16. 魔物攻防戦 - 2
なんと箱庭の薬術師がなろうコン最終選考に残りました!
書籍になっちゃうみたいです!
これも応援してくださった皆様のおかげです。
こころより感謝です。ありがとうございます。
これからも更新頑張りたいと思います。
まずはペースを上げねば……!
やばいやばいやばい!
どんどん眼前にせまってくる、青く大きなドラゴン。ロロを見れば『ぽぽぽぽ!?』と、かなりのパニック状態になっているようで私は逆に冷静になってしまう。
「体長は7メートルってところか。ひなみ様、絶対俺の後ろから離れないで」
「う、うん……」
「ロロは自由にしててもいいよ」
『絶対に離れないぽ!!』
私はロロを抱き上げて、ぎゅっとする。2人で震えて、それでも迫りくるドラゴンを見るしかない。
「やばいわね。アリス、風の矢って……持ってる?」
「……5本だけ。でも、ドラゴン相手では全然たりないわ。エリザベスは?」
「私はゼロ。攻撃力の高い炎の矢を何本か持っているくらい。でも、あのドラゴンはきっと青いから水系統ね」
やはりドラゴンは厳しいのだと、弓術師2人の会話を聞いて思う。
どきどきと脈打つ心臓が、私の身体を熱くさせる。どうしよう、あまりいい状況とは言えない。イクルの後ろから前を覗くがドラゴンがいなくなったりしない。
どうしよう、どうしよう……ドラゴンに、ほかの魔物に……あれ?
「イクル、ほかの魔物がいなくなってる?」
「あぁ、ドラゴンから逃げてきていたんだろうね。倒した魔物以外は……半分が逃げて、もう半分はドラゴンにやられたみたいだね」
「……っ!」
あんなにたくさんいた魔物が、ドラゴンにやられた……?
ふるりと身体を震わせて、恐怖で冷や汗が私を襲う。かといって、逃げ場所もない。
今は前衛術師が前に立ち、どうするか話し合っているようだ。私が入っても何もできないので、大人しく待機です。
しかし作戦会議といっても、迫るドラゴンを前にしたらそんな時間はないにも等しい。まっすぐこちらに向かってくるドラゴンに、1人の前衛術師が飛び出した。剣を構えて、ドラゴンの攻撃を受け止めた。
「すごい……! ドラゴンを受け止めるなんて……」
『このまま倒せるんじゃないかぽ!?』
「やっぱりロロもそう思う!?」
隣では弓術師のお姉さんたちが、話をしていた風の矢というものをつがえていた。
きらきら光って、矢尻の部分は緑色で羽根がついている。いかにも高級品の矢です、というそれにちょっとファンタジーっぽい武器だなと思う。
しかしそう考えると、私の弓は自動に矢がでてくるのでもっとファンタジーかもしれない。
ロロと不安になりつつも、皆さん強いから大丈夫なんじゃないのかなという気持ちが込みあげてくる。でも、イクルの顔を見ているとそんな甘い物ではないというぴりぴりしたものが伝わってくる。
「……うらあぁっ!」
「パーシィ、いったん下がれ!」
「わかった……!」
「魔術を使うから、なんとか隙をつくれるか!?」
「まかせろおおぉぉ!!」
『やっぱりやばそうな感じがするぽ……!』
「だ、だいじょうぶ……でも、どうすれば」
前線で戦ってくれている前衛術師の人と、魔術師の人がやりとりをしつつドラゴンを食い止めてくれている。ここまでの距離は、もう50メートルほどしか……ない。
大きく翼を羽ばたかせて、ぶわっとその風圧が私たちを襲う。体がふらついて、後ろに倒れそうになるが寸でのところで踏ん張る。さすがにこんな後方にいるのに、転んで迷惑をかけるわけにはいかない。
「……大丈夫?」
「うん、なんとか。私は大丈夫だけど……イクル」
「そんな心配しなくて大丈夫。ひなみ様は俺の後ろにいればいいよ」
再度「大丈夫だよ」と言われて、イクルの声とその余裕が私の心を落ち着かせていく。
しかし、それで戦いが緩和されるわけではなくて。横ではお姉さんたちがすごい勢いで矢を放っている。魔術師の人は長い詠唱を唱えていて、何もできない自分にすごくもどかしい気持ちになる。
詠唱の終わった魔術師さんが、声をあげて風の魔法をドラゴンへ向けて繰り出す。それを見たドラゴンも負けじとばかりに大きな翼で風を起こした。
「くぅ……っ! 押し負けるかあぁぁ!!」
『グオオオォォォ!!』
強い風の魔法と、ドラゴンの雄叫びが大きく唸りをあげる。
ごくりと息を飲み込んで、余波がこちらまできて……飛ばされる、そう思ったが寸でのところでイクルに助けられた。
風で舞い上がった石が私のほうめがけて飛んで来る。それを軽く棍でイクルがいなして、前を見据える。
「イクル!」
「……まずいね、だいぶ押されてる」
「そんな……!」
次々とポジションをチェンジしながら、前衛術師の人がドラゴンへと挑んでいく。怪我をした人はすぐさま後ろに戻り、回復術師さんが傷を癒し、私も回復薬でサポートを行う。
押されつつ押し返しつつ、それでもじりじりと押されている。
弓に、魔法に、ドラゴンへ次々挑むが戦況があまりよくないのは私でもわかった。息を切らしながら、後ろへともどってくる前衛術師の人たち。
ポジションチェンジの回数も短くなって、苦しそうに座っている。でも、私できることなんて回復薬でサポートを行うことだけ。
その時、ドラゴンが大きく……雄叫びを上げて氷を吐いた。
え、と……思ったときにはもう遅くて。前衛術師の人たちをブリザードが襲い、体を傷つけていく。こちらに飛んで来る氷のブリザードは、イクルが棍でつぎつぎいないしていってくれるが……いかんせん数が多い。
「回復薬を、こっちに投げてくれ!」
「わ、わかった……!!」
魔術師さんに言われて、少し無茶な体勢かと思いつつも回復薬を投渡す。
しかし、それがいけなかったようだ。私のめがけて1つの氷が飛んできた。やばい、ぶつかると思った……瞬間に。あ、え…………!?
「ひなみ様っ!!」
「イクル!?」
少しイクルの背中からはみ出した私を、抱きしめる形でイクルにかばわれた。
いったい、なにが……そう思っている暇なんてなくて。イクルの肩にあたった氷はそのまま刺さっていて、どくどくと血が上がれている。
「イクル、血が……そうだ、回復薬を……!」
『大丈夫、ひなみ落ち着くぽ!!』
私の代わりにロロが回復薬をかけてくれる。すぐに傷が塞がったのを確認して、ほっと息をはく。よかった、ロロがいてくれて。私1人だったなら、気が動転してこんなことはできなかっただろう。
どうしようどうしようどうしよう、頭が混乱してしまって、何をすればいいのかわからない。
抱きしめたロロが『落ち着くぽ』と私に声をかけてくれているけれど、その声もすぐに私を通り抜けていく。
でも、その次に発せられた声は、すんなりと私の中へと入り込んだ。
「ひなみ様、俺は大丈夫だから落ち着いて」
「あ、いく……る…………うん、うん、よかったよぉ」
イクルが振り向いて、私の頭をぽんぽんとしてくれた。無事でよかった、よかった!
と、思っていたらまさかの呆れ顔イクルだった。なんということでしょう、私はこんなにパニックだったのに、イクルは平常運転だったなんて。
「なんでそんなに余裕そうなの、イクル……」
「別に肩をかすったくらい、問題ないよ」
『イクルはすごいぽ〜! 僕だったら溶けて死んでたぽ』
ロロにあたらなくてよかったと本気で思った。
そして前から響く戦闘の音。前衛剣をふるい、ドラゴンの攻撃をふせぐ。しかしドラゴンの力のほうが強いからか、反動で後ろに倒れる。ほかの前衛の人がフォローに回り、その隙をお姉さんの矢が襲う。
「もう無理! アリス、矢はある?」
「あと少しだけ…… このままじゃもうすぐつきる。やばい、かも……」
弓術師のお姉さんの声を聞き、びくりと体が震える。戻ってきた1人の前衛術師も、「やべぇな」と呟いて、息をついた。
「あと、10分。もたせられる?」
「「「え……?」」」
突然発せられた声を見れば、イクル。
くるりと棍を回転させて、ドラゴンに向けて炎の龍を繰り出した。とたんに「おぉー」という声があがり、イクルに視線が集まる。
もしかして、本気のイクルはドラゴンも倒してしまうのだろうか……? そんなことを思っていれば、イクルがため息をひとつ。
「俺が1人で10分は持たない。とりあえず、あと10分。それまで踏ん張って」
いったい何があと10分なのか。理由を言わないイクルにもやもやしつつも、説明している時間がないからか誰も詳細を聞かない。それよりも目の前のドラゴンが気になって仕方がないのだ。
この間にも前にいる人はドラゴンとの死闘を繰り広げているのだ。気になるけれど、気にすることができない。
「ひなみ様、絶対に俺の後ろからでないで」
「う、うん!」
「俺は後ろから援護するから、前衛はもう少し持たせて。とはいえ、俺のこれもそんなにはもたないから」
「「わかった……!」」
イクルの声に大きく前衛の返事が起こり、またドラゴンへと向かっていく。
どうやら冒険者としても優秀な人たちのようで、倒すことはできないようだが倒されることもない……そんなぎりぎりの狭間を揺れ動いている。
私も回復薬を前衛の人にかけて回復して、魔術師の人には魔力回復薬を渡す。
「くそ、さすがはドラゴン……硬すぎる」
『魔術師さんがんばってぽ!』
「わかってる! だが、ドラゴンを倒すなんて不可能に近いぞ……!」
『そこを踏ん張るぽ〜!』
ロロの応援が飛んで、少し場の空気が明るくなった。
イクルの言った10分まで、あと少し。そう思ったとき、すごい勢いで前衛の1人が後方に吹っ飛ばされた! 思わず息をのんで、視線を追えば……小屋に叩き付けられていた。
すぐに回復しないとと思い走り、その傷を見て絶句する。服も、剣も、血だらけだ。どくんと脈打つ心臓を落ち着かせて、なんとか鞄から深紅の回復薬を取り出してふりかける。
そうすれば傷はすぐに塞がれて、そのまま立ち上がった。残りを手渡せば一気に飲み干して、「助かった」とお礼を言われる。
助けてもらっているのは、お礼を言うのは私のほうではないのか。そう思ってしまうけれど、私はぐっとこらえて自分にできることをしなければならない。
「……あと1分!」
「もう、矢がないわよ……!」
「一気に回復魔法をかけます!」
「くっそおおおぉぉぉぉ!!」
イクルの声に、それぞれの声が続く。
大きく棍をふりかぶり、再度焔の龍がドラゴンへ向かっていく。だが、相手のドラゴンは水属性……イクルの龍はすぐに消し去られてしまう。
あと、30秒。いったい何が起きるのか、そう思いながら私はゆっくりとカウントダウンを口にする。イクルの意図はわからないけれど、みんなに伝えることならできる。
「10、9、8…………」
口に出して、まっすぐ前を見る。それでも止まないドラゴンの攻撃と、私たちの攻撃。
いっそ激化が増していって、どきどきと私の心臓をならす。
「5」
「前衛、全員すぐさま退避!!」
「3……」
私のカウントダウンをかき消すように、イクルの声が大きく響く。突然の指示だったにも関わらず、前衛の人たちは大きく後ろに飛び退いて下がる。
しかしそのまますぐに剣を構えることも忘れず、みんながドラゴンを睨みつける。
瞬間…… 炎が、舞い上がった。
「「「な……っ!?」」」
一斉に皆の声が上がり、イクルに視線が集まる。
でも、イクルをずっと見ていたけれど……イクルは何もしていなかった。
ドラゴンを見れば、舞い上がった炎が空中に分散されてそれが無数の炎の剣となった。いったいこれは何だと、目を大きく見開いていれば聞こえてくるのは、澄んだ声。
「我の炎よ、剣となり……漆黒の焔を纏え。《剣王の乱舞》!」
その声が終わると、黒い焔を纏った無数の剣がドラゴンめがけて降り注いだ。
いったい何だと、声のするほうを向いて……誰かが、「絶焔」と声をあげた。風になびく赤い髪に、きっちりと着こなした騎士の服。そうだ、あれは……!
「アルフレッドさんっ!!」
私の声が大きくあたりに響いて、「またせたな」と私を見たアルフレッドさんが微笑んだ。
書きたかったのは最後のアルフレッドのシーンです!
そして感想まだ返せていないですごめんなさい。
近いうちに必ず返します!!!!




