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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
135/175

27. 初代勇者

ハッピーメリークリスマース!

今日はいっぱいケーキを食べても許される日?


おっと追記です(25日23時半頃)

箱庭2巻の発売が決まりました!

詳しくは活動報告にて。

 ええぇっ!

 私はお店へと入って来た人を見て驚いた。ベアトリーチェが主様と呼んだ人を、知っていたから。



「いつも真紅の回復薬ガーネット・ポーションを買ってくれる冒険者さん!」

「久しぶりだね」

「あ、お久しぶり、です」



 にこりと微笑むその顔は、前にひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)で見たまま。

 いつも真紅の回復薬ガーネット・ポーションを買ってくれる、バンダナの人だった。前回は、確か〈ムシュバール〉からの帰りだ言って、ほかの冒険者さんと一緒に買いにきてくれた。



 そういえば、名前も知らない。

 お客さんで、そこまで長い時間立ち話をしていたわけでもない。でも、この人がここの主であるというのならば、日本人で、レティスリール様が言っていた春くんなんだろうか。

 うぅぅと顔を少ししかめれば、くすりと笑われてしまう。



「ご明察。俺は鈴花(すずはな)(はる)。君と同じ日本人で、この世界の初代勇者だ」

「……っ!」



 すんなりと自己紹介をしてもらい、さらには初代勇者であることもその口から伝えられる。

 いろいろと突然すぎて、私は何も言葉を発せられずに口をぱくぱくとしてしまう。



「私は、楠木ひなみです。ここにきたのは、2年ちょっと前です」

「そう」



 慌てて自己紹介をすれば、優しく微笑まれる。

 このタイミングでここに来たということは、何か目的があるのだろうか。

 初代勇者と言えば、とても強いのだろう。私の心臓が早鐘のように打ち鳴らされて、どきどきがとまらない。とても、緊張してしまう。



「……ひなみさんに、お願いがあって」

「お願い?」



 申し訳なさそうな顔をして、鈴花さんが口を開く。



「このダンジョンを、浄化して欲しい」

「……じょう、か?」

「そう。少し聞いたかもしれないけれど、このダンジョンの奥は瘴気がたまっている。これはよくないもので、魔物を活性化させるんだ」



 鈴花さんの言うことは、まさに私たちがダンジョンに来た目的そのものだった。

 というよりも。



「ええと。私には浄化なんて大それたこと、できないですよ?」

「あぁ、それは大丈夫。その手段は用意してあるから」

「?」



 ごそごそと鞄をあさりながら「安心して」と。

 そこから取り出したのは、小さな苗木。



「この木は、空気や魔力を浄化する力がある。だから、これを最深部で育てて欲しい」

「それくらいな、ら……っ!」

「あぁ、ごめんね。全部わかるんだ」



 一瞬、ぞくりとした。

 笑顔の鈴花さんだけれど、私は一度も植物を育てられるなんて伝えたことはない。

 道中の行為を見られていた? でも、そんな気配もなかったし、それならばもっと早くこのお店にもきていただろう。



「えっと……」



 全部わかるとは、いったい何か。

 私のすべてを見透かされているような、そんな気持ちになってしまう。



「一応、初代勇者だからね」

「で、でも……初代勇者って、何百年も前の人じゃないんですか?」

「今も生きてるなんて、そんなの……!」



 私がおそるおそる口を開けば、ずっと様子を見ていたサリナさんが加わった。

 今代の勇者、だ。



「私は今代の勇者。ひなみちゃんを守るために、勇者となった!」

「さ、さりなさんっ!」

「そうか。うん、いいね、すごく澄んだ、純粋な光だ」



 私を庇うように前に出るサリナさんを、慌てて制する。

 私には、この鈴花さんが悪い人には見えない。日本人ということでそう思っているのかもしれないけれど、だとしてもやはり同郷の人は大切に思ってしまう。



「今代の勇者、サリナと言ったね。君の考えは、間違っていない。君はひなみさんを守るために、勇者となったんだよ」

「鈴花さん!?」



 突然何を言ってくれてるんですか!

 私を守るために勇者って、あまりにも現実的ではない。サリナさんの希望として、そうだったら……くらいの話だったのに。ここにきて、いっきに現実味を持ってしまう。



「ベアトリーチェ、ここはまかせていい?」

『は、はい! 主様のお心のままに』

「ちょっと、下層へ行こうか」

「「…………」」

「大丈夫、危険はないから。本当はもっとはやくこうしないといけなかったんだけどね」



 申し訳なさそうな顔をして、お店を出る鈴花さん。私とサリナさんもあわてて後を追えば、ゆっくりと階段を下り始めた。



「ひなみさんのポジションは、女神様なんだよ」

「えっ!?」

「ひなみちゃんが、女神? たしかに、あの力はとてつもないけど」

「レティスリールの加護がひなみさんにはあるはずなんだけどね、本当ならば」

「?」



 鈴花さんがこちらを向いて、しかしすぐに前へと向き直る。

 どうしたのだろうか。けれど、何を言っていいのかわからずに、私はただただ後を追う。



「ここ」

「「?」」



 階段もあと1歩というところで、鈴花さんが足を止めた。壁に手をついて、何かを小さく呟いた。

 そうすれば、シュンッと音を立てて、壁の一部が開いた。



 ……エレベーターだ!



「な、なにこれっ!?」

「大丈夫。これで下まで行けるから」



 最初に鈴花さんが入り、私もすぐに続く。あまりにすんなりと私が乗ったから、サリナさんが「あっ」と声をもらす。

 そうか、この世界の人はエレベーターを知らないから警戒をしたのだろう。

 私にとっては見慣れたものだったので、乗ることにはなんら抵抗がない。サリナさんに事前説明をすればよかったと、申し訳なく思う。

 けれど、私が説明するのも何か違う。この世界の人間ではないとばれてしまうし。



「これはダンジョン内を行き来するための乗り物だよ。危険はないから、安心して」

「わ、わかった」



 こくりと頷き、サリナさんも乗り込んだ。

 鈴花さんがB13のボタンを押す。そこには、1階のボタンもあったので、全ての階へ行くことができるということがわかる。

 エレベーターがあっただなんて、まったく気付かなかった。

 けれど、限られた人にしか使えないような仕組みになってるのだろう。現に、鈴花さんも何か呪文のようなものを唱えていたし。



 そんなことを考えているうちに、最下層へと到着した。



「ここがこのダンジョンの最下層。まぁ、俺が住んでいたところかな」

「っう」

「これは……!」

「少しだけ、我慢してもらえると嬉しいかな……」



 思わず大きく息を止めてしまった。

 隣では、サリナさんも苦しそうにしていた。



「これが、瘴気。このダンジョンの下層にたまり、魔物を活性化させている元凶だ」



 エレベーターを降りた瞬間、襲ってきた何か。その何かを、上手く言い表すことができないけれど……重苦しい空気、とでも言えばいいだろうか。

 まる重力が変わってしまったかのように身体が重い。なんとか膝をつかずにはすんだけれど、身体が前のめりになってしまう。



「すごい……こんな中で、平然としているなんて」

「なれているからね」



 サリナさんの呟きに、さらりと鈴花さんが答えた。

 1歩前へ踏み出し、部屋の中央へと先ほどの苗木を置いた。

 生活感のあまりない部屋は、殺風景だった。端にベッドがあり、その横にサイドテーブル。反対側の隅に簡易的なキッチンがあり、イメージは賃貸のワンルーム。

 確かに住んでいたんだということが、わかった。

 でも、この穏やかに微笑む鈴花さんの部屋だとはどうしても思えなかった。とても冷たいという印象のある部屋で、あまりぴんとこない。



「ひなみさん、この苗を育てられそうかな?」

「……はい。やってみます」

「ひなみちゃん、よっと」



 ふらつきながら歩く私をサリナさんが支えてくれて、私たちは部屋の中央。苗木の前へとやってきた。

 小さな苗木は、この重い空気の中を凛と立っていた。



「すごく、がんばってるんだね……。君の力を、このダンジョンのためにもう少しわけてくれるかな?」



 すぅ……と。

 私は大きく息を吸い込む。そして、今までずっと私に力を貸してくれていたスキルを紡ぐ。



天使の歌声(サンクチュアリ)!」



 ふわり。

 私がスキルを使った瞬間、部屋の中の空気が揺れ動いた。



「あっ」



 私の声が、自然にこぼれた。

 身体が熱くて、とても……っ!



 目の前の苗木がしゅるりと葉を伸ばし、大きく成長して行く。

 その成長に比例して、私の身体は熱くなる。苦しいというのは少し違うけれど、息が乱れる。



「ひなみちゃん!?」

「はっ……サリナ、さん、んっ!」

「大丈夫!? なんで、いったいどういうことなの!?」



 熱い熱い熱い! 身体が、熱い……っ!



「大丈夫。すぐに収まるから」

「そんなの、信じられるわけないっ!」



 問題ないと言う鈴花さんの言葉にサリナさんがすぐさま反論して、悔しそうに唇を噛み締める。「やっぱり信じるんじゃなかった」と切なげに言葉をもらす。

 そしてそのまま苗木だった小さな木は、部屋の高い天井いっぱいに育った。



「……はぁっ」

「ひなみちゃんっ! どうして、だって瘴気は……?」

「大丈夫、です。少し、身体が熱くて」



 泣きそうな顔をしているサリナさんを安心させるように伝える。

 それに、最初に比べれば熱はだいぶ軽くなったように思う。



「サリナさんは、大丈夫ですか?」

「え? ……そういえば、もう普通に動ける」

「よかったぁ」



 私はその言葉を聞いて一安心。



「ひなみさん、ステータスを見てご覧?」

「え?」

「そうしたら、身体の熱くなった理由がわかる。突然得た大きな力を受け入れた、反動で熱くなっただけだよ」

「……《ステータス》」



 私は小さく呟いて、自分の状態を確認する。

 いったい何が起きたというのか。



「……これって」

「そう。今までそれがなかったのは、俺と接触したことがあったから」

「え?」

「俺の持っている瘴気は、微量だけれど人に影響を及ぼす。それが、今までひなみさんに影響を及ぼしていた。けれど、今はこの部屋の瘴気と一緒に浄化されたんだ」



 鈴花さんの話を聞いて、そんな馬鹿なと思ってしまう。

 しかしそれと同時に、ありえるとも思ってしまう。



 つまり、私は……どうなるの?

 鈴花さんがお店にきたときに、私は微量の瘴気をもらった。

 それにより、今までステータスに称号が追加されていなかった。

 けれど、瘴気を浄化したことにより、その称号を正式に得られたということだ。



 問題は、もらった称号なんだけれども。



 〈 楠木ひなみ 〉


 15歳

 Lv. 13


 HP 423/423

 MP 635/635


 ATK 38

 DEF 38

 AGI 63

 MAG 106

 LUK 266


 〈スキル〉

 神様の箱庭

 光の狂詩曲(ライト・ラプソディア)

 癒しの如雨露(ポーション・シャワー)

 天使の歌声(サンクチュアリ)

 光魔法 - 小さな加護(リトル・ポーション)


 〈称号〉

 リグリス神の加護

 レティスリールの加護

 光の精霊キラリの加護



 〈レティスリールの加護〉

 世界レティスリールの女神代行を行える



「レティスリール様、私にいったい何をしろって言うんですかー!!」



 思わず絶叫してしまったけれど、これは仕方がないでしょう。

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