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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
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16. 新たなダンジョン

「…………」

「……は、ふぅ」



 洞窟内に響くのは、私とサイネさんの足音。

 それから、少しだけ息の上がった私の呼吸。体感的には、もう3時間程度経っている。そろそろ出口が見えてもいいのではないかなぁ?



「少し休憩しましょうか?」

『無理はよくないポッホー』

「ありがとうございます。でも、早く戻らないと、サリナさんもアルフレッドさんも心配していると思うから」



 浅い泉に落ちたら行方不明事件が展開中なのだ。きっと、すごく心配をかけてしまっているに違いない。

 2人はまだ小さな森の泉にいるだろうか。それとも、当初の目的地である村を目指している……? 考えても仕方がないけれど、妙に落ち着かない。



「そうですね。泉については、アルが調べているとは思います。しかし、原因の特定は厳しいでしょうから……泉にひなみさんがいないという確認をした後、合流予定の村へ向かったとみていいでしょう」



 落ち着かない私を安心させるようにサイネさんが微笑んで、「大丈夫ですよ」と気遣ってくれる。優しいなぁと思いつつ、本当にそうであって欲しいと思う。



『もうすぐ出口ポッホー』

「本当? よかった! これで合流して、元通りですね」

「えぇ。アルはああ見えて心配性ですからね。目の届くところであれば、圧倒的な強さで護ってくれますが……視界に捉えられなければ護ることができないですから」

「そうですね。いつも、シアちゃんを心配しているいいお兄さんです」

「えぇ。私もそう思います」



 ソールが『仲良しポッホ!』と揺れて、私の身体も一緒に揺れる。すっかり私の肩が定位置になってしまったようで、下りる気配はまったくなかった。

 でもまぁ、懐かれて嬉しいのも事実なので私はにこにこソールを見る。そうすれば、頬にすりよってきてくれてとても可愛い。

 足はがくがくしてきたけれど、癒される。そう思い後少し頑張ろうとして……かなり急な上り坂。



「うわぁ……これは、結構大変そうですね」

「そうですね。でも、ここを越えれば出口なので、もう少し頑張りましょう?」

「出口! はい、頑張ります……!!」



 急斜面と言っても過言ではない、岩の積み上がったような道。

 手をついてゆっくり登った方がよさそうだと考えていれば、私の耳にかすかな声が届く。「ひなみちゃーん」という、小さいけれど、確かに私を呼ぶ声。



「サリナさん⁉︎」

「ひなみちゃんっ!」



 ぴょこりとゆれる、サリナさんのうさ耳が岩の上から現れた。すぐにサリナさんの顔も覗いて、私はとても安堵した。

 アルフレッドさんの声もするけれど、どうやら背丈が少したりなくて顔が見えないようだ。

 ガッという音がして、アルフレッドさんが岩を乗り越えて顔を出した。手を振れば、安堵した顔を見せて「勝手な行動をするな」と怒られる。

 けれど、とても心配してくれているのは、その荒い息遣いや、汗の多さでわかる。ここまで急いで捜しにきてくれたのだろう。



「アルフレッドさん、サリナさん、ありがとうございます。心配をかけてすみません」

「もうっ! とっても心配したんだから! でも、無事でよかった」



 笑顔で私の無事を喜んでくれたサリナさん。手を引っ張ってもらって、私は大きな岩を乗り越えて、やっと洞窟から地上に出ることができたのです!







 ◇ ◇ ◇



「うぅーん、この青い花はなんなのかなぁ」

「何か、製薬の材料でしょうか?」



 ソールが寝た後に、私とサリナさんは男子部屋であるアルフレッドさんのところに集合した。

 村にある宿屋で、女子と男子にわかれて部屋をとった。ソールは私たち女子部屋にして、今は小さな鉢植えにうつした青い花の横でぐっすりと夢を見ている。



「ソールは、育てればすぐにわかるって」

「ひなみにまかせるしかない、か。明日、一度戻るか?」



 アルフレッドさんが、花を持っての移動は大変だと気を使ってくれたのだろう。しかし、私は家にいられないということを考えるとそれも微妙なのではないかと思う。

 幸い、村の人が可愛い鉢植えをくれたので今は問題がない。

 鉢植えをリボンで結び、ダッチョンの首にかけることもできるだろう。なので、今は冒険を続行させるという判断をとった。

 すぐは庭に植えてあげられないけれど、その分スキルでフォローしよう。



「そう? 大変だと思ったら、すぐに言ってね! 私がダッシュで植えてきてあげるから!」

「サリナさん……ありがとうございます」



 いつでもおまかせあれなサリナさんは、どうやら私にとてつもなく頼ってもらいたいらしい。

 洞窟から出たときも、しきりに私をおんぶして運ぼうとするし、お風呂代わりのお湯を私の分まで取りに言ってくれたり。

 そんなに気にしないで欲しいけれど、もしかしたらこれがサリナさんの性格なのかもしれないと思った。世話焼きお姉さん?



「まぁ、いい。泉については、先ほども伝えたが異常はなかった」

「でしょうね。それでアルは、私と合流するために村を目指したのでしょう?」

「あぁ。俺でわからないのであれば、サイネに。それでもわからなければ、かなり厄介だったがな」

「本当、ご心配をおかけしまして……」



 アルフレッドさんにとって、サイネさんはかなり信頼できる人物のようだ。

 教会の治癒術師で、信託を使える人。いや、普通に考えてすごい人でした。

 というか、ここには私を除いてすごい人しかいない集団だった。



「サイネもひなみも、無事だったからいいだろう。明日は、もう少し北へ向かう。そこに、魔物が通常よりも多く発生しているらしい」

「どんなところなんですか?」

「……迷宮の、ダンジョンですよ」



 私の疑問に答えたのは、静かなサイネさんの声。

 ダンジョン、何度か聞いたことがあるし、実際に南の森にあった隠しダンジョンへ入ってしまったこともある。

 一気にゲームのようだなぁと思いつつも、怖い場所だということはもちろん知っている。



「私は行ったことがないや。アルフレッドとサイネは行ったことがあるの?」

「あぁ」

「えぇ。1度だけ、2人で行ったことがあります。初心者が好む、ごく普通のダンジョンです。……表向きは、ですが」

「…………?」



 サイネさんの声が、ワントーン下がる。以前行ったのだと言う、その迷宮ダンジョンについて説明をしてくれた。



 迷宮のダンジョンとは、地上にある入り口から……地下へと進むダンジョンだそうだ。最初は、弱い魔物がでてきて奥へ進むと強くなる。こう聞くといたって普通のダンジョンに思えるが、そうではない。

 奥へ進むには、仕掛けがあり、それをクリアしないと進めないという。

 アルフレッドさんとサイネさんは、その仕掛けをクリアして地下10階まで行き……そこで諦めたそうだ。



「魔物を倒すというものであればよかったんだが、なかなか」

「そうですね。おそらく、あの仕掛けは3人いないと無理でしょうし」



 決して自分が弱いからではないのだと、そんなアルフレッドさんの語りかけが聞こえてきそうです。サイネさんによれば、人数が関係する仕掛けがあるようだ。

 今回の溢れた魔物は、ダンジョンの下層から出現しているのではというのが冒険者ギルドの予想。確かに、どれくらい深いかわからないダンジョンであれば、地下に魔物が大量にいたとしてもおかしくはない。



「大丈夫、ひなみちゃんは私が護るからどっしーりと構えておいて!」



 気合を入れたサリナさんの声にアルフレッドさんが笑い、サイネさんが「無茶はしないでくださいね……」と、どこか遠い目をしている。

 きっと前にも無茶をしたんだろうなぁと、用意に想像できてしまい私も一緒に笑った。



「もう、ひなみちゃんまで! アルフレッドが笑うからだよー! もうもうっ!」

「お前はモーか。……と、そろそろ休まないとな。サリナはいいが、ひなみはもう辛いだろう?」

「えぇっ!? 私も女の子扱いしてよ……」



 私を気遣うアルフレッドさんに、サリナさんが突っ込みパンチをしつつ「およよ」と泣きまねをする。垂れたうさ耳がなんだか可愛くて、私は十分に女の子らしいと思う。



「じゃぁ、おやすみなさい」

「あぁ。ゆっくり休んで、体力を回復させておけ」

「おっやすみ~!」

「はい、おやすみなさい。サリナ、ひなみさん」







 ◇ ◇ ◇



「あれ? ひなみちゃん、寝ないの?」

「ええと、日記を書いたら休みます。サリナさんは先に寝ててください」

「そう? 疲れてるんだから、あまり無理しないでね。おやすみ、ひなみちゃん!」

「はい、おやすみなさい!」



 部屋に戻り、いそいそとベッドに入るサリナさん。就寝の挨拶をすれば、すぐに寝息を立てて夢の世界へといってしまった。

 まぁ、私も人のことをいえないくらいすぐに寝てしまうけれど……。



「さて、と。私も交換日記を書いて寝ないと。明日はきっと、今日以上に歩くはず」



 さっきお湯で拭いながら、足を一生懸命マッサージしたので……きっと痛みなどは大丈夫だと信じたい。1日の疲れはその日のうちにしっかりと。でなければ、これから先何日も冒険を続けていくのは大変です。



 - - - - - -


 リグ様へ


 今日は、なんだか怒涛の1日でした。


 小さな森の泉にいったら、ダッチョンに押されて泉に落ちてしまって……泳げないのが皆にばれていないといいんですけども……。

 そのときに、サイネさんに助けていただきました。

 初代勇者様の神託があった、と。私にはあまりわからないんですが、初代の勇者様は……神様なのでしょうか。レティスリール様が言っていた「春くん」というのが、初代勇者様ですか?

 遠い昔に現れた勇者様は、亡くなり……神様という存在になったのでしょうか。

 私に考えられることなんて、これくらいで。


 やだ。なんだか、しんみりしちゃいました。


 えとええと、明日! そう、明日からは迷宮のダンジョンに行くそうです。

 こんなフレーズだと、花がすごく羨ましがってこの世界に来たいと言い出しそうですけど。RPGはもちろんやっていたんですけど、ダンジョンを攻略するタイプ? の、ゲームにも一時期はまってやりこんでいたんですよ。

 私には、同じフロアのダンジョンを進み続けて何が楽しいのかわかりませんでしたけど……。

 なので、このダンジョンから帰ってきたら。また、花に手紙を書きたいなって思います。


 明日も1日、頑張ります!

 リグ様もゆっくり休んでくださいね。


 おやすみなさい……。


 ひなみ


 - - - - - - -



 ぱたんと交換日記を閉じて、リュックへとしまう。本当はサイドテーブルに置きたいところだけど、ここにはサリナさんもいるし、自宅ではないから。

 とりあえず、私はダンジョンのイメトレをしながら眠りにつきました。

箱庭の薬術師、明日発売です!

どうぞよろしくお願いいたします。


今日は、店舗特典情報、アルフレッドとシンシアのキャラデザを活動報告でアップしています!

ぜひご覧くださいー!

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