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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第2章 ミニチュアガーデン
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14. 突然の謝罪

 ポイントで交換した《箱庭の扉》を使用して、街で購入をした店舗と家をつなげた。

 その為、宿屋に置いてある荷物を取りに行き、引き払わなければ…そう、思いながらイクルと共に宿屋へと向かったのだけれども。

 それぞれの部屋に行くために一旦別れ、おそらく私の方が準備に時間がかかるからと、片づけが終わったらイクルの部屋へと行くことになっているのだけれども。



 どうしてこうなってしまったか。



「……」

「……」



 若干重い雰囲気が私の部屋へ流れた。



「あの…どうしたんですか、突然」



 私の部屋へと訪ねてきてまだ何も言葉を発さない彼…タクトさんへとおそるおそる声を掛けてみた。整った顔がとてもイケメンさんなのではあるが、いかんせんイメージがあまりよろしくない。割と暴走キャラなのか、怒り気味のところしかみたことがないから。

 そんなタクトさんは、私が1人部屋に入ってきて数分で訪ねてきた。少しタイミングが良すぎる気もしたけれど、気にしない。何か話でもあるのだろうかと招き入れたのだが、特に何も話さないまま5分が経過しようとしているのです。ちょっと、空気が辛いです。



「その…」

「?」

「…ごめん。ひなみさんのおかげで俺は助かったのに、酷いことを言ってしまった」

「えっ」



 沈黙のなか、タクトさんが口を開いたと思えば…それは謝罪の言葉だった。少し驚きつつも、「大丈夫、気にしないで」と慌てて返せばタクトさんが安心したのか笑顔を返してくれた。

 暴走キャラだと思っていたのだけれど…これがはやりのツンデレなのだろうか。花が「ツンデレ執事がイイの!」と、謎の力説をしていたことがあったが良く分からなかった。



「…ありがとう」

「どういたしまして」



 外にはねているタクトさんの髪がゆれて、なんだか若干恐かった空気が嘘だったかのように柔らかくなった。もしかして、あの時はイライラしていただけでこちらがタクトさんの素なんだろうか。



「やっと冒険者になれたと思ったんだけど…俺、弱くてさ。こんな男、格好悪いだろう? エルフなのに、魔法も剣も弱いなんてさ」

「そんなことないです、最初は誰だってそうですよ。私だって、まだレベル3ですし…スライムも恐いですよ」

「…ハハ、スライムが恐いのかよ。俺より重症じゃないか」

「いいんです。恐い時は逃げるから!」



 ふん! と、ちょっとえばり気味で逃げる宣言をすればタクトさんに笑われる。よいじゃないでか、私は魔物が恐いんだから。だってしょうがない、日本にあんな敵いないのだから。いても野犬? 放し飼いの恐そうな犬がいたら即効で逃げますけどね! いや、そういう人がほとんどですからね。



「タクトさんは、ずっと冒険者になりたかったんですか?」

「ん。そうだな…ずっと、強くなりたかった。ああ見えて、ミルルが実は強くてさ」



 あぁ、そういえばミルルさんは冒険者だった。最初は隠そうとしていたのに、イクルが見破ってしまったのだ。ポケットから冒険者カードが見えてるなんて、強いのにおっちょこちょいなミルルさんはなんだか可愛らしいのです。

 私が「そうなんですね」と相槌を打てば、ポツポツとタクトさんが話しをしてくれた。



「ああ。ミルルは俺に隠してるつもりみたいなんだけど、気付いちゃってさ。弱いからかわかんないけど、これでも頭は良いんだぜ」

「ミルルさん…確かに、あまり隠し事は得意じゃなさそうですね」

「だろう? けど、他の奴は気付かなくてさ。俺は幼馴染でずっと一緒にいたから割とすぐに気付くんだ」

「そうなんですね」



 なんだか仲が良さそうで良いなと思いつつ、「恋人なんですか?」と尋ねれば若干顔を赤くして「そんなんじゃねーよ」とのお返事をいただいた。ミルルさんは分からないけれど、タクトさんはミルルさんのことが好きみたいだ。

 私は恋愛をしたことが無かったのでちょっと羨ましいと思いつつ、上手くいけば良いなと思った。



「いいじゃないですか。私はお似合いだと思いますけど」

「何言ってんだよ。それに、ミルルは代々村を治める家系だから…俺みたいに弱い奴は無理だよ」

「え…」

「そんな顔すんなよ。それに、俺は強くなるから問題ない」



 なんだろう、ファンタジーならではなのだろうか。この世界はあまり自由恋愛が出来ないのだろうか。そういえば、シアちゃんも婚約者がいるようだったし。身分差、というのだろうか。なんだかとても悲しいし、もし自分がそんな恋をしてしまったら…私はどうするのかまったく考えられない。



「ほら、顔を戻せ」

「…え?」



 どうやら私は考え込んで顔に申し訳なさが120%程出てしまっていたようだ。タクトさんが「気にするな」と再度声を掛けてくれた。なんだろう、私は気を使おうとして上手くいかず逆に気を使われるパターンが多い気がしてならない。

 私が悩みつつも、「大丈夫!」と応えれば「おう!」と笑顔で返してくれた。



「それに、スライムったって…次は俺の敵じゃないね!」

「おぉっ! 意気込み良いですね!」

「当たり前だろ! それに、スライムの攻撃パターン、防御パターン、攻撃動作、間合いは全部調べたからもう負ける要素は無いね! スライムの間合は半径1メートルなんだけど、実際攻撃モーションに入るのは30センチに近づいてからなんだ。だから30センチぎりぎりの間合いを計算してそこから剣を振る。スライムから受ける初撃にかかる時間は3.5秒。つまり、3秒でダメージを与えて後ろに回避をすればスライムから攻撃は受けないっていう計算だ! 攻撃を受けたスライムは次に防御にはいるんだけど、その時は10センチまで近づかないと攻撃をしてこないんだ。だから1度攻撃をしかけてすばやく引いて、2撃目をすぐに入れれば倒せるっていう計算だ! バッチリだろ!?」

「え、あ…そうだね、すごいバッチリだよ!」

「だろ!」



 ごめんなさい、私には良く分からなかったです。

 でも、笑顔のタクトさんを前に分からないなんていえるはずも無く。仕方が無いので笑顔でバッチリですと答えておいた。うん、満足しているみたいだからきっとこれで大丈夫!

 しかし、スライムを倒すのも大変なんだ。私が1人で戦おうとしたらどれくらい攻撃をすれば良いのか。神様にもらった反則チックな弓であれば一撃だけれど、剣で戦おうなんて思ったらもう無理そうだ。



「タクトさんは、結構戦略家なんですね」

「ん? まぁ、そうだな… というか、そうしないと倒せないってのがでかいけどな」

「あ…ごめんなさい」

「気にすんなって。まぁ、すぐに強くなってやるし!」

「はい。同じ冒険者同士、頑張りましょう!」



 私が「ファイトですね!」と言えば、「えっ!? 冒険者なの!?」と驚かれた。

 そうですよね、私冒険からかけ離れていますからね。タクトさんに身分証欲しさで取り敢えず登録したことを伝えれば「良くあるパターンか」とすんなり受け入れられた。

 でも、私も冒険者としてどうするかは考えなくてはいけない…かもしれない。だってレティスリール様を探しにも行くし…うん、また今度考えよう。



「あれ、そういえば初心者講習って受けます?」

「あ、受ける受ける! もしかしてひなみさんも!?」

「はい! 3日後の座学に申し込んでるんです」

「おっ! 日程も一緒だ!」



 おぉ、なんという奇遇。でも、ミルルさんが初心者講習を受けさせると言っていたのでかぶるかなとは若干思っていましたが。でも、1人だと心細いのでタクトさんがいてくれるのは少し嬉しいかもしれない。もう恐い人ではないっていうことが分かった…というのが一番の要因だけれども。



「ミルルは受けないって言うしさ。実技は良いけど座学は暇そうだし、1人じゃなくて良かった」

「あはは、私もタクトさんが居て安心しました。恐いから実技は出ないで座学だけなんですけど、よろしくお願いします」

「こっちこそ。座学は超得意だから、何かあったら聞いてくれよ」



 どうやらタクトさんのお目当ては実技のみらしい。確かに、先ほどのスライム考察? を聞く限り知識などは初心者講習を受けなくても大丈夫そうだなと思う。でもきっと、ミルルさんに受けるように言われて断れなかったんだろうなと思う。そう考えると、2人の微笑ましい光景が脳裏に浮かんで少しほんわかする。





 トントン!



「ひなみ様、遅いけどどうかしたー?」

「あ、イクル! ごめんごめん」



 不意にノックの音と、イクルの問いかけが耳に入る。

 そうだった、支度をしてイクルのところに行く予定だったのにすっかりタクトさんと話し込んでしまった。すぐにドアを開けてイクルを招き入れれば、その場にいるタクトさんを見て怪訝な顔をする。



「っと、長居して悪かったな」

「うぅん、大丈夫。って、私きちんと名乗ってなかったね。楠木ひなみだよ、よろしくね」

「おう。俺はタクト・ミルフィーユだ…タクトでいいぜ。じゃぁまたな、ひなみ」

「うん、またね~」



 思わず美味しそうな名前に声を上げてしまいそうになったのは内緒です…よ?

 タクトさんはイクルをまったく気に留めずその横をすり抜けて部屋を後にした。あれ、イクルに対してはツンモードなのだろうか。

 すぐに「何してたの?」とイクルが問いかけてきたので、この間の謝罪とお礼に来てくれたことを伝える。ちょっと驚きつつも「ふぅん」の一言で終わってしまった。どうやらあまりタクトさんへの関心は無い様だ。



「って、まだ支度できてなかったの?」

「あ、そうだった。すぐにタクトさんが来たから…ごめん、すぐに準備するね」



 慌てて荷物を纏めはじめれば、「ゆっくりで良いよ」と。既に荷物を纏めて持っているイクル…といっても、リュックサック1つなのだけれども。を、床においてベッドに腰を下ろしてくつろぎ始めた。



「というか、スライムに負けたくせに懲りてなさそうだったね」

「あぁ…スライムの動きを考察したみたいで、次は絶対勝てるって言ってたよ」

「…スライム程度を考察しないと勝てないなんて、絶望的だよ」

「頑張ってるし、きっと大丈夫だよ。それに、今度の初心者講習で一緒だったんだよ」



 このままだとイクルがタクトさんをボロクソに言いそうだったのでそっとフォローをしておいた。





「さて、準備出来たなら行く?」

「うん!」



 私もリュックに荷物を纏め終わり、そのまま部屋を後にする。短い間だったけど、ありがとう部屋よ!

 そのまま宿屋のおばちゃんに挨拶をして宿屋を後にした。

 家に戻ったら、3人で開店準備をしなければです!

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