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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
143/175

35. まろ様の天下

本日、3月15日。

箱庭の薬術師 2巻の発売日でございます。

皆様のお陰で、2巻も無事に本という形に出来ました。

ありがとうございますー!

『まぁ、まろ様! 今日も神々しいですわ。さすが精霊様!』

『まろ様、お茶です』

『……まろ様』

「ありがとうなのである」



 一晩たって、箱庭の扉を使いダンジョンにある〈ひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)2号店〉へとやってきた。

 今日は〈ひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)〉は定休日。2号店のことをいろいろ整えるために時間を使うことにします。

 ……のですが。なんだかまろが、崇められている!? 妖精の3人がまろに様を付けて呼び、お茶を淹れ場所を整えている。まろの後ろにいる私が視界に入っていないのではないだろうか。

 どうやら妖精の3人にとって、精霊であるまろは崇めるべき上位の存在であるらしい。加えて、私たちが旅をしている間にまろがいろいろとフォローをしてくれていたのです。



『あ、店長! これ、売り上げの秘密の硬貨よ。渡しておくわ』

「ありがとう」



 どうやら私もちゃんと視界に入っていたようだ。ベアトリーチェが秘密の硬貨を私に渡してくれた。その枚数は、62枚。

 この2号店をオープンして旅をしたため、だいたい半年で62枚ということになる。こんなダンジョン奥地のお店だから……そう思っていたが、回復薬(ポーション)は結構売れているのではないだろうか?



 値段に関しては、人間価格とは違うのでベアトリーチェたちに任せている。内訳の詳細を聞けば、しっかり管理していると教えてくれた。

 販売しているものは、以下の通りだ。



 体力回復薬(ハイ・ポーション) 秘密の硬貨1枚 

 真紅の回復薬ガーネット・ポーション 秘密の硬貨3枚

 魔力回復薬(マナ・ポーション) 秘密の硬貨5枚

 深海の回復薬(マリン・ポーション) 秘密の硬貨7枚

 菖蒲の回復薬(アイリス・ポーション) 秘密の硬貨15枚



『値段設定は、魔力回復薬が重要なのでそちらを高くしているの。売れたのは、真紅の回復薬ガーネット・ポーションが1個、深海の回復薬(マリン・ポーション)が2個、菖蒲の回復薬(アイリス・ポーション)が3個よ』

「合計6個売れたんだね。しっかり管理してくれてありがとう、ベアトリーチェ。妖精さんは、魔力を多く使うんだね」

『そうよ。妖精や精霊様は、基本的に魔法を使うことが多いの』



 確かに、まろも雪魔法を使っていたなと思い返す。ただ、体術も得意だったので、それぞれ特性もあるのかもしれない。

 しかし、6個販売をして秘密の硬貨62枚……。これだけあれば、アイテム交換も行える。



「おまかせしちゃってるけど、値段は大丈夫? 高かったりとか……」

『大丈夫。店長の回復薬(ポーション)は世界一』

『みんな、買っていってくれてるから問題ないわ。ただ、ここは来るのが大変だから、お客の人数が少ないの』



 不安になって確認をすれば、フィーナが問題ないとフォローをしてくれる。そしてベアトリーチェは、これまで来たお客様のことを教えてくれた。

 きてくれた人は、この半年で5人。全員が回復薬(ポーション)を購入してくれたらしい。販売個数が少ないのは、このお店自体の知名度が少ないから。

 ダンジョン奥地にあるこのお店を発見するのは、間違いなく大変です。むしろ、きてくれた人はいったいどうやってこのお店のことを知ったのだろうか?



「ひなみ! 秘密の硬貨があるなら、店舗のためのアイテムと交換するのである!」

『そうね、まろ様の意見に私たちも賛成ですわ!』

「そうだね。じゃぁ、交換してみようか」



 現在の硬貨で交換できるリストは、下記の通り。


 5枚

 おもてなしセット

 妖精の掃除道具

 妖精の羽休め

 10枚

 招きの蜂蜜

 クリスタルの文房具ランダム

 20枚

 店舗拡張:来客スペース

 クリスタルの雑貨ランダム

 50枚

 店舗拡張:全体拡張

 クリスタルの家具ランダム



 みんなでリストを眺め、どうしようかと相談をする。

 そうしなければ、私にはどれが必要なものがいまいちわからない。アイテムに関しては、ベアトリーチェが説明をしてくれた。



 おもてなしセット

 お客様をおもてなしするためのティーセット


 妖精の掃除道具

 魔力を込めた者を主と認め、自動的に掃除をする掃除道具


 妖精の羽休め

 妖精が眠れる簡易ベッド


 招きの蜂蜜

 妖精や精霊などが好きな匂いがし、お店にお客様がきやすくなる



 ほかのものに関しては、説明通りのアイテムだ。

 クリスタル製の文具やお店の家具はもちろん気になる。が、今必要なのはベアトリーチェたちの休憩スペース。それから……。



『『「招きの蜂蜜!!」』』



 全員の声が一致した。

 やはりお客さんが少ないというのが、このお店一番の問題です。もっと買いにきてくれている人が増えれば秘密の硬貨も増え、このお店をもっといい場所にできる。

 どれくらいの硬貨が得られるのかはわからないけれど、鈴花さんのアイテムだ。きっとすごいものに違いない。



「これを使ってお客様を呼び込んで、大儲けするのであるっ!!」

『さすがまろ様! そうですね、もっともっと、このお店を大きくいたしましょう!』



 まろの悪そうな笑顔にベアトリーチェが賛成をする。こらこらと思ってみていれば、フィーナとアークルも大きく頷いていた。

 妖精といえども、商売には厳しいのかもしれない……。私が何かを言うよりも、おまかせした方がいい。間違いなくいい。



「招きの蜂蜜は秘密の硬貨10枚だから、まだほかのものも交換できるね。ベアトリーチェ、あとは何が必要かな?」

『そうですわね。おもてなしセットと妖精の掃除道具はあった方がお店の品質向上にもいいと思いますわ。私たちの手より、掃除道具に命令をした方が綺麗にもなりますから……。妖精の羽休めは、あればもちろん嬉しいですけれどなくても問題ありません』

「わかった。ありがとう」



 秘密の硬貨にはまだ余裕があるから、妖精の羽休めもしっかりと3個ゲットしようと思う。

 交換するには鈴花さんに直接伝える必要がある。今は私の家にいるから、1度戻って交換をお願いしよう。まろたちにお店を託し、私は1度家へ。






 ◇ ◇ ◇



「…………っ!」



 すごい。

 家に戻り、鈴花さんを見つけたのは庭だった。そこで見たのは、イクルに修行を付ける姿だ。

 イクルが棍を持ち、鈴花さんにとても速いスピードで打ち込んでいく。私の目ではなかなか追うことのできない棍の軌道を、しかし鈴花さんはいとも簡単に読み解き軽やかに躱していく。

 さすがは、初代勇者だ。同じ日本人だとは、とてもではないが思えなくて苦笑してしまう。私もあれくらい強かったならば、この家に2年間も引きこもったりはしなかったのに。



 シュッと風を切る音が耳に届き、その後すぐに音が止んだ。

 あれ? と思い2人を見ると、イクルの棍が鈴花さんの首筋にあたるでろうギリギリのところで止められていた。寸止め、という技だろうか。



「師匠、避けないなんてどういうつもり?」



 怒りを含んだイクルの声が耳に入る。

 ……鈴花さんが、イクルの攻撃を避けなかったということ? でも、イクルの棍を身体に受けたら大怪我どころでは済まないと思うんだけど、どうしたのだろうか。

 心配ではらはら2人を遠目に見守っていれば、にこりと微笑んだ鈴花さんが私へと振り向いた。



「ひなみさんだよ、イクル。集中するのはもちろんいいけど、周りの気配にもう少し注意をした方がいい。イクルは一度受け入れると、敵意がない気配にはとても鈍くなる」

「なるほど。俺も、まだまだだね……」

「ええと、邪魔をしちゃってすみません。修行中だったんですよね?」



 イクルは私に気付いていなかったらしい。いつも気配には敏感なので驚くけれど、あれだけ棍を振るうことに集中していれば仕方がないと思う。

 鈴花さんは、とても厳しい師匠さんのようです。



「どうしたのさ、ひなみ。今日はダンジョンのお店に行ってたんじゃなかったの?」

「うん。回復薬(ポーション)が売れてて、秘密の硬貨が集まったからアイテムと交換してもらおうと思って」

「あぁ、なるほど。師匠、交換だって」



 イクルが「早くしなよ」と鈴花さんに声をかければ、苦笑しながら鈴花さんが硬貨を受け取ってくれた。



「えーっと、55枚だね。何が欲しい?」

「おもてなしセット、妖精の掃除道具、妖精の羽休めを3個、招きの蜂蜜、店舗拡張:来客スペースです!」

「なら、丁度55枚だね。夜のうちに用意しておくのでいいかな?」

「はい。ありがとうございます!」



 大きく頷いて、これでみんなに喜んでもらえると安心する。

 リグ様のように一瞬で用意されたらどうしようかと思ったけれど、いくら勇者であった鈴花さんにもそれはできないようだった。

 つまり、リグ様はとてもすごい……ということだ。やっぱり神様は、いろいろなことができるんだと改めて思う。



「明日、楽しみにしていますね」

「うん。期待してて。ベアトリーチェたちも、きっと喜んでくれると思うよ」

「はい。修行の途中にすみませんでした。私はお店に戻るので、続けてください」



 鈴花さんとイクルに手を振って、私は家へともどる。しばらくは、棍の基礎などを見直して、それから実践に入っていくのだと言っていた。

 あのすごい攻防が基礎の見直しなら、実践はどれほどハードなのだろうか。






 ◇ ◇ ◇



「ひなみ、おかえりなのである〜!」

『『おかえりなさい』』

『…………おかえりなさい』

「うん。ただいま! 頼んだアイテムは、夜のうちに用意してもらえるみたい。明日が楽しみだね!!」



 先ほどのことを4人に伝えて、今日はのんびりをお茶をすることにした。



『……これ』

「うん? お花?」



 不意に、アークルが手にすっぽりおさまるくらいの大きなお花を私とまろに手渡してきた。アークルたちは、少し大きめのを3人で持っている。



『私、育てる。美味しい』

「うん?」

『ふふ、これはアークルが育てている花ですわ。中にたっぷり蜜を含んだ雫がたまっていて、とっても美味しい飲み物なんです。まろ様も、大好きなんですよね』

「そうなのである!」



 もらった花を大事そうに持つまろが、しかしさっそく口につける。幸せそうな顔をして飲む姿は、まろにお菓子をあげたくなってしまう。小さな子を可愛がりたい衝動に似ている。

 まろを見習い、私もそっと花に口を付け、中の雫を一口飲む。



「……! わ、すごい。すっきり飲めるのに、ほんのり甘くて……。身体中が満たされていくみたい」

「そうなのである。アークルが作るジュースは、とっても美味しいのである! あと、フィーナは料理が上手で、ベアトリーチェは果物を育てるのが上手なのである」



 まろが妖精さんの得意なことを教えてくれる。

 私たちがこのダンジョンを浄化してからは、各自いろいろと好きなことを出来ているらしい。綺麗な水がダンジョン内に流れ、環境もよくなっているらしい。



『このダンジョンも住みやすくなっているから、もしかしたら他の妖精が移住してきたりするかもしれないわね! ふふ、そうしたらお店も繁盛するわ』



 ベアトリーチェが嬉しそうに今後のことを語る。

 ダンジョンを快適にし、気持ちよく暮らせる場所にしていきたいらしい。ここは元勇者である鈴花さんもいるし、セキュリティ面でも万全だろうなぁ……。

 例えドラゴンが攻めてきたとしても、まったく問題なさそうだ。



『まろ様、お菓子も食べて』

『私の果物もありましてよ!』



 ……とりあえず、ここはとっても平和ないいお店です。ここは元勇者であるここは元勇者である

2巻はまろとハピ(書籍オリジナル)が仲良しです。

今後もまろの活躍にご期待ください!(え?)

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