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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
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22. リグリスの声とともに

 地下 8階 中ボス部屋



 お仕置きだよ、と。

 交換日記にそう書いてあったのだけれど……これは、まさに私にとってお仕置きのようなものだった。



「わわわわっ! リグ様っ!!」



 私の声がホールに響き、頭につけてあるリボンがしゅるりと防御形態になり魔物の攻撃を防ぐ。アルフレッドさんたちとはぐれてしまった私は……現在、この中ボス部屋に1人です。

 いいや、1人ではない。正確には、私と魔物の、2人……だろうか。



 地下8階へ下る階段の仕掛けは、倒した魔物の素材を収めるというものだった。強い魔物もまざっていたらしいので、アルフレッドさんたちのパーティーでなければ難易度が高かったかもしれない。

 そんな仕掛けを難なくクリアして、私たちは地下8階へと下りた。

 とても強い魔物が1匹いると、そうアルフレッドさんから説明があった。部屋の名前も中ボスになっていたから、私もその覚悟はしていた。



「ら、らいと……リグ様っ!」



 そんなことを考えている間も、魔物は私に向かって攻撃を仕掛けてくる。光の狂詩曲(ライト・ラプソディア)を使おうにも、スキル名を言っている余裕がない。

 結果、私は大変恥ずかしいのだけれども……リグ様の名前を呼び続けるという事態におちいった。名前を呼ぶことにより、私の付けているリボンが効果を発動する。



 《加護の花リボン》

 リグリス神の加護がついたリボン。

「リグ様」と名前を呼ぶことにより、リボンが防御形態へ変形する。

 攻撃を受けそうなとき、危険なとき、その意図を持って呼んだときのみ発動。

 たまにリグリスと話が出来る。



 私を助けてくれるとてもすごいリボンではあるのだけれど、使うときにリグ様の名前を呼ばなければいけないので……本当に、ほんとーに、恥ずかしいのです。

 名前くらいと、思うかもしれないけれど。どうしても、私は恥ずかしくて仕方がない。



「うぅぅ……アルフレッドさんたちは大丈夫かなぁ」



 一息ついて、私は人ひとりがやっと通れるような穴を見る。その先には、中ボスであろう魔物。私を襲おうと爪をのばしてくるが、そのたびにリグ様と名前を呼んで防いでいる。

 あまりにも攻撃が早いため、私の防御スキルではどうしても間に合わない。

 虎のような外見に、鳥の翼が生えている獣の魔物。キメラと、アルフレッドさんが呼んでいた。



 中ボス部屋に入った私たちは、サリナさんを前衛として戦闘を開始しした。が、私の行動がよくなかった。壁際に立ち、アルフレッドさんとサイネさんに護られるポジションだった。それはいいのだけれど、私が待機したすぐ後ろの壁に……仕掛けが合った。

 そっと手で触れた途端に、壁がガコンと音を立てて穴を開けた。どこかで体験したような気がするなと頭をよぎり……私はあっけなくその穴に落ちてしまった。「ひなみ」とアルフレッドさんの呼ぶ声が聞こえたけれど、私にはどうしようもできず。

 滑り台のようになっていた穴を転がって……広い空間へと投げ出された。幸いなのかどうか、壁に亀裂があって穴のようになっていたため避難をした。

 そして先ほどの魔物が現れて、今にいたる。



「うぅ、恐い……」



 私の避難している穴には、魔物の爪などの攻撃は届かない。が、魔法のような、突風の攻撃を翼で仕掛けてくる。それを防ぎつつ、しかし穴の先には進めるような道もない。

 精神的な消耗が激しくて、若干泣きたくなってしまう。自分を護る術はあるけれど、あの魔物を倒す術は私にはない。

 リグ様にもらった弓があるけれども、3本の矢で倒せるとも思えない……。それほどに、その魔物は恐ろしかった。



『グルオォォォ!』

「ひぃっ!」



 私が攻撃をすべて防いでしまうからか、怒ったらしい魔物はうなり声をあげて私が隠れている穴へ突進してきた。ドォンという音と衝撃がきたけれど、幸いに壁が壊れることはなかった。

 ほっとひといきついている余裕はないけれど、少し安心した。



 そんなとき、私を安心させるかのように……頭の中に声が響く。



『……ひな』

「あ、リグ様!」



 いつもと同じ、優しい温かい声のトーン。

 その声を聞いただけなのに、私はとても安堵して、もう大丈夫だと確信をした。この魔物と対峙している状況下は変わっていないのに、絶対的な安心感があった。



『相変わらず、ひなは変な罠に掛かるね』

「うっ、それは……。私も、好きで掛かってるわけじゃないですよ?」

『うん。知ってる。……ひな、あいつを倒そうか』

「はいー…………? はい?」



 日常会話をするように、するりとリグ様の声が問題発言をしたような気がします。もしかしたら、私の耳がおかしくなってしまったのかもしれない。

 回復薬(ポーション)を飲めばリグ様の声が正常に聞こえるようになるだろうか。



『ひーな? 大丈夫、僕がついてるから』

「えと、う、は、はい……」



 静かな、けれども凛とした声。私に戦えと、そんなことをリグ様が言うとは思えなかったけれど……確かにこの状況下では仕方のない選択なのかもしれない。

 それとも、リグ様は私に戦って、強くなって欲しいのだろうか。当初の約束は、私がリグ様の玩具になることなのだから。



『大丈夫だよ。僕があげた弓に、今回は特別に僕の力も加えるから』

「リグ様の力?」

『そう。とは言っても、3矢でぎりぎり倒せるかどうかー……かな』



 ぎりぎり、か。その言葉を聞いて、私の不安は大きくなると思いきや。いたって普通に、未だに大丈夫だと信じている。

 弓を取り出して、私はぎゅっと握り締める。どきどきする心臓を落ち着かせるために深呼吸をして、ふぅと大きく息をはいた。



「え?」



 次の瞬間。しゅるりと音を立てて、私のリボンが解かれた。私の髪がはらりと舞って、リボンは弓へと巻きついた。

 これが、リグ様の力……? 弓についた花の部分のちょうど下に、リボンの結び目がくる。一段と可愛くなったこれは、けれど魔物を倒すための武器なのだ。



『うん、これで大丈夫。威力があがるから、倒せるはずだよ』



 昔から扱っているように、手になじむ私の弓。そっと立ち上がって、私は弓を大きく引き……矢をつがえさせた。

 が、その瞬間を狙ったかのように……魔物が翼を大きく羽ばたかせて突風の攻撃を仕掛けてきた。私がスキルを唱えるのでは間に合わない、かといって、リボンは弓に巻きついているため防御を発動することもできない……!

 どうしたら、どうしたらいい……!? 背中にとても冷たい汗がつたって、私はどうしたらいいかわからず恐怖に目を閉じてしまう。



『大丈夫だよ、ひな』

「……っ!?」



 まるで子供をあやすように。心配要らないと、その声から伝わってくる安心感。

 リグ様の声は、私の奥まで届いて身体を熱くさせる。私の中から何かが湧き上がる、そんな間隔を覚えたところで……静かな、けれど強い声が響く。



『《光の狂詩曲(ライト・ラプソディア)》』



 パァンッ!

 リグ様の声と重なるように、現れたのは私が使う防御のスキル。それは魔物の攻撃をしっかりと防ぎ、いや。防いだだけではなく、反射をさせてカウンター攻撃となった。

 私がいつも使っているのと同じスキルであるはずなのに、その性能は、段違いのものだった。



『ごめんね。ひなのスキルを、少し借してもらった』

「いえ、全然大丈夫です! いつでも使ってください!」

『ひな、立てそう?』



 魔物に恐怖して、しりもちをついてしまった私はひとつ頷いて立ち上がる。

 ここで恐怖にかられ、泣き叫ぶなんて。そんな恥ずかしいことを、リグ様の前でできるはずもない。例え私がリグ様に護られているとしても、です。



『ひなは強いね。それなのに、とても純粋でまっすぐだ』

「リグ様?」

『……いや。じゃぁ、あいつを倒して先へ進もうか』

「はいっ!!」



 もう一度弓を構えて、私はまっすぐに魔物を見る。リグ様が使った光の狂詩曲(ライト・ラプソディア)の反撃により、少しよろけていた。

 これは、今がチャンスではないだろうか。必中の矢ではあるけれど、魔物が弱っているにこしたことはない。通常状態であれば、きっと弱い私の弓ではなかなかダメージを与えられない。



 壁の隙間から狙いを定めて、私はゆっくりと矢を放った。

 それは真っ直ぐに風を切り、キメラと呼ばれる魔物へと一撃を与えた。



『グルアァァァァァァ!!』

「……っ!」



 巨大な身体が、痛みのためか大きく吼える。私へ向かって突進をしてくるけれど、それは再びリグ様によって阻まれた。



『ひなに傷を付けようなんて、させるわけがない。《光の狂詩曲(ライト・ラプソディア)》』

「の、負けない、から……っ!」



 リグ様が使ったスキルに護られながら、私は2射目を放つ。

 まっすぐこちらへ向かって来る魔物と、魔物へとまっすぐに向かう矢。互いに勢いがついた好条件で、私の矢は魔物に命中した。

 絶叫する魔物の声が響き、私の足が恐怖にすくむ。大きな魔物の雄たけびは、無条件で恐怖を感じてしまう。加えて、それが私に向けられているのだから。



 でも、大丈夫。

 リグ様がいるというだけで、気持ちはいつもよりも何倍も落ち着いている。恐いけれど、不思議と、思考はしっかりとしている。



『あと少し。ひな、いける?』

「はい!」

『いい返事。これはご褒美をあげないといけないね』



 くすくすと嬉しそうに笑うリグ様の声が聞こえるけれど、さすがにそこまで会話をしている余裕はなくて。ぐっと力を入れて弓を引く。

 ふわりと風が舞い、私の引いた弓に1本の矢がつがえられた。これが今日使える最後の矢。もし倒せなかったらどうしようという不安が襲ってくるけれど、いや、それは考えたら駄目。



「リグ様……」

『うん。大丈夫だよ、ひな』



 無意識に名前を口にして、けれどしっかりとした返事が返された。

 光の狂詩曲(ライト・ラプソディア)で弾かれた魔物をしっかりと見て、私は静かに、ゆっくりと……最後の矢を放った。



 魔物は光りの粒となり、掻き消えた。



「勝てた……?」

『うん。お疲れ様、ひな』



 よかった……! そう思った瞬間、いっきに緊張が崩れ落ちた。私の身体は冷や汗が伝い、息も荒く呼吸が乱れる。

 さっきまではまったく大丈夫だったのに、手に、足に、身体が……震えている。

 これは恐怖なのだろうか。それとも……?

 ぎゅっと自分の身体を抱きしめて、私は少しだけ目を閉じた。日本でないここは、私にとって非日常のようなものだった。

 それでも、生きてこられたのは、リグ様や、イクルや、出会ったたくさんの人のおかげだろう。



「ひなみー!!」

「!」



 不意に、アルフレッドさんが私を呼ぶ声が耳に入る。どうやら無事に合流ができそうで、人安心だ。

 そしてリグ様の声が聞こえなくなっていることに気付く。どういった仕組みになっているのかはわからないけれど、ずっと話をしていられるわけではない。

 リボンの効果にも、たまにと説明がついている。不思議だなと思いつつ、今日のお礼は交換日記にたくさん書こうと思う私です。



 〈 楠木ひなみ 〉


 15歳

 Lv. 13


 HP 423/423

 MP 635/635


 ATK 38

 DEF 38

 AGI 63

 MAG 106

 LUK 266


 〈スキル〉

 神様の箱庭

 光の狂詩曲(ライト・ラプソディア)

 癒しの如雨露(ポーション・シャワー)

 天使の歌声(サンクチュアリ)

 光魔法 - 小さな加護(リトル・ポーション)


 〈称号〉

 リグリス神の加護

 光の精霊キラリの加護

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