105 スライムさんと催眠術
「さいみんじゅつって、しってますか?」
お店で薬草を食べていたら、スライムさんが思い出したように言った。
「催眠術。聞いたことある」
「そうですか? じゃあ、やってみましょう!」
スライムさんは、カウンターの上で、体をぴこぽこさせていた。ほぐしているのかもしれない。
「すぐできるものなの?」
「はい! えいむさんは、ぼくのはなしをきいてください」
「わかった」
「いきます。えいむさん、あなたは、とりになります」
「鳥? どんな?」
「あ、しつもんはしてはいけません!」
「わかった」
スライムさんがコホン。
「えいむさん。あなたはとりになります」
「鳥ね」
「かくにんもいりません」
「はい」
「へんじもいいです」
「……」
「えいむさん、あなたはとりになります」
「……」
「とりになります」
「……」
「はい、はばたいてください」
「はばたくの?」
「えいむさん!」
「あ。……」
私は口を閉じて、お店の中をうろうろしながら、手ではばたくような動きをした。
「いいですね」
「……」
「とりですよ」
「……スライムさん、これはなんなの?」
私は、はばたくのをやめた。
「さいみんじゅつは、とりになる、といわれたら、とりになったふりをするあそびです」
「へえ。なんで催眠術っていうの?」
「なまえというのは、むずかしいりゆうがあるばあいが、あるのです……」
「ふうん。スライムさんもやる?」
「! やります!」
スライムさんは、ぴょこん、とカウンターの上ではねた。
「スライムさんは、鳥です……」
「はい!」
スライムさんは、ぴょこぴょこ歩いていたけれども、すぐ止まってしまった。
「スライムさん?」
「……」
「スライムさんは、鳥です」
「……」
「はばたいてください。……?」
「えいむさん。ぼく、はばたけません」
「あ……」
スライムさんは、かなしそうに下を見た。
「ぼくは、とりに、なれない……」
「……でも、私も鳥じゃないよ」
「えっ?」
「私だって、手をバタバタしてただけだもん」
「でも、はばたきました!」
「とんでないもん」
「……おや?」
スライムさんが、顔を上げた。
「鳥から見たら、私もスライムさんも、どっちも鳥じゃないよ!」
「そうですね! よくかんがえたら、とばないとりもいます! ということは、ぼくは、とりより、とりかもしれない……?」
「やろう、スライムさん」
「はい!」
私とスライムさんは追いかけっこをした。
私は、はばたいて、スライムさんは、ぴょーん、ぴょーん、と高くとびながらの追いかけっこだった。
「ぼくはとりです!」
スライムさんは、自分で、自分に催眠術をかけているようだった。




