6. レティスリールという女神
私とまろは、急いでお店へと向かった。
そこで見たのは、たくさんの人に囲まれて微笑んでいるレティスリール様だ。そしてその傍らには、秘書のように佇むマーリーさんの姿も確認できた。
路地にある、広くはない私のお店。
お店の中に入りきらずに、その人は外まで溢れ返っていた。……これはどう考えても、ほかの人に迷惑だ。慌ててレティスリール様の下へ駆け寄ると、名前を呼ばれて花のように綺麗な顔をほころばせた。
「ひなみ! よかった、目覚めたのね」
「はい。すみません、いろいろとご迷惑をかけてしまって……」
「いいのよ。ふふ、身体が強くなっているわね」
どうやら変化がわかるらしく、レティスリール様は私の身体をぺたぺたと触って確認をしていく。特に外見は変化していないはずだけど、こうも触られると気になってしまう。
そしてそして……。私が現れたことにより、周りにいた人たちが囲うようにして見られているという状況だ。ざわざわと騒がしい店内で、どうしようかと考える。
販売する分の商品は売り切れているので、閉店ですと言って帰ってもらうのがいいのだけれど、これだけたくさんの人がいると厳しいだろう。狭い店内には10人ほど。外にも、窓からこちらを伺っている人がたくさんいるのだ。
……困った。
けれど、レティスリール様はこの国の女神なのだから仕方がない。というか、女神様に店番をさせてしまったという事実に今更ながら気付く。
女神様になんてことをさせるのだ! と、怒られたりはしないだろうか。
そう考えていると、以前お店にきてくれた時に話をしたマーリさんが声をかけてくれた。
「久しぶりだね、ひなみさん。まさか、生きている間にレティスリール様にお会いすることができるとは思っていなかったさね」
「マーリーさん。お久しぶりです」
ぺこりとお辞儀をしつつ、以前のことを思い出す。
マーリーさんは、レティスリール様を崇める教会の人。以前、私の回復薬がレティスリール様が作った回復薬と同じ模様だと教えてくれた。
私とレティスリール様の関係性について聞かれたけれど、私は何もないと答えたはずだ……。しかし今、私とレティスリール様は一緒にいる。
レティスリール様に会いたいと言っていたマーリーさんだ。
私が知っているのに隠していたと思われたりしていたらどうしようと、背中に嫌な汗が伝う。
けれど、それは私の杞憂だった。
「話はレティスリール様に伺ったよ。ひなみさんが、レティスリール様をお助けしてくれたと。私からもお礼を言わせておくれ」
「え……?」
「レティスリール様に会わせてくれて、ありがとう」
マーリーさんは、そう言って私に深く頭を下げた。
「やめてください、マーリーさん! 頭を上げてください」
「いいや、言わせておくれ。私は本当に嬉しく、感謝しているんだよ。ここにいるほかの皆も同じ気持ちさね」
「ああ」
「レティスリール様にお会いできたなんて夢のようだ」
えええっ!
マーリーさんの言葉に、店内にいたすべての人が賛同する。レティスリール様に向かっていた視線が私に向いて、次々と賛辞の言葉が飛び交った。
「ここの回復薬はとても美味しいし、効果も抜群だ」
「私もいつも買っているの」
「でもまさか、薬術師がこんなに若い子だとは思わなかった。でもまぁ、レティスリール様と繋がりがあるのであれば、お手のものかもしれないな」
「ええ。むしろ奇跡と言っていいかもしれないわね!」
「いや、あの、そんなことないです……」
詰め寄ってくる人たちに、私はどんどん声が小さくなってしまう。こんなに大勢の人に話しかけられて平然としているレティスリール様を、純粋にすごいと思ってしまった。
「ふふ。さすがはひなみね! 私が認める唯一の薬術師だもの」
「「「おおおおぉぉぉっ!」」」
「ちょ、レティスリール様!?」
どうして火に油を注ぐようなことをするのですか!
人々からざわめきがおきて、私は頭がパンク寸前だ。対処できるような規模ではないし、外の人だかりも増えている。これは本格的にヤバい。
そう思った瞬間、店内に大きくまろの声がこだました。
「今日はもう閉店なのであるっ! さぁ、帰ったーのである!」
「ええぇっ」
「まだお話しが足りないのに……」
さすが、ひなみの箱庭の看板娘まろ。私よりよほどしっかりとしていて、店長だというのに情けなくなってしまう。
「うう、ありがとうまろ」
「どういたしましてであるっ!」
扉にクローズを付けて、お客様にはお帰りいただいた。
申し訳ないけれど、マーリーさんもご一緒に。レティスリール様にご迷惑をかけたいわけじゃないと、ほかの人を連れて帰ってくれたのだ。
レティスリール様はのんびり手を振って、皆をお見送りしている。
私もたいがいかと思っていたけれど、それ以上にレティスリール様はマイペースだ。
ざわざわとしていた店内がやっと落ち着いたのは、もう夕日が沈み始めた頃。
ふうと一息ついて、お店から箱庭の扉を通って自宅へと帰る。
いつもなら、イクルが夕飯の支度をしてくれてたりするんだけど……その姿は、まだ見ることができない。
けれど味付けがおかしいまろや、レティスリール様に頼むわけにもいかないので私が作る。ちなみに、確認をしたところ、私が寝ている間は買ってきていたそうだ。
うん、間違いない。
◇ ◇ ◇
寝る準備を整えて、私は自室で交換日記の確認をする。
寝ている間、リグ様に何も書けずにいたことがなんだか申し訳ない。寝てしまうといけないので、今日はちゃんと机に向かって確認です。
「あ、交換日記に手紙がはさまってる!」
花からの返事だ。
ドラゴンの力を得て、パワーアップできるみたい! と、送ったのは本の数日前だ。やはり返事量が多いのか、封筒はかなり分厚くなっているけれど……。
それから、特に何も書いてはいないけれど交換日記も確認。
もしかしたら、リグ様から何かメッセージがあるかもしれない。……なんて、そんな淡い期待を抱いて。
「あ、メッセージだ!」
ぱらぱらと日記の一番最後を確認すると、そこには綺麗なリグ様の文字。
嬉しくなって、どうしても顔がゆるんでしまう。どきどきしながら読み進めていくと、私のことを心配する言葉が書かれていた。
「私に休まる時間があんまりないから、心配してくれてるんだ……」
やっぱり、リグ様はいつも優しい。
……でも。例え大変だったとしても、私はもっと頑張りたい。リグ様に追いつこうなんておこがましいことは思わないけれど、せめて少しでも近くにいられるように。
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何はともあれ、ドラゴンの力を無事に得られて良かった。
おめでとう、ひな。これで少し強くなったね。
本当はヒントをあげたいところだけど、ひなが頑張ってくれてるから……今回の件は、僕から助言はしないよ。でも、助けて欲しいとき……傷ついて、辛くて、泣きそうになったら、その前に僕を呼ぶこと。
それから、水晶の回復薬のこと。
春が交換してくれる予定のもの、変わりに僕が交換をしてあげる。ひなの身を護るのに必要な力だから、これくらいのサービスはしないとね。
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「おお、鈴花さんのものを交換してもらえるんだ!」
これはとてつもなく助かる。
水晶の回復薬のレシピは、やっぱり欲しい。回復薬をコンプリートしてしまいそうだと思いつつも、私はこの世界に何種類くらいの回復薬があるのかも知らない。
「ようし、頑張るぞっ!」
更新遅くなりましたごめんなさい!(スライディング土下座)←まろよりすごい(何)
そしてそっとご報告。
Twitterには書いたんですけど、夏コミスペースいただきました。
夜あたりに活動報告でお知らせできたらいいなぁ〜!




