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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第5章 闇に目覚し一輪の花
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15. 変化した弓

 私がスキルを唱えると、ふわりと辺りに暖かな風が吹いた。サリナさんの聖剣を伝い、私の力が大樹に流れ込んでいっているというのがわかった。

 神様の箱庭だけど、私に神としての力はない。きっとリグ様が力を貸してくれているから、こんなにもあったかい気持ちになれるんだと思う。


 私の力で成長できるのなら、いくらでもあげる。


 そう思った瞬間、大樹は大きな花を咲かせた。


「うわあぁぁ、すごいね、さすがひなみちゃんだよ!」

「はふ……っ」


 大きく深呼吸してから、聖剣から手を離す。

 気付けば汗だくになっていて、とても緊張していたことに気付く。サリナさんが「聖剣も誇らしいね」と微笑んだ。


「はい。……でも、本当によかったんですか? 聖剣なんて、伝説級の武器なのに」

「いいの。この方が、この子も幸せだと思うから」


 大樹に刺さった聖剣をサリナさんが指先で撫でると、私の意識は反転した。




「……え?」

『おかえりなさい、店長』

「大樹の中から出たみたいだね、ひなみちゃん」


 目の前にあった聖剣はなく、代わりにフィーナとアークルがいた。二人とも笑顔なので、大樹を成長させることができたのだということがわかる。

 私はすぐに後ろを振り向いて、今まで試験として中に入っていた大樹を――見た。


「うそ……すごい」

「さすがは、ひなみちゃんだね」


 大樹は一回り大きくなっていて、とても綺麗な花が咲いていた。まるでこの世界の神であると言われても、私は疑うことがないと思う。それほどまでに立派で、凛としていた。

 私の力でこんなすごい大樹に育ってくれるんだ。それはひどくむずがゆくて、けれど嬉しかった。


『やっぱり店長はすごい』

『お店も大繁盛』

「褒めすぎだよ……」


 アークルの大繁盛は褒めているのかわからないけれど、二人が嬉しそうにしてくれているので私も嬉しい。


『はい、これ』

『ん』


 二人がキラキラ光る宝石を差し出して、『ありがとう』と照れたように笑う。


「確かに受け取ったよ……!」


 緑色と、黄色の綺麗な宝石。私は手で包み込むように持って、二人に「ありがとう」と微笑み返す。

 すぐに弓を取り出して、二つの宝石を付ける。


「これで、火・水・風・土……全部が揃ったんだ」

「弓が変化するよ、ひなみちゃん!」

「え、わわわ、本当だ……!」


 自然のすべてを取り入れた弓は、大きく成長するのかと見せかけて――一回り小さいものへと変化した。


「これって……」


 威力が下がったりしたのだろうかと、弓をじっと見つめてみる。弦を引いてみるが、今までよりもぐっと扱いやすくなっている。

 力もあまりいらず、小回りが利きそう。


 弓をくるくる回しながら見ていると、ぽかんと口をあけたサリナさんが私を見ていることに気付く。


「ひなみちゃん、それすっごい魔力を秘めてる。妖精たちの力が加わったからだろうけど、ドラゴンも一撃で倒せるかもしれないよ」

「ええ、まさかそんな」


 イクルやアルフレッドさんじゃあるまいし、私がドラゴンを倒せるとは思えない。

 あ、でも。

 この弓はリグ様にもらったものだから、リグ様の力でドラゴンも倒す――と考えると、私でもできる気がしてしまうから不思議だ。

 やっぱりリグ様は、私の中で特別です。


「これで、イクルを助けに行くんだっけ」

「いえ、あとは水晶の回復薬クリスタル・ポーションがあればいいみたいです。防御力が上がるから、あった方がいいってレティスリール様が言ってました」


 ただ、これを手に入れるためには秘密の硬貨が千枚必要になる。二号店の売り上げがそのまま硬貨になるけれど、どれくらいで集まるだろうか。

 小さくため息をつくと、フィーナが『店長』と私を呼ぶ。


「うん?」

『大丈夫』

『ぬかり、ない』


 フィーナとアークルがそう言うと、ベアトリーチェが奥から大量の秘密の硬貨を持って現れた。まだまだ半分は足りなかったはずだと思いながら、どうしてそんなに硬貨があるのかと問いかける。

 にっこりと笑ったベアトリーチェは、『当然ですわ』と胸を張る。


『だって、店長ったら大樹の中に一週間も入っていたのよ! これくらい、稼げて当然です。まろ様が回復薬(ポーション)をたくさん運んでくださったんです』


 さすがまろ様は素晴らしいと、ベアトリーチェは嬉しそうに笑う。

 まろが頑張ってくれていたことがとても嬉しくて、私は頬が緩んでしまい――って、待って。


「一週間も、大樹の中に入ってたの?」

「うひゃー、全然わからなかったよ。時間の流れが違うのかなぁ?」

「サリナさんは落ち着きすぎです……」

「だってひなみちゃんの勇者だし」


 それは理由になっていませんから。

 こめかみを押さえながら、まろたちに心配をかけてしまっただろうなと考える。……でも、ベアトリーチェの口ぶりからしてよく二号店に来てくれていたみたいだから、事情は把握してくれているのかな?

 それなら安心だけど……と思いながら、イクルの様子を一週間も見れていないのかと思う。


 ……異状はないと思うけど、心配だ。


 鈴花さんと一緒に眠っているイクルは、無事なのだろうか。

 二人とも強いから大丈夫だと思いたいけれど、もしもということだってある。出来るだけ早く、二人を助けにいきたい。


「って、そうだ……! 一週間もそうだけど、秘密の硬貨はどれくらいあるの? 千枚で、水晶の回復薬クリスタル・ポーションの作り方と交換してもらえるの」


 私が必死に訴えると、ベアトリーチェはにんまりと笑う。


『1,032枚、ですわ!』

「うっそ、そんなにあるの!?」


 あと少しで千枚くらい……なんて考えた私が馬鹿だった。交換できる枚数を余裕で越えていて、私は思わずサリナさんの手を掴んで「やったー!」と声をあげてしまった。

 恥ずかしいけど、どうしようもなく嬉しかった……から。


「じゃあ、水晶の回復薬クリスタル・ポーションを作ってイクルたちを助けに行こう!」

「はい!」


 サリナさんの言葉に大きく頷き、急いで家に帰った。

 やることは一つ。交換日記に秘密の通貨が集まったことを書いて、リグ様にレシピをもらう。


 やっと助けてあげられる。

 まってて、イクル、鈴花さん!

頑張って更新月間です。


ちらっとお知らせ。

『悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される』

http://book1.adouzi.eu.org/n7864de/

第4章を開始したので、こちらもよろしくお願いします〜!

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