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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第3章 呪いの歌
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17. ひなみとアルフレッド - 1

「アルフレッドさんっ!!」



 うわああぁぁ、もう、全滅かとすごくはらはらしてしまった……!

 助けに入ってくれたアルフレッドさんを見て、すごく安心して、もう1度大きく名前を呼ぶ。ドラゴンに乗って、空から魔法を放ったその姿は、なんだかもう、英雄と言ってもいいのではないだろうか。

 その身に纏う焔はきらきらと輝いて、優雅な仕草で放たれる魔法は圧巻だ。

 大きく空で吠えたドラゴンは……ええと、名前は確か、シュトラインだったかな? 大きく空へ羽ばたいて、そのまま私たちの前へと降り立った。



「遅くなって悪かった。まさかひなみがいるなんて知らなかったから、驚いた」

「いいえ、ありがとうございます。もう、駄目かと思いました……」

『助かりましたぽ! ありがとうございますぽ!』

「気にするな。当然のことをしただけだ」



 何の問題もないと、何事もなかったかのように話す姿は16歳とは思えない程にしっかりとしたものだった。

 それと、アルフレッドさんが戦っているところを見たのが初めてだなと気付く。あんなすごい魔法を使って、ドラゴンを使役するのか。いったいどれほどすごい人なんだろうと思って……そうだ、勇者パーティーに所属しているとシアちゃんが言っていた。ということは、正真正銘、すごい人です。



「助かりました、アルフレッド様。これ以上、この場を持たせるのは厳しかったでしょう」

「イクルか。……いいや、もう少しなら持っただろう。でも、タイミングを計ってくれたのは助かった」



 他の冒険者さんと一緒に私の横へ来たイクルがお礼を述べて、そういえばどうしてアルフレッドさんがくるタイミングを知っていたのだろうと疑問に思う。

 ほかの人たちが「ありがとうございます」とお礼を言っている間に、「あぁそんなこと?」と、まるで特に特殊なことはしていないけどというイクルの表情。



「風が教えてくれたんだよ、アルフレッド様のことをね」

「え!? イクル風と喋れるの? すごい……!!」

「そうじゃなくて、風の流れを読んだんだよ」

「えっ! でもそれだってすごいよ……!!」



 そうですよね、風がしゃべるわけありませんよね! さすが異世界だと納得してしまった自分が恥ずかしい。穴を掘ってもぐりこんでもいいでしょうか。

 若干顔が羞恥で赤くなるけれど、普通に考えたら風か喋るわけないですよね。しょんぼりしていれば、くしゃっと頭を撫でられた。いったい何事だと顔を上げれば、そこには冒険者さんたちに囲まれていたアルフレッドさんがいた。



「そこがひなみの長所でもあるだろう? 見ていて飽きないな」

「ちょ、それは褒めているのかわかりませんよ……」



 シアちゃんにするように、私を撫でる。

 私よりほんの少しだけ背が高いアルフレッドさんは、今はいつも以上に大きな存在に見えて、男の子は成長が早いのだなと思う。それに比べて私はあまり成長していないような気がします。



「しかし、旅の序盤から災難だったな。丁度近くを飛んでいたから間に合ったが……遠くにいたらと思うとぞっとするな」

「……そうですね。ドラゴンは珍しいんですか?」

「あぁ。こんなところにいるものではない、な。ここから先は調査をしてみないとわからないが、多少忙しくなりそうだ。ドラゴンは〈アグディス〉に多く生息しているから、十分に注意しろよ」



 なんと、アグディスはドラゴンがいっぱいいるのか!? どきどきと恐怖が同時に襲ってきつつも、しっかりと頷いて間違いなく注意することを伝える。

 イクルから「大丈夫、そんなに凶暴ではないから」とお言葉をいただいて安心するが……先ほどのドラゴンは凶暴だったように思うのですが?



「そうだ、通常は無作為に人を襲うことはほとんどない。恐らく何か原因があるから、それも調査だな」

「そういったのも、アルフレッドさんのお仕事なんですか?」

「あぁ。基本的に、規模が大きいものは担当することが多いな」



 なるほど、さすがは勇者パーティーです……!

 すごいなぁ、すごいなぁ! 私もいつか……こんなふうに、リグ様のお役に立てたらいいなぁ。



「ん? どうした?」

「いいえ。アルフレッドさんはすごいなぁって……!」

「何を。俺から見たら、ひなみのほうが何倍もすごい。また、回復薬(ポーション)を頼むな」

「はい、おまかせくださいっ!」



 少し興奮していれば、若干アルフレッドさんに怪しまれた。いやいや、あんなドラゴンを目の前で見たのですから、ましてや殺されるかっていうところでしたのですから、この興奮じみたものは致し方ないのです。

 私の近くにやってきた冒険者さんと一緒に再度お礼を伝えて、今後の段取りを少し話し合うことになった。



「でも、絶焔の魔術師であるアルフレッド様の勇姿を見られるなんて……同じ魔術師としてとても嬉しいです」

「ドラゴン相手にひるまず立ち向かったんだ。貴方も十分に立派だろう」

「……ありがとうございます!」



 魔術師のレンさんがアルフレッドさんと話をしつつ、アリスさんとエリザベスさんもきゃぁきゃぁしながら話に加わった。うん、アルフレッドさんは素敵だから、その乙女心だってちゃんとわかりますよ……!



「「ありがとうございました」」

「いいや、当然のことをしたまでだからな」

「でも、もう矢が切れそうだったんです。弓術師なのに矢がなければ、死んだも同じですから……」

「ええ。命の恩人です。何か有れば、いつでも力になりますね」



 2人の熱い視線も笑顔でかわして、女性の扱いになれているのかな? 優雅に微笑むアルフレッドさんは、さすが貴族というものだと思う。2人の弓術師のお姉さんはアルフレッドさんより年上なのに、まったく年の差を雰囲気で感じさせない。

 背筋を綺麗に伸ばして、動作に無駄がないように見える。私は座っていたりすると猫背になりがちなので、さらによく見えるというのもあるだろうけれど。



 そこでとりあえずと、一旦話を切って今後についての話し合いにシフトチェンジをすることになった。馬車は問題ないけれど、馬がドラゴンに驚いて逃走してしまったらしい。

 一度小屋に戻り、再度今後の作戦会議。とは言っても、歩くという結論がでるしかないとは思うのだけれども。だって馬いないし、ね。

 ようし、作戦会議を頑張りましょう! そう、思っていたのだけれども。私の意気込みはあっさりとイクルによってストップがかかってしまう。



「ひなみ様は部屋で休んでて。ここの話は聞いておくから……」

「え? でも、それは悪いし……」

『だめぽ! ひなみは少し休んだほうがいいぽ! 大丈夫だと思っても、体は驚いているはずぽ』



 ぐぐぐ。イクルに続きロロまでもが。

 でも、私を心配してくれていることはすごく伝わってくる。それに、イクルが怪我をしたときはひどく取り乱してしまった自覚もある。

 ここは甘えて……いや、でも。さすがにそれは甘え過ぎだと思うのです。むむむと唸って、やっぱり作戦会議にはでよう。例えいい意見を言えなかったとしても、話を聞いておくことも大切だと思うから。



「……それじゃぁ、ひなみは俺が見てよう。まだ魔物がいる可能性もあるからな」

「いいんですか? アルフレッド様なら安心ですが、お忙しいのでは……?」

「ここのパーティーの動きは一応把握する予定だから、問題ない。じゃぁ、ひなみを連れて上で休んでいる。方針が決まったら教えてくれ」

「わかりました」



 と、私がどうしようかもんもんしていればアルフレッドさんとイクルが方針を決定してしまった。なんということか、私の意見は聞き入れられないのか……!

 いや、すごくいい待遇なのはわかっているのですが。どうしても申し訳ないという気持ちが込み上げてしまう。イクルをちらちと見れば、「大丈夫だから休んでて」と。



「イクルは私に甘すぎるよ……」

「そんなことないよ。それに、馬がいないから歩きになる可能性もあるし……ひなみ様にはしっかりと休んでもらわないとのちのち大変なんだよ」

「ぐぐ、そう言われたら反論できないよ……」



 そうか、歩きか。

 確かに今のメンバーの中で体力最下位は私。それは間違いないと胸を張って言える。……少しは走り込みもしたんだけど、あまり成果はないというかなんというか。



「……わかった。でも、イクルも無理はしないで? 辛くなったら言ってね」

「うん。じゃぁ、アルフレッド様。ひなみ様をお願いします」

『お願いしますぽ!』

「あぁ。シュトラインも外にいるから、この小屋に魔物は寄ってこないとは思うが……警戒は怠るな」

「わかっています」



 イクルが真剣な顔で頷いて、アルフレッドさんも頷くことで返事をした。これができる男のアイコンタクトなのだろうか……2人とも強くて、私とは次元が違うのだなと思う。

 腕に抱いていたロロをイクルに渡して、私とアルフレッドさんは2階の部屋で待機することにした。





「あぁ、そうだ。また回復薬(ポーション)が欲しかったんだが……アグディスに行くとなると厳しいか」

「あぁ……それなら、お店番をまろがしてくれています。お店に行ってもらえれば、一応在庫はありますよ。1日100個の販売なんですけど、アルフレッドさんになら在庫で欲しいだけお渡しできると思います」

「助かる」



 ほっとした表情をみせつつ、「もう手持ちがない」と。アルフレッドさんには結構売ったはずなんだけど、もうないのか。おかしいな、やっぱり消費量も常人のそれと違うのだろう。

 部屋に続く廊下を歩いて、小さな小屋だからすぐ部屋につくのだけれども……階下のリビングになんとなく視線を向けてしまう。

 すぐに作戦会議をするのかと思えば、とりあえずは皆も休憩をはさむようでほっとした。冒険者さんとは体力が無尽蔵なのかと少し不安だったけれど、そうではなかった。よかった。たくさん休んでください。



「そんなに心配しなくても、もう大丈夫だ。外にはシュトラインがいるから魔物も寄ってはこないだろう。まぁ、よってきたとしても俺がいるから問題はない」

「……そうですよね。なんだか、すごく肩に力が入っていました」



 今ならドラゴンが群れできてもアルフレッドさんがいるから問題なさそうだ。お言葉に甘えて、少し休ませてもらおう。使っていた部屋に入り、アルフレッドさんに椅子をすすめる。私はベッドに座って一息つく。

 結構はらはらしたので寿命が縮まったのでは? と、思います。



「しばらく寝ていてもいいぞ?」

「いえ、そこまでじゃないです。それに、夜はちゃんと寝ましたから」

「そうか」



 優しく気遣ってくれ、「そういえば」と言葉を続けられる。



「この間、狩りに行ったときに薬草を見つけたんだ。よかったら貰ってくれないか?」

「え? でも、悪いですし……」

「気にするな。とは言っても、希少なものではないのだがな」



 そういって、アルフレッドさんが魔法の鞄(マジックバック)から取り出したのは蒼色草の束。ということは、深海の回復薬(マリン・ポーション)の材料だ。これだと……だいたい20個分くらいだろうか。

 うーんと考えて、リュックの中身を確認して……うん、あるかな。

 私は何かあったときのためにと、家から持ってきた瓶と、魔力マングローブの土と水を大きめの瓶に入れて持ってきたものを取り出した。

 深海の回復薬(マリン・ポーション)の材料は、蒼色草・魔力石の粉・魔力水・瓶。若干面倒に思えるけれど、魔力マングローブの水と土があればできてしまうので、結構お手軽なのです。

 ささっとベッドの上に並べて、材料に問題がなさそうなことを確認する。



「よしっと。……《天使の歌声(サンクチュアリ)》」



 祈るようにスキルを唱えれば、一瞬ぱっと光った。瞬きをした次の瞬間、ベッドの上にあるのは材料ではなくて完成した深海の回復薬(マリン・ポーション)20個。それと、余ってしまった蒼色草が3本。

 ちょっと読み違えてしまったか。でも、材料はまだあるから大丈夫だと思って顔をあげて……目を見開いているアルフレッドさんと視線が交差した。



 しまった、やらかした。

 そう思ったときにはもう、遅くて。



「ひなみ……なんだ、その、生成方法は」



 えへへへへと笑ってごまかすしかない。そう思ってしまったが、アルフレッドさんにそれは通じないだろうなと思う。かといって、正直にすべて話してしまうのもよろしくないように思う。

 どうしようどうしようと頭をフル回転させて、結局。



「え、えへへ……」



 力なく笑うことしかできなかった。

お気に入りが増えていたので、嬉しくて急きょ更新してみました!

みなさんありがとうございます!

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