってるかわからなくなりそう」

「おおえいむさん、おをわすれてますよ!」

「ああ、えっと……」


「おいいですか? おけいごは、いえ、おおけいごをおしっかりおつかうおために、おおをおちゃんとおつけて、おえっと、おおつけおおやらおおさせて、おおおいただくおおおためには、おおおちゃんとおおおけいごをおおおなら、おおおおやら、おおおおおさせて、おおおおおおおおおおおおおおおお……。……」


 スライムさんが、宙を見て、動かなくなってしまった。


「おおスライムさん? じゃない、スライムさん!」

 軽くスライムさんの上をぺちぺちとたたく。


 スライムさんがはっとした。

 ぷるぷるっ、と頭を振る。


「えいむさん、いま、ちょっと、きがとおくなってました……」

「……スライムさん、敬語の達人はやめようよ」

「どうしてですか?」

「だって、ええと……。達人って、急にはなれないでしょ?」

「はい」

「だから、いっぱい、お、をつけるのは、私たちには早いよ、きっと」

「!! そうです! たつじんは、きゅうには、なれません!」

「もっと、ゆっくりやっていこう」

「そうですね!」


「私たちは、まず、決めた言葉だけに、お、をつけるだけにしよう」

「そうですね! じゃあ、きょうはなににおをつけますか?」

「うーん。お金かな」

「おかね。いいやすいですね!」

「そうでしょ」

「はい!」

「明日は、なににつけてみようか」

「ううむ。おやらさせておいただく……」

「それは早いの!」

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