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11 スライムさんと盗賊

 今日は、母のいいつけで届けものをした帰り道、スライムさんのよろず屋に寄っていくところだった。


「あれ?」


 私はいつもと反対側の道から来ていたので、木や草の間からよろず屋の裏手が見えていた。そこから誰か出てきたのだ。

 頭から足まで黒ばかりの服を着ている人で、手には包みを持っていた。走り出すとものすごく速くて、動きがまっすぐではなく思わぬ方向に進むので、すぐに私は見失ってしまった。


 私は胸さわぎを覚えていた。あのようにすばやく、そして姿を隠そうとしている服装をしている人は、なにか悪事を働こうとしていることが多いからだ。


 私はよろず屋にかけこんだ。

「スライムさん!」

「おや、きょうはとてもげんきがいいですねえ!」

 スライムさんがカウンターの上に飛び乗った。

 いつもと変わらない様子に、私はなんだか気が抜けてしまった。


「スライムさん、だいじょうぶ?」

「なにがですか」

 スライムさんはきょとんとしている。


 私は店内を見わたした。いつもと同じように、カウンターの中、外を問わず、いろいろなものが置いてある。きれいにならんでいるとはいえないものの、誰かが荒らした、というほど乱れているわけでもない。


「おなかでもすいたんですか? よかったら、どらごんのしっぽというものがありますので、たべますか?」

「いらない」

「ふふふ。これをたべると、にんげんでもしっぽがはえるといわれています。さーびすですので、おかねはいりませんよ!」

 スライムさんが得意げにする。

 いつもと変わらない様子だ。


「ねえスライムさん、なにか変わったこと、なかった?」

「かわったことですか?」

「さっき、このお店の裏から、黒ずくめの人が出てきたように見えたんだけど」

「ん!」


 そう言うと、スライムさんはカウンターから降りて、奥でごそごそと商品をいじり始めた。


「やられました!」

「どうしたの?」

「とうぞくです! しょうひんをもっていかれてしまいました!」

「ええ!」


 私はカウンターの横の小さな木戸を開けて、スライムさんのところまで行った。


 スライムさんの前には、細長い空箱があった。


「ここには、へれんほろんのつめ、が入っていたんです」

「へれんほろんのつめ」

 たぶん、また名前はちがっているんだろう。

「とうぞくめー!」

 スライムさんは、どこか遠くを見ながら体をブルブル震えさせていた。


「ん?」

 よく見ると、細長い空箱のはしっこに、金色のものがあった。

 手にとってみる。金貨だ。五枚もある。


「これは?」

「それは、へれんほろんのつめの、だいきんです!」

 スライムさんは言った。

「代金? どういうこと?」

「とうぞくは、かってにおみせのものをもっていって、かってにおかねをおいてにげるんです。ひきょうものです!」

 スライムさんはまた体を震わせた。


「ええと、そのお金はすくないの?」

「たりてます!」

「じゃあ、その人に売りたくなかったの?」

「へれんほろんのつめは、とうぞくさんのために、にゅうかしたものです!」

 スライムさんは言うと、金貨の下にあった紙切れを私に見せた。


『次は狼の骨を三つください』


「狼の骨?」

「そういうものがあるんです! またにゅうかしないと!」

「ええと……、その人盗賊なの?」

 お客さんが希望の商品を指定して、スライムさんが入荷して、買いに来て、というのはお店としてふつうのことのように思える。しかもこれまで何度もやりとりをしているようなのだ。


「だめです!」

 スライムさんは言った。

「どうして?」

「とうぞくさんのやってることをみとめたら、どのおきゃくさんも、おかねさえはらえば、かってにおみせにはいって、かってにもっていっていいことになってしまいますよ!」

「……たしかに」


 スライムさんの言うことはもっともだった。

「スライムさんの言うとおりだね」

「でしょう! そもそもどうしてぼくがおみせをやっているのか、しってますか?」

「知らない。どうして?」

「いまはいそがしいので、かんけいないはなしはしません!」


 スライムさんはよっぽどあわてているのか、いつも以上によくわからないことを言いながらバタバタ動いていた。行ったり来たりしているだけで、特になにをしているというわけでもなさそうだ。


「ねえスライムさん」

「なんですか!」

「スライムさんは、その盗賊さんに、ちゃんと表から入ってきてって言ったことあるの?」

「ちゃんとはなしたことはありません!」

「だったら、スライムさんも、商品のところに手紙を置いておいたら、読んでくれて、わかってくれるかもしれないよ」

 スライムさんが止まった。


「……なるほど! すぐかきます!」


 スライムさんはカウンターの上に、紙とインクとペンをならべた。

 そしてぷよぷよしている部分でなんとかペンをはさんだけれども、そこで止まった。


「スライムさん、どうしたの?」

「ぼく、てがみはかけません」

 そういえば、表の看板もふらつきながらやっと書いたような字だった。あの大きさでぎりぎりなのかもしれない。


「じゃあ私が書こうか?」

「いいんですか!」

「うん。なんて書くか決めた?」

「はい!」

「なんて書くの?」

「ええと、『とうぞくさんへ』」

「盗賊なのかな」

「とうぞくです!」


 私は、スライムさんと相談しながら一緒に手紙を書いた。

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