111 スライムさんとだるま落とし
「さむいじきには、どんなことをかんがえますか?」
お店に入ったら、スライムさんが急に言った。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
「それで、なんだっけ?」
「さむいじきには、おめでたいものが、にあうとおもうんです!」
スライムさんは言った。
「おめでたいもの?」
「これです」
カウンターにあったのは、木だ。
細い薪を輪切りにしたみたいな大きさ、だろうか。
私の肘から手首くらいまでの長さの、円柱形の木を、6つに輪切りにしたようなものがならべてあった。
もちろん、輪切りにしただけじゃない。表面は、さわっても全然引っかかるものがない。つるつるすべすべに処理してあった。
「積み木? あ、ひとつだけ顔がかいてあるね」
おや、と思ったのは、他の木はなにも描いていないないけれど、ひとつだけ、ちょっと大きな木があって、顔がある。
「怒ってるみたいな顔だね」
「きょうは、これであそびましょう!」
「おもちゃなの?」
「はい!」
「どうやるの?」
「それは、ちょっと、あれですけれども……。あれですけれども!」
スライムさんは、力強い目つきで私を見た。
「考えてみようか」
「はい!」
「これの名前ってあるの?」
「なんとか落とし、だった気がします!」
「なんとか落とし……」
私は、あらためて、輪切りになった木、のようなものを見た。
「そうだ、あと、これがあります!」
スライムさんが横から引っぱってきたのは、小さいハンマーのようなものだった。
木でできていて、力仕事なんてできないような細い柄のハンマーだ。
「これもつかうらしいです!」
「ええ……?」
積み木と、木のハンマー?
「あれ、これ、穴があいてるね」
それぞれの木の真ん中に、穴があいていた。
「ぜんぶつみあげたら、そこに、このぼうがささってました!」
スライムさんが言った。
やってみた。
木を積み上げて、一番上に顔の木を置いてみると、ちょうど穴が一直線になる。
その穴に、ハンマーの柄をさすと、ぴったり通った。
しかも、木がずれなくなる。
なんだか、顔の積み木に、体ができたみたいだ。
「こう?」
「そうです! このじょうたいで、とどきました!」
届けやすいように、だろうか。
「じゃあ、こうする遊びっていうわけじゃないんだよね。なんだろう。抜くところまでは、合ってるだろうけど」
私は、木のハンマーを抜いた。
そこで、ふと、私は顔の木をさわってみた。
「どうかしましたか」
「顔があるっていうことは、これだけ、特別なんだよね」
「そうですね!」
「それと、積み木は全部、すべすべだよね」
「はい!」
「もしかして、顔の木を、落とす遊びなんじゃない?」
「!! そうですね!」
「やってみよう」
私たちは、準備を終えた。
「いくよ!」
「はい!」
私は、木のハンマーで、木を打った。
すると、カウンターの上をすべって、顔がついている木にぶつかって、カウンターから落ちた。
「おっと」
私は、下に落ちそうになった、顔のやつを受け止めた。
「おみごとです!」
「へへへ」
私たちの推理はこうだった。
顔の木を打って、落とす遊びだ。
だけど、そのままハンマーで落とすなら、かんたんすぎる。
だったらどうするか。
「他の木を打って、顔の木にぶつけて、落とす遊びだね」
「はい!」
直接じゃないので、ちょっとむずかしくなる。
それに。
「木にぶつけて、他の木にぶつけてから、顔の木にぶつけたら、そっちのほうがむずかしいから、勝ちってことにしようか」
「めいあんです!」
「たくさんぶつけて落としたほうが、勝ちってことにする?」
「はい!」
「でも、落とせなかったら、負けね」
「! とくをしようとすると、そんをする……。むずかしいですね!」
「今度はスライムさんの番だよ」
「はい! ……」
ハンマーをくわえて、振ろうとしたスライムさんだったけれど、急に止まった。
「どうしたの? おもしろくない?」
「おもしろそうですけど! けど!」
「けど?」
「これって、おめでたいですかね?」
「……うーん……」
「あと、おめでたいって、なんですかね?」
「…………うーん…………」
私たちは、しばらく考えていた。




