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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第5章 闇に目覚し一輪の花
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1. 闇につつまれた世界

最終章スタートです。

あと少し、ひなみたちの物語に付き合っていただけると嬉しいです。

 視点:レティスリール



 エルフや獣人たちが協力してくれたおかげで、私はやっと薬草の栽培をアグディスに定着させることができた。 

 今は森で薬草の成長具合などをチェックしているところだ。護衛というかたちで、エルフのミルルが傍にいる。

 しかし……そろそろ次の大陸へ移動するのがいいかしらと考えていたときに、それは起こった。

 空がサリトン大陸の方から暗くなり、太陽が隠れてしまったのだ。



「え?」



 私はすぐに立ち上がり、空を見てその原因はどこにあるのだろうかと考えを巡らせる。このようなこと、通常では起こりえないのだから。

 そしてその闇が、一定の方向から来ていることに気付く。あれは間違いなく、ひなみたちがいる方向。



 私の嫌な予感は、どうやら的中してしまったようだ。



「レティスリール様、これいはいったいどういうことなのです?」

「……おそらく、魔王が目覚めたのでしょう」

「え!?」



 驚くミルルの声に、私は力なく首を振る。

 人々に広がると、不安にしてしまう。ミルルには他言無用と伝え、私は急いでひなみたちの下へ向かう準備をしなければいけない。

 魔王と戦うことができるのは、異世界から召喚されし者とされている。この世界に住む者では、魔王には敵わない。

 だから私は、遥か昔にハル君を日本からこの世界に召喚したのだ。



 ……魔王を倒してもらうために。



「でも」



 今回、その役目を行うのはひなみだろう。

 私にはもう、女神としての力はほとんどない。代行者となったひなみであれば、異世界から勇者を召喚することが出来る。

 ……けれど、ひなみがそれを選ばないことはわかっている。

 この世界に勇者として召喚されたハル君の運命を知ってしまっているから。そして、家族と離ればなれにしてしまうということを……ひなみは決してしないだろう。



「意地悪ですねぇ、リグリス様」



 彼はいったいどこからどこまでを考えているのだろうか。

 今回の魔王も、ひなみが丁度この〈レティスリール〉にいることも、すべて貴方の計画ですか? 私が問いかけても、きっと返事はしてくれないだろう。

 ひなみはとても大変なのだと思う。けれど、それ以上に私は……リグリス様が大変だということも知っている。



「どちらを応援すればいいのか、悩みますね」

「レティスリール様?」



 独り言ちながらくすくすと笑っていれば、ミルルが困った顔をしながら私を見る。「大丈夫よ」と伝えて、私はすぐに中央にあるエルフの村へ戻ることにした。



「ミルル、私はすぐに旅立とうと思います。荷物の準備を手伝ってちょうだい」

「もちろんです! けれど、それはこの空が暗くなっているからですか?」

「私にできることは少ないけれど、いないよりはいいでしょう」



 大きく頷いたミルルさんは、村に戻るために摘んだ薬草などを急いで鞄へつめる。そのままダッチョンへ乗り、村へと駆け抜けた。






 ◇ ◇ ◇



「レティスリール様、ご気分はいかがですか?」

「うぅ〜ん、あまりよくはありませんね」



 ひなみたちの下へ向かうため、船へ乗りました。

 もちろん私はひなみの家とアグディスが箱庭の扉で繋がっていることを知らなかったので、旅になります。教えてくれていたらどんなによかったかと、悔やみました。



 そして現在、絶賛船酔い中です……。

 心配したミルルが私のお世話をしてくれるのだけれど、ちっともよくなりません。

 けれど、こればかりは仕方がない。私は水が好きではないのだ……。植物にあげる水ならいいのだけれど、すべてを流してしまうような大量な水は嫌い。大嫌い。昔の自分を見ているよう。



「無理にでもついていてよかったです」

「うぅー」



 そう、そうなのです!

 ミルルは「私もおともします」と、私についてきてしまったのです!! 私は必死で嫌だと伝えたのに、彼女は譲らなかった。

 なので勝手に船に乗って旅に出ようとしたのに、この体調不良のせいで船の中に隠れていたのを見つかってしまった。私は1人でも大丈夫なのに。



「しばらく1人で休みたいから、そっとしていてちょうだい」

「そう、おっしゃられるなら……」



 ミルルが部屋を出て行ったのを確認して、私はころんとベッドで寝返りを打つ。

 どうしてもミルルを好きになれない私は、やっぱり女神失格だろう。「ふぅ」と息をついたところで、隠れていたシンが姿を見せた。



『レティスリール、大丈夫?』

「ええ。少し横になって、陸地につくまで耐えればいいのよ……」

『それは大丈夫って言わないよね!』



 あははと笑うシンは、黒い髪に、長い耳。手のひらサイズの、本の精霊。私が書いた日記が、精霊へと昇華した姿。

 だから私が一番信頼しているのが、この子。シンは私のことを何でも知っているし、どんな弱音もはけてしまう。

 だって、自分自身の日記が彼なのだから。隠さすずべて書いていた自分を悔やむけれど……今では逆に開き直ってしまっている。



『魔王かぁ……。でも、昔みたいに魔物がたくさんいるわけじゃないよね。なら、そんなに深刻でもないんじゃない?』

「このまま暗闇が続いたら、植物は育たなくなるし、人だって気力がなくなってしまうもの。魔王が目覚めている状況は、よくないの」

『あぁ、そっかぁ』



 うんうんと頷きながら、『確かにそうだねぇ』と気楽に言う。そののほほんとしたシンの性格を、私に似ていますねと誰かが言っていた気がするけれど……決してそんなことはないと思う。

 私はシンよりも真面目だ。



「とりあえず、早くひなみに会いたいわ」

『そうだね! 僕も最近あってなかったからっ!』

「元気にしているといいのだけど、どうかしら」



 問題は、ハル君の現状だ。

 元気にしているのだろうか。そして、今回の件に関して何かしっていたりするのだろうか。

 ハル君に魔王を倒してもらったと思っていたのに、今回また魔王が現れたのは……いったいどういうことなのか。

 私は、早急にいろいろなことを確認しないといけない。



 ハル君が魔王を倒せていなかったのか。

 それとも、新しい魔王が生まれてしまったのか。



 けれど、どちらもいまいちぴんとこない。

 魔王というものは、そう簡単に生まれたりはしない。



「私は何か大きな見落としをしていたのかしら……?」

『うーん、どうだろうね』



 シンも一緒になって首を傾げるが、答えは出そうにない。

 けれど、ひなみが何か掴んでいるような気がする。



「とりあえず、一刻も早くひなみの下へ向かいましょう!」

毎週土曜日に更新していければいいなと思います。

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