106 スライムさんとこわいダンジョン
よろず屋に向かっていると、スライムさんが外にいるのが見えた。
お店の横にある草原を、行ったりきたりしている。
「スライムさん?」
呼びかけたら、スライムさんが止まってこっちを見た。
「えいむさん! どうしましたか!」
「スライムさん、なにしてるの?」
「これは、だんじょんをつくってます!」
「ダンジョン?」
スライムさんのところまで行くと、草原に、ぽつり、ぽつりと物が置いてあるのが見えていた。
「だんじょんは、どうくつとかです。ぼうけんがすきなひとが、はいります」
「聞いたことある。魔物も出るんでしょ?」
「ふっふっふ。ぼくのように、きょうあくな、まものが、うようよしていますよ!」
スライムさんが左右に体をゆらしながら言った。
「でも、おたのしみもあります」
「なに?」
「おたからです!」
スライムさんは、ぴょん、とはねた。
「だんじょんには、たくさんのたからがねむっているそうです!」
「へえ」
「きょうは、それをえいむさんに、たいけんしてもらいます!」
「え?」
「ここがいりぐちです」
「ここね」
私は草原の、スライムさんに案内された場所に立った。
「はいってください!」
「はーい」
「あ、そこはかべです!」
「おっと」
「はい、そうです、そうです」
「お、あそこになにか落ちてるね」
「ひろってみてください!」
行ってみると、コップだった。
「コップだ」
「おたからですよ!」
「そうなんだね」
私はダンジョンに詳しくないのでわからないけれども、こういうものも落ちてるんだろうか。
「あ! まものですよ!」
「えっ?」
見ると、落ちていたのは、犬のぬいぐるみだった。
「あー、えいむさん、だいじょうぶですかー!」
「えい」
私は、一発で犬のぬいぐるみをひっくり返した。
「つ、つよい……!」
「ふふ。私は伝説の、あれだったのだ」
「でんせつのあれ! すごい……!」
そうやって、コップと、薬草と、ペンを拾って、魔物を三体も倒した私はダンジョンを出た。
「地上に帰ってきたよ、スライムさん……!」
「よくかえってきましたね!」
「こんなに見つけた」
「すごい! えいむさんは、さいのうがありますね!」
「へへ」
「じゃあ、これはえいむさんにあげますよ!」
「そうなの?」
「だんじょんとは、そういうものなのです!」
私は、拾ってきたものを見た。
「……でも、これって」
「なんですか?」
「これはスライムさんのだけど、ダンジョンの場合は、誰かの忘れ物かもしれないんだよね?」
「うーん、そうですね?」
「だったら、持って帰ったら、持ち主に返さないと、泥棒ってことになっちゃうのかな?」
「うーん?」
スライムさんは、体をかたむけた。
「でも、だんじょんでひろったんですよ!」
「うっかり落とした人は、気づかないかもしれないよね? それを私が拾って帰って、その人の前で使ってたら、泥棒! って言われちゃうかも」
「うーん……」
私たちはしばらく考えた。
「ダンジョンはこわいね」
「そうですね」




