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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
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34. リグリスの幸せ

リグリスのターン!?

 視点:リグリス



 あぁ、可愛いな。

 俺の書いた『なぁに? ひな。』という交換日記の文字を見て、ひなが固まっている。そんな姿もやっぱり可愛くて、笑ってしまう。

 きっとどうしようと必死に考えているに違いないけど、さて、どう返事が返ってくるのかな。



「話しかけるときとまた違って、なんだか新鮮だね。……あ、深呼吸してる」



 視界に映るひなの姿。

 ペンを持ち、何を書いていいのかわからずにぷるぷるしている。まさに小動物だ。



 ……さて、どうしようか。

 ひなが何か返事をしてくれるまで待つのもいいけれど、これではいつまでたっても返事がこないような気もする。

 昼間のことを聞いてもいいけれど、ひなはそれを俺が知っているとわかったらどうするかな。顔を真っ赤にして、恥ずかしがるだろうか。それとも……いや、ベッドにもぐって隠れてしまうかもしれない。



「……ん?」



 そんなことを考えていれば、俺の手元にある対の交換日記が光る。淡い光が文字になり、ひなから返事がきたということを知らせた。

 おそらく一生懸命考えてくれただろうその言葉は、少しだけ文字が震えていた。そんなちょっとした仕草も、愛おしくてしかたがないと思ってしまう。



『突然ごめんなさい。その、いろいろと考えてしまって……』



「ひなは、いつも悩んでるなぁ」



 しかし、それが自分に向けられているのだから、どうしても口元が緩んでしまう。

 ……もっともっと悩んで、考えて、俺のことだけでその思考を埋めてくれればいいのに。

 どう返事をしようかな。意地悪なことを書いたら、ひなの中はもっと俺で満たされるのか……なんて、馬鹿なことを考えて直ぐにその思考を捨てる。



『うん。何を考えてたの? ……僕のこと?』

『…………はい』



 ひなに尋ねるように文字を綴れば、いつもより小さな文字で『はい』という返事がくる。

 ベッドにうずくまって、顔を赤くしてる。再度可愛いと思って、『嬉しいな』とペンを走らせる。

 きっと今日のひなは、今までで一番俺のことを考えてくれているんじゃないだろうか。ひなと出会って、2年以上が経っているけれど、実際に会ったのは2回。

 交換日記は毎日しているし、会話をすることも何度かあった。

 いつも夜に俺から話かけて、ひなが寝るまで会話を楽しむ。そうすれば、少しでもひなの記憶に俺の声が刻みこまれればいいのに。



『リグ様は……ずうずうしいって、思われるかもしれません。それでも私は、リグ様と一緒に生きていたいと思ったんです。でも、私は人間で、リグ様みたいに長い時を生きることができなくて……っ』

『……ありがとう、ひな』



 ひな自らに、そう思ってもらえることがどれほど幸せだろうか。

 素直に伝えてくれる気持ちが嬉しい。



「確かに、ひなは人間だ。今のひなには、俺のいる神の領域に長く居ることすらできない……」



 でも。……方法がないわけではない。

 そしてその(すべ)欠片(ヒント)を、ひなは既に知っている。



「神の領域で存在するのならば、強い魂の力が必要だ」



 ひなを異世界である〈レティスリール〉へと送った本来の目的は、〈神の領域〉に耐えられる魂の力を得てもらうためだ。

 ひなは〈レティスリール〉で強くなった。新しいスキルや魔法の取得に、複数の加護。少しずつだけれど、その1つ1つはとても強大な力。



『ひなが僕と一緒に生きたいって言ってくれて、すごく嬉しいよ。僕も、ひなと一緒にいたいからね』



 ひなが息を呑むのがわかった。自分の身体をぎゅっと抱きしめて、そっと指で俺の返した返事を辿る。その仕草が可愛くて、すぐにひなに会うことができない自分が憎い。



『でも』



 けれど、俺はひなへの言葉を続けて交換日記へ綴る。

 酷い現実をぶつけているようで嫌だけれど、こればかりは仕方がない。ひなに、頑張ってもらうしかない。



『僕は、ひなに永遠の命をあげることはできない』



「……神も、万能っていうわけではないからね」



 ほぼ永遠に動き続ける命を創り出すことはできるけれど、もともと人間として生まれたものに俺が永遠の命を与えることはできない。

 俺がひなに永遠を与えられたらどんなによかったか。



『そうですよね。……実は、鈴花さんに相談をしたんです。不老不死になれますか、って』

『うん。ひながそこまで考えてくれてるのが、すごく嬉しいよ』

『……でも、私が不老不死になるのはとても難しいみたいで』



 寂しげにペンを走らせるひなの姿が、俺の心をじんとさせる。一緒に生きたいという、ひなの気持ちが具現化してこの目に見えるのではないかと思うほどに。



『1つだけある方法は、鈴花さんのスキルである《不老不死》を私がもらうっていうものだったんです。……さすがに人のスキルをくださいなんて、図々しいですから』

『それじゃぁ、ひなは諦める?』



 少し意地悪かな、と。

 そう思いつつ交換日記に諦めるのかと書いた瞬間、ひなの声が脳裏に響く。



『そんなの、嫌ですっ!!』

「……っ!」



 まさか。

 初めて、ひなからの声が俺へ届いた。こちらからひなへ、というのはいつもあったけれど、ひなからこっちへ、というのは今まで一度もなかった。

 身体中に歓喜が走ったのは、言うまでもない。



「まさか、ひなから直接話しかけてもらえるとは思わなかった」

『……えっ!? 嘘、私……?』

「ピンキーリング、上手に使えたんだね。よかった」

『……っ』



 少し戸惑うひなの息遣いが聞こえて、くすりと笑う。



「少し、意地悪をしちゃったね。……ねぇ、ひな。ひなは今まで通り、過ごしていればいい。大丈夫、僕が保障するから」

『今まで通り、ですか?』

「そう。ひなはちゃんと強くなってる。もし、本当に永遠をともに生きてくれるのであれば……不老不死にだってなることができるよ」

『え……っ?』

「大丈夫。僕が信じられない?」



 耳元で囁くように、ゆっくりと、声を甘くして言えばひながこくこくと頷いている姿が視界に入る。可愛いなぁと、本日何度目になるかわからない可愛いを思う。



『信じます。リグ様のことは、ちゃんと、全部、信じてます……っ』

「……ありがとう」



 ひなの警戒のなさが少し気になりはするけれど、全面的に信頼されているということは素直に嬉しいものだ。

 他の(ヤツ)にも警戒が少ないのだけが心配だ。特に夜、男を自分の部屋に入れるのはよくない傾向だ。襲われでもしたら、ひなはどうするつもりだったのか。

 力のない女の子だということを、もっと自覚して欲しい。こればかりは、しっかり注意をしておかないといけない。

 ひなが自分で招きいれたら、何のために部屋へ鍵を設置したのかがわからない。



「……ひな」

『は、はいっ』

「次に、たとえば鈴花じゃなくイクルだったとしても……。夜、部屋に男を入れたらお仕置き、だからね?」

『……っ!? え、あっ……す、すみません。私、えぇと、えっと……っ』



 声のトーンを落として言葉を紡げば、慌ててひなが謝罪の言葉を口にする。本当なら、昼間にだってひなの部屋に入れて欲しくはないほどなのに。



「うん。わかってくれて嬉しいよ。……僕は、ひなが思っているよりも独占欲が強いんだよ」

『ど、どくせん?』

「そう。ひなにずっと傍に居て欲しい。他の人なんて見ないで、僕のことだけを見てて欲しいって思うくらいにね?」

『そ、その……。は、恥ずかしいです』

「うん。恥ずかしがるひなも可愛いから好きだよ?」

『な、うぁ、リグ様酷いです……。もう……』



 困ったように顔を赤くさせたひなの声が、可愛い。

 自分の言葉に反応してくれるひなが可愛くて、あぁ、これが幸せなんだなと思う。



 だから早く、〈神の領域〉(ここ)へおいで……。

やっぱり変態だったね………


活動報告にて、キラリ、タクト、あの人のキャララフを公開しましたよー!

よかったら見てくだしぁっ

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