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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第5章 闇に目覚し一輪の花
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14. 女神の力:後編

 私が、この世界に……異世界レティスリールにいなくてもいいように大樹を成長させる。

 それがどういう意味で言われているのかよくわからなくて、私はあやふやに笑うことしかできなかった。


「成長させるのは、簡単だよ。ひなの加護を、この大樹に授ければいいんだ」

「え? 私の加護を?」


 さっきの台詞はまるでなかったかのように、リグ様が微笑んだ。

 確かに加護を与えれば力が大樹に渡るかもしれないけれど、私はその方法を知らないし、自分でそんなことができるとも思っていない……。

 だって加護を授けられるのは、例えば神様とか、女神様とか、精霊や妖精。人間がそう簡単に加護を与えられるとは思えなかった。


 でも、リグ様ができると言ったからきっとその方法があるんだ。

 私本来の力ではとうていできるとは思えない。だとすれば、リグ様と出会ってから授かった私のスキルや魔法にきっとその方法があるはず……。

 いったいどうやって? 考えなければと思ったそのとき、周囲の空気が揺れてサリナさんが現れた。


「ひなみちゃん!」

「サリナさん! よかった、一緒に入ったのに離れ離れになっちゃったんで心配してたんです」


 ぴょこりとウサギの耳を揺らす姿に、怪我はない。よかったと安堵して、リグ様を紹介しようとして――いない。


「あれ?」

「ひなみちゃん?」

「ええと、えーっと、なんでもないです」


 姿を消したということは、きっとサリナさんには会えないのだろう。それにほんの少しだけど、リグ様と話をすることができて嬉しかったから。

 加護の与え方は聞けなかったけれど、きっと私が一人で答えにたどり着けると思ってくれたんだろう。私はよしっと気合いを入れて、サリナさんに向き合った。


「この大樹を成長させるには、私が加護を与えればいいそうです」

「え? ひなちゃんの加護を? 私も欲しいのに……」

「サリナさん……」


 そうじゃないです。

 とは、キラキラ瞳を輝かせているサリナさんには言えなかった。まるで自分にも加護をくれるんでしょうと言いたげで、とはいえ方法を知らないから一緒に模索したいのに。


「でも、私は加護の与え方なんて知らなくて」


 どうすればいいか知ってますか? そう問いかけるとサリナさんは首を横に振る。やっぱり知らないですよね、勇者と言えば……どちらかというと、加護を授かる側の人間だもんね。

 二人で考えながら、サリナさんは「可能性は……」と口を開く。何か案があるのかもしれない。


「やっぱりスキルとか、魔法とか。そういう類のものがあるんじゃないかなって思う。ひなみちゃん、そういう変わったスキルを持ってたりはしない?」

「スキル……」


 そういえば、私はあまりスキルを有効活用できていなかったことに気付く。とはいえ、回復薬(ポーション)を作るためのスキルとか、回復系や魔法は違うだろうし。

 そんな都合のいいスキルなんて――あ。


「もしかして」

「何かスキルがあった?」

「うーん、それっぽいスキルといえばスキルなんですけど、使い方とかがいまいちわからないです」

「?」


 普段から使っているけれど、無意識というか、私はまったく意識していないスキルがある。それはリグ様と会った当初、私が生きた時間を犠牲にしてスキルにした――私自身の、強さ、だ。



 《神様の箱庭》

 神により守られた聖域を作成することが出来る。



「……私のスキル、神様の箱庭」

「神様の? 確かにひなみちゃんは神様みたいに、特別な存在だよね」


 スキル名を呟くと、さりなさんがはにかむ。

 このスキルは、私が住んでいる家に適用されている。最初からだから、どうやってこのスキルの効果を付けたのかはわからない。


 ……そもそも、この神様の箱庭の神様って、リグ様のことだよね?

 リグ様に守られた聖域を私が作り出すっていうことだろうか。でも、それだと私の加護を与えることはできないわけで。


「大丈夫だよ、ひなみちゃん」

「え?」

「だって、ひなみちゃんは私にとって特別な存在だよ、神様だよ。だからここを、聖域にすることが出来るんだと思う」

「サリナさん……」


 もしかしなくても、私のことを一番信じてくれてるのはサリナさんだよね。

 イクルは、私のために自分で頑張るタイプ。

 まろは、まろは……何を考えてるのか、いまいち私にもわからない。でも、気楽に何も考えず、自分の好きなことを貫き通しそうだ。


「私は勇者だから、ひなみちゃんのために頑張るよ」


 持っていた剣を抜いて、サリナさんは剣をぐっと地面に刺した。


「ここをひなみちゃんの箱庭にするんでしょ? だったら、この剣を目印にすればいいんだよ!」

「えっ!? いやいやいやいや、だってこれサリナさんの聖剣でしょう!?」


 いったい何を言っているんですか!! 私は駄目ですよと主張するけれど、サリナさんは首を横に振る。


「この大樹は、今も強い力を持ってる。勇者だから、それくらいはわかるんだよ。私の愛剣なら、きっとスキルを大樹に伝えやすいと思う」


 媒介の代わりに使ってと、サリナさんはなんとでもないように言う。


「ひなみちゃんは、この世界の希望なんだから! 私はきっと、今、このときのために勇者になったんだよ。ひなみちゃんが一人で大樹に入っても、きっと駄目だったんだ」

「サリナさん……」

「私の愛剣は、ひなみちゃんの力を最大限まで引き出してくれるよ」


 だから大丈夫だと、サリナさんは私の手を取って愛剣に触れさせる。


「…………《神様の箱庭》」


 この神の部分が誰を指すのか私にはわからないけれど、私の足元周囲から温かい風が吹いて一面に――花が咲いた。

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