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104 はだかのエイム様

「私だ」

 とよろず屋に入っていくと、スライムさんがカウンターの上で、ゆっくりと私を見た。

「いらっしゃい」


 私たちは、顔を見合わせてくすくす笑った。

 よくわからないけど、昨日から私たちの間で、はやっていた。


「えいむさん、きょうは、おもしろいものがありますよ!」

「なに?」

「おもしろいものがほしいのは、だれですか?」

「私だ」


 また、私たちはくすくす笑った。


「それで、これです!」

 スライムさんが気を取りなおして、カウンターの下にとんだ。

 そしてすぐ、ぴょん、ともどってきた。


「どうぞ!」

「うん?」

 スライムさんは、私を見ているだけだ。


「どこ?」

「ここですよ!」

 スライムさんが、ぴょんぴょん動く。


「ぼくの、あたまのうえにあります!」

「なにが?」

「まふらーです!」

 よくわからない。


「どういうこと?」

「あれ? えいむさん、みえないんですか? おやおや? わるいこには、みえないまふらーですよ?」

「ふうん……。あ」


 私はぴんときた。


「それ、あれでしょ! ……じゃあ、私はこれをスライムさんにあげる」

「なんですか?」

「帽子。どうぞ」

 私は、なにもない、手だけをスライムさんにさしだした。


「なにもないですよ?」

「あれ? 悪い子には、見えないのかもしれないなあ」

「えいむさん。ふざけないでください」

 スライムさんが、ぴしゃりと言った。


「えいむさんは、なにももってないですよ!」

「……どういうこと?」

 ちがうんだろうか。


「これですよ!」

 スライムさんがぴょんぴょんする。


 あんまり言うので、スライムさんの頭の上に手をやってみた。

「あれ?」

 ふわ、という感触があった。


「本当にマフラーがある」

 手にとってみることも、できた。


「えいむさん、だからいってるでしょう?」

「うん……。ごめんね?」

「いいってことですよ!」

「これ、巻いてみてもいいの?」

「いいってことですよ!」


 私は、マフラーを首に巻いてみた。

「あったかい」

「でしょう! まふらーですから!」

「どうして見えないんだろう。あ、私、悪い子なのか……」

「ち、ちがいますよ! じょうだんです!」

 スライムさんが、ぴょんぴょんする。


「わかってるよ」

「! えいむさん! ぼくをおどかしましたね!」

「へっへー」


 私がちょっとよろず屋の中を走っていたら、急に首がぐっ、と引っぱられた。

「ぐえ」


 びっくりして立ち止まる。

 手で、見えないマフラーをたどってみると……。


「あ」

 壁に引っかけてある、小さい盾に、マフラーのはしっこが引っかかっていた。


 それを言うと、スライムさんがむずかしい顔になった。


「みえないまふらーは、あぶないのかもしれませんね……」

「私も、ちょっと悪い子だったしね」

「そうですね。ちょっと、わるかったですね……」

「気をつけよう」

「きをつけるのは、だれですか?」

「私だ」


 私とスライムさんは、くすくす笑いながら、慎重に、見えないマフラーを箱にしまった。 

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