31. 不老不死
「うわああああぁぁぁひなみ! それにイクルなのであるーっ!! 会いたかったのであるー!」
アルフレッドさんたちと旅に出てから半年。
私はイクルとともに無事、自分の家へと帰ってきた。
街から〈ひなみの箱庭〉へと入れば、すぐさままろが私のところへ飛んできた。ぎゅっと抱きついてくるまろを受け止めて、しかしその反動でくるりと回ってしまう。
ちょこちょこ家へと帰る予定だったのだけれど、箱庭の扉を設置できる場所がなかったためまろにうのはすっごく久しぶりなのです。
ごめんねまろ、お土産にお菓子をたくさん買ってあるから……!
「はぁ。あいかわらずだね、まろも」
「イクルもなのである!」
やれやれと呆れた顔でまろを見ているイクルは、まさに昔ながらの光景だ。なんだかこのやりとりも懐かしいなぁ。ほんわかする。
「あはは、イクルってば仏頂面だねー」
「って、なんで師匠がいるのさ」
「やだな、遊びにくるって約束したでしょ?」
おぉっと!
まろに気を取られていたけれど、店内にはイクルの師匠である鈴花さんもいた。
半年前と変わらない姿だけれども……瘴気は大丈夫なのだろうか? 心配です。
「ひなみさん、お久しぶり」
「はい。お久しぶりです、鈴花さん。来てくれて嬉しいです」
「うん。あのときは、いろいろとありがとうね。瘴気が消えたわけじゃないけど、少し外出するくらいにしてるから、影響は抑えられてるかな」
よかった。とりあえずは、大丈夫ということ……だよね?
安心して鈴花さんを見れば、いつものように大量の真紅の回復薬を買ってくれていた。
そういえば、コーラが好きだと前に言っていたことを思い出す。確かにこの世界は、炭酸のジュースがない。しかもコーラとなればなおさら。
「鈴花さんって、ジャンクフードが好きなんですか?」
「うん、そうそう。大好きなんだよね」
あははと笑いながら肯定する鈴花さんは、蓋を開けて飲み干した。
「美味しい。あとはハンバーガーでもあればバッチリなんだけどね、これはなかなか。あのジャンクっぽい味が出ないんだよね」
「美味しいじゃなくて、ジャンク思考なんですか……」
「そう。あれはすっごい美味しいわけじゃないんだけど、どうしても食べたくなるんだよね」
腕を組みつつ「不思議だよね」と言う鈴花さん。
確かに私も何度か食べたけど、たまに食べたくなる。あれはちょっと、不思議現象だよね。
「何さ、2人とも。ジャンクフード?」
「あぁそうか、イクルは知らないよね。まぁ、安くてお手軽なご飯って感じかなぁ。それを食べるときは、ひなみさんの真紅の回復薬と同じ味の飲み物がすっごい会うんだよね」
「ふぅん……」
いけない、日本の食べ物話で盛り上がってしまった。
イクルとまろはわからないのだから、あまり皆がいる場所で話題にすべきではなかった。いけない、気をつけないと。うっかりいろいろなところで喋ってしまいそう。
街中だったら、怪しさ爆発かもしれない。
「まぁ、買ったらなとっとと帰れば」
「イクルってば冷たいなぁ。仮にも師匠なのに」
「はいはい」
鈴花さんに帰れと手を振るイクル。それをいつものことだという風に受け流す鈴花さん。
うん、この師匠にこの弟子ありっていう感じがする……かな?
「そういえば、活発になった魔物は大丈夫だった?」
「! はい、もうすっかり。ムシュバール帝国が率先して討伐をしていたみたいで、今ではすっかり魔物の数も少なくなっているんですよ」
「それはよかった」
そう。実はもう、人が住む近くには魔物がいない。
勇者パーティーであるサリナさん、アルフレッドさん、サイネさん。そこに加わった私とイクル。それに各地の冒険者や、各国。
その協力があって、こんなにも短期間で平和になってしまったのです!
もちろん、山の奥地やダンジョンには魔物がまだたくさんいる。けれど、街の近くを出歩く分には魔物に遭遇することもほぼないだろう。
あまりにも圧倒的で驚いたけれど、それほどまでに各国や冒険者ギルド、この世界に住む人々が協力してくれた。
「ひなみはすごいのであるっ!」
「いやいや、すごいのは私じゃなくて冒険者の人たちだよ?」
すべてを私の活躍のように言うのはやめていただきたいです、まろさん。
「ひなみはすごいよ。回復薬だけじゃなく、光魔法。それに、スキルは魔物によってあらされた大地を癒した」
「イクルまで……。でも、それならイクル方がすごいよ。使える風魔法、すごく増えてた!」
「あぁ、呪が消えたからね。攻撃魔法が使えるようになったんだよ」
今回の旅では、イクルの魔法も大活躍をした。アルフレッドさんの炎をサポートするように風を起こし、強力な風の刃を魔物へとぶつけた。
さすが初代勇者の弟子、ということもあるのだろうか。イクルはきっと戦闘センスがいいのだろう。
「そうだ! まろ、料理の腕があがったから夕飯は任せるのである!」
「まろが!? すごい、頑張ったんだね!」
一瞬どきっとしてしまったけれど、確かに最初と比べるとだいぶ料理が上達しているはずだ。きっと。いや、絶対に。
まろが「イクルも手伝うのである〜!」と、引っぱり家の方へと消えていった。
……うん。イクルがいれば、おそらく味付けは問題ないだろう。きっと美味しいご飯を食べられる。楽しみです。
そんな一連の流れを見ていた鈴花さんから、笑い声が聞こえた。
「ふふ、にぎやかでいいね」
「そうですね。……特にまろはいつも元気いっぱいですから。あぁ、そうだ。鈴花さんもご飯を食べていきませんか?」
「え? いや、でもー……」
「大丈夫です、ほら」
リュックから浄化の木の枝を取り出して鈴花さんへと見せる。瘴気が気になるのであれば、浄化をしてしまえばいいのですよ。
お店の花瓶にもそっと木の枝をさしておけば、鈴花さんもきっと安心だろう。その後は、庭にも植えて、いつでも遊びにきてもらえる環境にしたいな。
「お花さん、少しだけこの子も入れてくださいね《天使の歌声》」
優しくスキルを唱えれば、花の横にさした浄化の木が少しだけ育つ。花よりも少しだけ高くなった枝は、花を護っているように思えてなんだか心が和む。
「ありがとう。イクルも、ひなみさんに出逢えてよかった」
「え?」
「イクルは呪奴隷だけど、特に誰かに仕えるなんて予定はなかったからさ。変な主人に出会ったらどう助け出そうかと思ってたんだけど……」
鈴花さんは手の中で回復薬の瓶を遊ばせながら、イクルとの話をしてくれた。
「ひなみさんが主人でよかった。結果、イクルの目も治ったんだ。感謝してもしきれないね」
「鈴花さん……。イクルも鈴花さんのような師匠をもって、幸せですね」
「うーん。どうだろうねぇ。なんだかんだで、弟子に何も言わずに出て行くようなやつだよ?」
私の言葉を否定する鈴花さんだけれども、表情は少し嬉しそうです。
これから先、もっと打ち解けられるようになったらいいなぁと思う。イクルが呆れ顔なのはデフォだから、わかりにくいかもしれないけれど……。
「イクルもね、昔はあんなにひねくれてはなかったんだよ。って、これじゃぁ俺のせいでひねくれたって言ってるようなものか……」
「いやいや。でも、飽きれた顔をしてるイクルはすっごくイクルっぽいですよ?」
「そう! そうなんだよ。あの呆れ顔はイクルだーって感じがする」
「ですよね」
やはり師匠の目線からも、イクルはイコール呆れ顔で問題なさそうだ。少し笑えば、鈴花さんも一緒に笑ってくれる。
同じ日本人として、もっとたくさんのことを話したい。けれど、どこまで話していいのだろうか。
私と同じ時代を生きてきた人なのだろうか? いや、ジャンクフードということは知っていたから、そこまで離れてはいないと思う。
実は江戸時代だった! なんて言われたら、何を話題にしてはいいのかわからない。
聞いても大丈夫かなと思いつつ、どうしても聞きたいことがあったので私はそっと鈴花さんに話を振る。
「そういえば、鈴花さんは……ずっとこの世界に?」
「うん。そうだね、こう見えて長生きなんだ」
「…………」
リグ様は、鈴花さんがこの世界に来たのは500年くらい前だと言っていた。でも、姿は私より少し年上くらいにしか見えない。
不老不死のような特別な何かがあるのか、それとも、神様のような力を持っているから人間の枠組みでは計り知れないのだろうか。
「やだな、そんなに気を使わないで? それに、長生きをしたおかげでひなみさんたちに会えたんだから」
「鈴花さん……」
私が少し俯けば、すかさず鈴花さんがフォローをしてくれる。それが逆に申し訳ないのだけれども、しかし私はどうしても鈴花さんに聞きたいことがある。
「すごい、ご不快な思いをさせてしまうかもしれません」
「うん?」
「でも、どうしても鈴花さんにお聞きしたくて」
「うん」
どきどきと脈打つ私の心臓は、さらに加速して行く。
だけど、どうしても聞きたいのだ。ぎゅっと胸を掴み、落ち着けと心の中で呪文のように唱える。自分の身体に隕石でも落ちたような衝撃だなぁと、手汗を見て思う。
鈴花さんの漆黒の、日本人特有の瞳をしっかりと見て……私は口を開く。
「……どうしたら、不老不死になれますか?」
感想のお返事遅くて申し訳ないです……。
それにもかかわらず、
ブックマークが16,000件突破
小説評価が1,200人突破
と、嬉しいことになっておりましま。
いつも応援いただきありがとうございます!
とてつもなく励みになっております。
がんがん更新、するぞー!?
と、頑張ります!!




