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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第5章 闇に目覚し一輪の花
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5. ドラゴンの力 - 1

 アグディスで、ドラゴンさんにもらった黄金の花。もと、宝石。

 これを飲み込むと、ドラゴンの力を得ることができるのだという。


「大丈夫、私とまろがちゃんと見てるから」

「ぱくっといっちゃうのである!」


 なんだか不安なんだけれど、本当に大丈夫だろうか?

 ドラゴンさんに貰ったこの宝石。飲み込んでと言われたけれど、結構勇気がいると思う。


 一応、倒れても大丈夫なように……場所は私のベッド。

 もちろん全力で意識をしっかりと持っている所存ではあるけれど、何があるかわからないからね。とりあえず、喉に詰まりませんようにと祈るしかない。


「おそらく、力が馴染むまでは少し時間がかかるわ。大丈夫、お店のことや回復薬(ポーション)のことも、私がフォローするから」

「は、はい」


 それも若干不安ではあるけれど、今はレティスリール様の言葉に甘えるのがいいだろう。


「でも、いったいどんな変化があるんでしょう?」

「ひなみに足りない力を補ってくれると思うわ。私の予想は、攻撃や、力の方面ね」

「少しはパワーアップしておかないと、厳しいのであるっ!」


 なるほど。

 ドラゴンさんの力を受け入れることによって、私の足りない能力が補強されるということか。

 攻撃力があがるというのはあまり想像できないけれど、確かに私に取って必要な力なのかもしれない。


 どきどきしながら、私は黄金に輝く花の宝石を口に含む。

 ごくりと、一思いに飲み込んだ。


「……あれ? れ、れ、れ?」

「ひなみっ!?」

「大丈夫よ、まろ。ひなみは力を受け入れるだけだから、私たちは見守りましょう」


 レティスリール様の声が遠くに聞こえて、いったいどうなるのだろうと考えるが、私の意識はそこでとぎれた。




 ◇ ◇ ◇


「あれ?」


 ぱちりと、私は大きく目を見開いた。

 確か、黄金の宝石を飲み込んだんだと思い出して辺りを見渡す。


 ……森の中だ。


「家のベッドで飲んだというのに、どうして外にいるんだろう?」


 それとも、これは夢なのだろうか。おそらくそうだろうと思うけれど……。

 首を傾げつつ、私は森の中を恐る恐る歩いてみることにした。一カ所にとどまっているよりも、周囲を把握しておいた方がいい。

 魔物がでないことを祈りながら、森の中を進んでいく。


 ガサッ!


「うひゃぁっ!」


 前方の茂みから物音が聞こえて、私は体をすくませた。

 もしかしたら、魔物かもしれない。けれど私は丸腰だ、どうしようと思った……が、そこから飛び出してきたのはうさぎだった。

 ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間で、うさぎは軽く10匹以上いた。


「え? どういうこと?」


 うさぎは群れをなす動物ではなかったと思うのだけれど、違うのだろうか。

 謎だと思いながら先を進むと、次は狸、鶏、犬、はては熊と……様々な動物が私の方向へやってきた。

 いや、逃げてきたと言った方がいいかもしれない。


「さすがに熊はびっくりしたけど……」


 でも……。

 きっと、私が行くべき方向はこの動物たちが逃げている方向なのだろうなと思う。この先に何があるかはわからないけれど、行かなければ。


 びくびくしながら歩いていくけれど、動物はすべて逃げた後なのか出会わなかった。


「あ……」


 10分ほど歩くと、少しひらけた場所が視界に入った。

 暖かな日差しが気持ちよさそうなその場所は、なんだか見覚えが……あって。


 くるりと、後ろを確認する。

 右を見て、左を見る。

 ……うん。間違い、ない。


「ここ、私の家がある場所だ」


 少し特徴のある木は、私が普段見ているものにとても似ている。

 多少の違いはあるけれど、同じだ。少し幹が細くて、背が低いだろうか。


「同じだけど、ちょっと違う?」


 小走りで家が立っている場所に向かってみると、そこには1本の若芽があった。


「……うぅん?」


 でも、ここには私の家があるはずだ。


 家の代わりにある小さな若芽。

 懐かしいけれど、一回り小さい木々たち。


「もしかして、これは過去の世界?」


 それであれば、納得がつく。

 そしてここは夢の中なのだろう。人間の体で過去へ行くなんて、できないだろうから。


「でも、ここでどうすればいいんだろう」


 ドラゴンさんがいるのかと思ったけれど、影もない。

 うーんと悩みつつ、私の視線は家がある場所に生えた若芽へ。


 ……育ててみたらどうだろうか?

 そんな考えが、私に浮かんだ。


「小さな若芽がどう育つのかはわからないけど、きっとここに生えてることは意味があるような気がするんだよね。……《天使の歌声(サンクチュアリ)》!」


 私がゆっくり言葉を紡ぐと、小さな若芽はしゅるりと伸びて、どんどん空へ向けて大きくなった。

 すごいなと見守って、もう1度「《天使の歌声(サンクチュアリ)》」と唱える。

 そうすれば、今度は幹がぐんと太くなった。私は慌てて後ろに下がり、若芽の成長を見守ることにした。


「すごい……」


 にょきにょきと伸びていって、あっという間に私の身長を超えて、巨大な木へと成長を遂げた。

 数分間、ずっと見ていたと思う。その後、ぴたりと成長を止めた木は、おそらく私の家と同じくらいのサイズになったと思う。

 これにドアや窓を着ければ、私の家と同じになるのではないだろうか。


 そう考えていれば、ばさりと翼の舞う音が私の耳へ入った。

 いったい何事だろうと上を見れば、綺麗な黄金が視界いっぱいに広がった。


 ドラゴンさんだ……!

 私がアグディスで出会ったドラゴンが、育てた木へ舞い降りて翼を休めているのだ。


『グルル……』


 優しい声で鳴いて、どうやら眠りに入ったらしい。


「えっと?」


 どうすればいいのだろうか。

 寝られてしまっては、私としてもどうしようもない。

 困ったようにドラゴンさんを見ていると、黄金の花の蕾をその体に見付けた。まだ咲いていなくて、少し寂しさを感じてしまう。

 よく見れば、背中にはたくさんの蕾が見えた。


 まるで、空を飛ぶ花畑だ。


「もしかして、花が咲いていないから元気がでないのかな?」


 その証拠に、ドラゴンさんは疲れ果てたように眠っている。背中の蕾も、くたりと顔を下へ向けていて元気がないように思える。

 もちろん、私の思い過ごしということもある。

 でも、それが原因ということももちろんあるだろう。


 ……スキルを、使ってしまっていいだろうか。

 どきどきしながら、私は長い尻尾へと手を伸ばす。だらりと木のてっぺんから垂れ下がる尻尾は太く、とても力強い。


「《天使の歌声(サンクチュアリ)》」


 ぎゅっと抱きついて、私はドラゴンさんへスキルを使った。

 尻尾に生えていた草花から背中にかけて、つぼみが大きくは花開いていった。ぽぽぽんとはじけるような、そんな効果音がつきそうだ。

 色とりどりの花が、咲き乱れた。


『グルルゥ……』

「わっ!」


 眠っていたドラゴンさんの顔が、私へ向けられた。


『お前が、私の寝床を用意し花を咲かせたのか……?』

「あ、はい。そうなるの……かな?」


 こくこくと頷けば、ドラゴンさんは『そうか』と静かに言う。

 その顔は少し穏やかで、私はほっと安心する。


『ふむ……。黄金の宝石を飲み干したか』

「!」


 私をまじまじと見たドラゴンさんは、なるほどと頷いた。


『我の花を咲かせてくれたこと、ありがたく思う』

「い、いえ。よかったです」


 その迫力にどきどきとしながら、私は首をぶんぶんと横へ振る。

 私の力で元気になってくれたのなら、それはとても嬉しい。


『ありがとう、小さき女神よ』

「……え?」


 ドラゴンさんが私を女神と呼んで、私へ一輪の花を差し出してくれた。

 いったい何だろうと受け取ると、それはすうっと私の体の中へ入っていって……熱さを、もたらす。

 でも、どこか心地よいもので、私の意識はふわふわとする。


 まるで、ドラゴンさんに包まれているよう。

 私は再び意識を閉じた……。

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