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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
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19. 3人の仲間

 視点:アルフレッド



 ひなみがソファに身体を沈め、寝息を立て始めたのを確認して安堵する。

 やはり、無理をさせてしまっているな……。

 普段は回復薬(ポーション)を作っている幼い女の子だ。無理をさせている以外の何ものでもないか。



「それにしても、ひなみちゃんってすごい。本当、何者なんだろうね?」

「頭に付けていたリボンも、かなり希少なアイテムだったようですね」



 驚きつつも、サリナは「ひなみちゃんだから」と、どこか納得をしていた。

 ひなみが眠りにつく瞬間、頭のリボンがしゅるりとほどけピンキーリングとなったのを俺たちは見た。右手の小指にはめられたそれは、ピンクゴールドのシンプルなものだ。ただ、中央に花が模どられていてとてもひなみらしいとは思った。



 ありえないほど性能のいい回復薬(ポーション)だけならまだしらず、希少なスキルにアイテム。はては光の精霊を召還できるなんて。

 俺は自分の胸が高鳴っていくのを押さえることができなかった。ひなみはどれだけすごいのかと、まだ何かを隠し持っているのではないかと。



「……ありえない。予想以上の、規格外だ」



 本当に、いったい何者なのか。

 寝ているひなみを見てそう考えるが、答えなど一向にでてはこない。ふにゃりとした寝顔からは、普段のひなみがすごいだなんてとてもではないが想像できない。

 それはサイネも一緒だったようで、安堵して眠るひなみを見て微笑んでいた。



「私たちにとっては、とても助かるのですけれどね。どうしても、回復薬(ポーション)が必要になりますから」



 魔術を使う俺と、治癒術を使うサイネは特に。すぐに大量のMPを回復できるため、かなり重宝している。

 サイネが念のためにと、部屋をぐるりと一周して怪しい術がかけられていないかを調べる。が……以前に来たときと同様で、特に何もなかったようだ。



「休める場所がダンジョン内にあるのは助かるが、いったい何のためのスペースなのか」

「わかりません。このスペース自体には、特に怪しい箇所もありませんし……魔物もいない。ダンジョンの主が、気まぐれに作った部屋でしょうか」



 中央に置かれた机とソファ。そして壁には絵画などの装飾品。

 決して安くはないであろうそれは、歴史に名を残す有名画家が手掛けたものだ。

 そのほかには何もない、質素のようにも見えるが、しかししっかりと調律されたようなスペース。



「けど、魔物が増えてる感じはあんまりしないね? もっと地下に降りればいるのかなぁ……」



 サリナが大きくあくびをして、部屋の中をきょろきょろと見渡す。

 俺とサイネは1度だけきたが、サリナにとっては初めてのダンジョンだ。

 何か新しいことに気付いてもらえたらいいと思ったが、そう簡単にはいかないようだ。サリナもこのスペースに関して、気になるところはないらしい。



「あとは、いかにひなみんに負担をかけないかだね」

「そうですね。歩くだけならまだしも、魔物が出てくると辛いですから。可能な限り、魔物はアルとサリナで倒してくださいね」

「もちろん!」



 サイネの言葉に頷き、これから先のことを思案する。

 ここから先は仕掛けの難易度が上がる。が、魔物はそれほど多くはなかったと記憶をしているし、いなかった階層もあったはずだ。

 もちろん、今もその状態を維持しているかどうかはわからないが。



「でも」

「ん?」

「ひなみちゃんだったら、秘密の隠し通路とかを見つけちゃいそうだよね!」

「やめろサリナ。本当にありそうで怖い」



 それは本気で、冗談では済まない。

 全員でならばいいが、ひなみ1人がはぐれるということだけは絶対にしてはならない。このダンジョンは、ほかのダンジョンに比べて未知数のことがおおい。

 この下層に何が待ち受けているのか……予想をするのも難しい。協力な魔物か、それとも精霊のような類がこのダンジョンに潜んでいるという可能性もある。



 光の精霊とひなみの会話を少し思い出せば、光の精霊はこのダンジョンを知っているようだった。その上で、ひなみを引き止めないということは……思っているよりはこのダンジョンが安全なのか。

 いや、精霊の考えていることなんて、俺たち人間には思いもつかないようなことかもしれない。むしろ、何も考えていないという可能性だってあるかもしれない。



「難しいな……」



 ぽつりと呟いたことばは、思ったよりも大きかったのか。サイネが無言で頷き、けれど決して諦めないというような強い瞳で俺を見返す。サリナも同様に、少し鼻息を荒くして目の前でガッツポーズをした。

 そんな2人に少し笑ってしまえば、結局3人で笑うこととなった。





「……んぅぅ」

「ひなみ?」



 3人で今後のことを話し合っていれば、不意に聞こえるひなみの声。

 いったいどうしたのかと、隣に座って寝ているひなみを見れば……こてんと俺の肩に頭を預けた。

 なんだ、寝言か。少しずれたブランケットをかけ直して、肩は枕代わりならとそのまま寄りかからせておく。



「ひなみちゃん、大丈夫かなぁ。明日も辛そうだったら、私がおんぶしてあげようかな?」

「全力で拒否するだろうな」



 名案だとでも言いそうなサリナだが、ひなみは決してそのようなことはしない。

 可能な限り、限界まで、自分でやり遂げようとする。



「体力は普通の女の子なのに、潜在能力がとてつもないのかなぁ?」

「そうかもしれませんね。眠っている姿は、普通の女の子ですから。アルが子供なのな大人びているから、なおさらそう思うのかもしれませんね」

「おい」



 俺はもう16であって、子供扱いをされるような年齢ではない。

 そう文句を言えば、「ひなみちゃんと同じくらいじゃない」とサリナに笑われる。



「俺の方が上だ」

「ひとつですけどね?」

「うるさいぞ、サイネ」



 そもそも、ひなみは見かけが幼い。最初はシアと同じくらいだと思ったのだから、驚きだ。

 しっかり見ていないと、ふらふらしてどこかに行ってしまいそうだ。

 そんなことを考えてひなみを見れば、自然と笑みがこぼれ落ちる。



「なんだか、嬉しそうですね」

「まぁな。妹が増えたみたいだ」

「あぁ……アルはシスコンですからね」

「……うるさい」



 くすくすと笑うサイネを睨み、余計なことばかりを考えず見張りをしていろと言い捨てる。

 が、魔物がいないということは俺にもわかる。肩をすくめながら「はいはい」と、またサイネが笑う。



「アルフレッドがお兄ちゃんポジションでひなみちゃんを護るとしても、私だってひなみちゃんを護るポジションは渡さないよ!」

「あー……わかったから、存分にひなみを護ってくれ。何もないところで転びそうだからな」



 自分が勇者になったのは、ひなみを護るためだと言い張るサリナ。

 そんな馬鹿なと、笑い飛ばしたいところだが……それが事実であるような気がしてならない。



 このパーティーも賑やかになったものだと、サリナとひなみを見て思う。

 ひなみがいなければ、割と静かなパーティーだったかもしれない。雑談もするが、そこまで騒ぐこともない。



「とりあえずは……ひなみさんの力に関するとこは他言無用ですね」

「もちろんだ」



 もしばれたとしたら、各所からひなみをと求める声が止まないだろう。



「ひなみちゃんの回復薬(ポーション)は効果も高いし、何より美味しい!」

「そうですね」

「それに、スキルだってす」

「サリナ」



 サリナがひなみを褒める。のはいいが、サイネにはひなみのスキルを見せたりはしていない。ひなみのことだから、きっとそのうちサイネにも伝えるとは思う。が、本人からではなくサリナから伝えられるとなるとそれは問題だ。

 慌てて「ごめんなさい」と声を小さくするサリナ。俺がひと睨みをすれば、なぜかサイネが「まぁまぁ」と間に入ってくる。



「サリナの言いたいことは、よくわかりますよ。けれど、私はひなみさんと知り合ってまだ短いですから……ね?」

「うん。ありがとう、サイネ」



 しゅんと下に垂れたうさ耳がサリナの顔に影をつくる。

 いつ見ても、自由に耳が動いているのを見るのは不思議だなと、なんとなく思う。しかし、触ろうとするとすごい勢いで暴れるので、このパーティーでは話題にしてはいけないことになっている。



「サイネのフォローが上手くてよかったな、サリナ」

「もう、本当に! サイネさまさまだね! っと、もう! アルフレッドはとっとと寝る。明日はアルフレッドの力だって必要なんだよ!? 難しい仕掛けが多いって言うし」



 年上ということもあり、サリナはたまに姉ぶったように俺の心配をする。まぁ、サリナは仕掛けのたぐいが苦手だということもあるのだろうが。

 剣を振って生きてきたサリナにとって、謎めいた仕掛けというのは魔物と戦うよりも大変だ。俺とて、魔物を殲滅する方が楽だが……貴族としての教養はあるし、書物も人一倍は読んでいる。



「そうだな。早く魔物を倒し、平和な世界にしたいな」

「うん。そうだね!」

「ええ。私たちがしっかりしないといけませんね」



 3人で、机の上へと拳をだして……こつんと合わせる。

 この戦いに、幸あらんことを祈って……。

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