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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第一章 アタスタリア王国編
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10. お前の方がちっさいわ

 2時間程自動車に乗っていたが一旦休息のために停車した。

 丁度、ダルメール-エスナダンジョンの近くの小規模なキャンプの前だ。

 ここは、ほら……僕を倒した臓器を持っているあの魔物がいるダンジョンなのだ。

 見渡すと、ダンジョン開拓団のマークを点けた方が十数名ほどと、他には商人やら結構な人がいた。


「それではちょっと様子見してくるかの」 


 ミズチ様はさっさっと自動車から降りてしまった。


 僕も降りようとしたのが、警護の人達が直立不動となっていたので、その場で固まってしまった。


「アレン、早くしろよ。 ダンジョン開拓団なんてめったに会えないんだぞ、何やってんだよ!」


 レビン兄よ、この状況で降りれるというなら降りてみろよ……とも思ったがレビンはフリーダムなので何をしでかすのか分かったものではない。 僕は断固として兄を通すまいと踏みどどまった。


「警護団長は誰なのじゃ? こんな堅苦しいのは疲れるら止めてほしいのじゃ。 引き返したくなるじゃろが」  


 ミズチ様に脅された警護の方たちは、団長と思われる人に促されるようにして散会していった。 警護体制の物々しさが解かれたので僕は自動車を降りようとしたのだが、その瞬間に好奇心に耐えかねたレビンに押されてよろけてしまった。


「アレン、やっぱり車で酔ったんじゃないの? 回復したほうがいい?」 


 母は優しいのだが、状況的にレビンに押されてよろめいただけだと分かっているよね。 

 母には何か思惑があるのだろうか? 僕は猜疑心の塊になってしまっていた。

 だけど母に回復魔法を使わせるのはもったい無いので、すぐにしっかりと歩いてみせた。 


「母様、大丈夫です」  


 僕は元気なところをアピールしてみせた。  


 レビン兄は僕を押しのけた後、開拓団方へ走って行ってしまった。

 僕と母はミズチ様のお付きという感じで、キャンプの方へと歩いて行った。

 あの魔物騒動以来、少しの間攻略が(とどこお)っていたのだが、ミズチ様の実験により状態異常魔法対策もできた(実際には光魔法系統を近くで使わないこと)ため、攻略が再開されていたのだ。 そして問題だった魔物の生息域の奥で、希少鉱物の鉱床が見つかったそうなのだ。 それで現在このキャンプはかなり活発になって来ているのだ。 ここは伯爵領と男爵領との丁度中間地点であり、どちらの管轄でも無かったと思うのだが、力関係で伯爵領となるんだろうな、と他人事のように考えた。 


「おや? ミズチ様、アレン殿、カイヤ殿。 ご無沙汰しております。 どうしてこちらへ?」


 見たことのある人だと思っていたが、あの魔物の解体実験を手伝ってくれた開拓団の方だった。

 母はあの開拓団の騒動の際の治療で知り合いになっていたのかもしれない。


「ちょっと王都に用があっての。 休息がてら立ち寄ったのじゃよ」


「左様でございましたか。 あの研究の成果のおかげで、我が開拓団は大変助かっております。 おかげ様で、希少(きしょう)な鉱床も見つかり、今は毎日忙しくしております」 


「それは良かったのじゃ。 研究が役立っているのを実際に見るのはいいものじゃな」


「はい。かなりの利益が見込める状況になりまして、やっとこの開拓団も王国でも注目されるようになってきたところです」  


 まぁエリートの魔術師による開拓団といっても所詮(しょせん)田舎の開拓団だからね。 

 分かるような気がしますよと、僕は開拓団の方に微笑んでおいた。


「ところでこのダンジョンの領有権は、どうなったのじゃ? かなりの利益ともなると開拓団だけで占有ともいくまい」 

 

「はい、話し合いの結果ですが、通常の場合はすべて伯爵様の領有となるはずなのでしたが、ミズチ様とアレン殿に多大な貢献をいただいたため、領有は伯爵様、利益に関する税は伯爵様と男爵様へ半分づづ収めることとなりました」 

 

 ミズチ様の目がキラリと光ったように見えた。


「ほう…これはエスナにちょっと言っとかねばならんのじゃ」


 おお~ 僕は領主様へも貢献できたのか。 僕はかなり嬉しくなった。 


「ところで、あれは何じゃ?」


 ミズチ様が指し示す方向を見ると、何やら人だかりができていた。


「ああ~あれでございますか。 実はあの魔物の肉が美味なことが判明しまして、解体の講習会をしているのでございます」


 ウェッ あんな物食べるのか。 最初に食べた奴って、どんな勇者だよ。 馬鹿なんじゃないのか?


「よく食べてみたものじゃな。 大したものじゃ」 


 そこ()めるとこなの? 食材を発見した貢献は分かるけども、やったことは無謀な行為だったんじゃないのかな?


「ええ。 お恥ずかしいのですが、うちのサポート部の男女が何か言い争いをしていたようで、そのうち女性が混乱して食べてしまったようです。 それで何も起きなかったので食べれることが判明したのです」


 それって、痴情(ちじょう)のもつれで自殺を図ったという事なんじゃない? 外部へ説明するときには分からないようにオブラートに包むべきじゃん! 僕は呆れ果ててしまった。


「その後の動物実験でも問題なかったので、治療師付きでの実験試食会も開催して安全性も実証できたわけです。 試食でかなり美味ということだったので、今では人気の食材になっております」


 そうだよね、普通は動物実験が先だよね。


「結構人気なのじゃな」


「はい 新しい食材は美味と評判になりましたので」


 (しばら)くして兄がこちらへ何かを抱えて走ってくるのが見えた。


「母さん、いいもの(もら)って来たよ」


 何を貰ってきたのか僕は分かってしまったのだが、それにしてもレビン兄、知らない人に物を貰ってはいけませんと習わなかったか? そんな事じゃ王都見学は許可できないな! 

 僕は父になったつもりで心の中で兄を(しか)ってやったのだった。  

 それにしても最近の僕は突っ込みばかりじゃないか。 たまにはボケてみてもよいのでは? と一瞬だけ思ったのだが、ミズチ様を見て考え直した。 この世にはボケて場を(なご)ませようとした発言を真に受けて実行し、惨事(さんじ)を引き起こしてしまう人種も存在するのだ。  ミズチ様、普通なら魔物の死体に回復魔法を掛けようとしませんよね?



「あらまあ、串焼肉ね。 良く貰えたわね」  


 母は兄の頭を()でようとしたのだが、兄はさっ避けた。 反抗期? そんなお年頃なのだろう。

 

「ほう、あの魔物の焼肉か。 ちょっと試食してみるかの」


 ミズチ様は、一串とって食べてみた。 

 ミズチ様のチャレンジ魂は、研究ばかりではないらしい。 あの醜悪な形状と凶悪な状態異常を持つ魔物なのに……。 僕には絶対無理だな。


「初めての味じゃな。ちょっとピリピリするが、どこか遠くへ連れて行かれるような恍惚(こうこつ)感を与えてくれるの」


「ほれ、アレンも遠慮せず食べてみるのじゃ」


「……」


 いや僕は無理だから、本当に無理だから、僕は食べません! 

 無理だからと(かたく)なにイヤイヤししていたのだが、ちょっとした(すき)にレビンが無理やり僕に食べさせた。


 うげあぁぁ~~~おいしい! じゃなくて、何するんだ兄! 


 弟をからかいたくなるのはわかるが、今はその時じゃない! 

 僕は(にら)めつけたのだが、兄はニヤニヤ顔だ。 

 あ、これはリアクションすると調子にのってくるやつだ。 

 僕は心を鬼にして、ニンマリとしてやったのだった。


「幼子を見ていると、微笑ましいの~ 」  


 ミ、ミズチ様。 幼子はないでしょう。 せめて…子供と言ってほしかった。 

 僕と兄はミズチ様をじとりと凝視してやったのだった。 決して睨んだのではありませんよ。



 その後一行は休息を終えて再び自動車へ乗り込み、2時間ほどでダルメール伯爵領の中心都市であるミアモーレ市へと入ったのである。 まだちょっと時間的には早いのであるが、ここで一泊することになるのだ。 男爵領を出立(しゅったつ)したことを知らせる早便(はやびん)はすでに王都へ出ていたので、もう強制送還部隊はやって来ないないだろうとのことだった。


 僕たちの一行は市の専用の駐車場で馬車へと乗り換えて市中へと入って行った。 

 ミアモーレ市は簡素だが栄えた都市との評判だっがのだが、ハッキリと言って我が男爵領のマインタレスの町と雰囲気は似たり寄ったりだった。 ただし、市の中心付近にあるお城はかなりの大きさと迫力を備えているのが違うといえば違う。 領主の伯爵様には一応お忍びでの旅行であることを伝えてあるので、物々しいお出迎えはこそなかったものの一応お城への滞在することにはなっていた。 

 護衛の方は15名であり、僕の家族とミズチ様で、総勢19名の一行が馬車で市街を通行して行くわけであるが、珍しくもない光景なのだろうか、あまり注目されることもなく無事お城の城門へと到着した。 もちろんお城の衛兵には事前に知らせが回っていたのだろう。 問題なくお門を通過して中へ入ることができた。 

 広いが簡素で優美な植物が植えられており、池や川まである人工的に作られた広めの庭園を通過し、お城の入口で馬車は停車した。 そこには、人好きのする感じの老年男性を中心として、騎士達や使用人たちが控えていた。 


「ミズチ・レオノーラ・アタスタリア様。 ようこそおいでくださいました。 このダルメール・ドフォン心より歓迎申し上げます」


 ミズチ様のフルネーム初めて聞いたかもしれない。 

 結構長い名前だなというか、この国の名前はアタスタリア王国。 つまりそういう関係者ということだ。    

 ある程度は想像していたし意外性は無いのだが、レビン兄、今更驚愕(きょうがく)するのはおかしいんじゃないかな。 変なことを口走らないかとハラハラしながら兄を見守ったのだが、そこはわきまえている様でちょっと安心した。 反抗期盛りの悪ガキで中二病に罹患(りかん)したばかりの兄とはいえ、心配してしまった僕は兄を少し(あなど)っていたのかもしれない。

 

「ダルメール卿、歓迎感謝するのじゃ。 本日は非公式の立ち寄りゆえ、できるだけ楽にしてほしいのじゃ」


「ありがとうございまする。ではこちらへ」 


 ダルメール卿自らが案内を買ってでたようだ。


 僕たちは配下のフリをして、ミズチ様の後をついて行った。

 ミズチ様は、警護の数名を伴って、公式ではない歓迎の宴へと連行されてしまったわけだが、僕たちは来賓(らいひん)用と思われる部屋へと案内されてそのまま閉じ込められてしまった。  つまり、やっと一段落できたというわけである。


「予想はしていたけれど、少しは観光したかったな~」 


僕はため息をつきながら不平を口にした。


「アレン、そこじゃないだろ、 ミズチ様って何者だよ なんなんだよ!」 


レビン兄が僕に()め寄って来た。


「アタスタリアという名前があるのだから王族なんでしょ。 今更(いまさら)何を言っているの?」


「いや そりゃそうだけど、……いや違う。 お前はこのことを知っていたのかどうか聞いてるんだよ」


(にい)さんが、”何者なんだよ” って聞いたから答えたんじゃないか」


「アレン、そこじゃないって言ってるだろ。 知ってたのかって言ってんだ!」


 ちょっと兄は、状況に対応できずに混乱しているようだ。 

 所詮(しょせん)まだ11才のガキだから許せる範囲なのではないだろうか。 

 これ以上怒らすのもアレなので、ちゃんと答えることにした。


「知らなかったよ。 あのミズチ様が教えるわけないでしょ?」


「おかしいだろ! なんでお前は落ち着いていられるんだよ」


「そんなの、王族のような偉い人だって見てればわかるじゃん」 

 

 兄にも分かるようにちゃんと説明してやった。


「見てればわかるってお前……。 母さんは知ってたの?」 


 兄の矛先(ほこさき)は母様に向かってくれたようだ。


「兄弟喧嘩(げんか)って珍しいわね。 初めてじゃない?」 


 母はニヤニヤしている。


「母さん真面目に答えて!」   


 本当に兄は混乱しているようだ。 さすがに可愛そうになってきた。


「エスナ様の態度からそうじゃないかと思っていたわよ。 ちょっとレビン落ち着きなさい。 こんなところ人に見られたらどうするの?」 

 

 出た。

 世間体を使っての戦略的”なだめ”攻撃。


 僕はそっとフォローしてあげることにした。


「兄さん、まだ小さいんだから、分からなくたって仕方がないよ」 


「お前の方がちっさいわ、お前に言われたくないわ!」  


 兄はとうとう泣いてしまった。

 僕のフォローは失敗したのだ。 残念である。


 兄はミズチ様の素性について相当ショックを受けたに違いない。  

 こういう状況の時は素直に泣かせてあげるのがストレス発散になるはずなのだ。


 6才になった時の僕と同じように……。 


 僕は可愛げのある兄を優しく見守ってあげたのだった。

 兄の泣く姿を、こっそりと写真に取っておいたのは言うまでもない。

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