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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
122/175

14. 小さな青い花

更新時間おそくなりました!

あとがきでお知らせがありますん!

 パチパチ……と、私の耳に小さな焚き火の音が届く。それにともない温かさを感じて、私はそっと目を開いた。

 ここは、どこだろうか? まず目に飛び込んだのは、ごつごつとした岩肌。洞窟のようなその天井に、あぁ、ここは洞窟なんだろうとひとり納得をした。



「あぁ、目が覚めましたか?」

「…………あっ!」



 優しい声が聞こえ、私ははっとする。

 そうだ、森にあった小さな泉へと、落ちてしまったんだ。確か、ダッチョンに落とされるような形で。いったいなんだったのだろうと考えるけれど、答えはまったくでる気がしない。

 とっとと! そうじゃなく。今は落ちたときのことよりも、現状を把握するのが先だ。しっかりしろ、ひなみ!



「それだけ元気なら、大丈夫そうだね」

「あ……すみません」



 よしっ! と、気合を入れていたらくすくすと笑われてしまった。

 声の主は、まだ若い……男の人。だいたい20歳前後だろうか? おそらく、身体が小さくなる前の私と同じような年齢だろうと思う。

 さらさらの水色の髪に、優しい目元。紺を基調としたローブを着ているから、魔術師の方だろうか?



「溺れて、気を失っていたんですよ。回復魔法を使ったので、問題はないと思いますが……身体に違和感はありますか?」

「あ、と……大丈夫そうです。助けてくださったんですね、ありがとうございます」



 慌てて自分の身体を見れば、特に怪我はない。服が切れているということとないので、おそらく外傷はなかったのだろう。ほっと一息ついて、改めてお礼を伝える。



「しかし、どうしてこんな泉に?」

「ええと……小さな森の泉に落ちちゃったんですけど」

「小さなって、ラリールの街近くにある森ですか?」



 驚いた顔をしているけれど、どうやら場所は伝わったようなのでこくりと頷いてみせる。



「ですが、あの泉は浅かったと記憶しています。決して、こんな場所に繋がっていることはないんですが……」

「そう、ですよね……」



 2人して首をかしげ、しかし私の言葉をすんなり信じてくれて驚いてしまう。普通、あの泉がこんな洞窟にある泉に繋がっているなんて、信じない。森の泉を知っているのであれば、なおのこと。

 そして私は、自分が名乗っていないことを思い出す。助けてもらったのに、ちゃんと挨拶もしていなかった!



「すみません、私ったら名乗りもしてなくて。ひなみ、です。助けていただいて本当にありがとうございます!」

「いえいえ。丁度通りかかってよかったです。私はサイネといいます、薬術師のお嬢さん」

「えっ!」



 温かく笑った男の人、サイネさん……ということは、つまり。



「勇者パーティーの治癒術師さん!?」

「はい。治癒術師をさせていただいております」



 私が目を見開いて驚けば、サイネさんはにこりと優しく微笑んだ。

 そうだよね、ローブだったから魔術師さんかと思ったけれど、私を助けて回復魔法をかけてくれたんだ。治癒術師さんなら、納得です。

 というか、私を薬術師だと知っている? どうしてだろう、アルフレッドさんやサリナさんに聞いたりしたのだろうか。



「ひなみさんのお噂はアルに聞きました。かくいう私も、回復薬(ポーション)には何度も助けていただいています」

「そうだったんですね」



 アルとは、きっとアルフレッドさんのことだろう。魔力を回復する回復薬(ポーション)を、何度かアルフレッドさんに買ってもらったのを思い出す。そういえば、パーティーメンバーにもと言っていた。

 美味しく回復してくれていたらいいなぁ。



「……さて。ひなみさんが大丈夫でしたら、移動しようと思うのですが」

「移動? あ、そうですよね。洞窟から出ないといけないですもんね」



 そうだった。サイネさんの口調がとても穏やかだったので、ここが洞窟だということを忘れてしまった。気を引き締めていかないと。もしかしたら、魔物がでるかもしれない。 

 リグ様にポイントでもらった弓をぎゅっと握りしめて、もし魔物がでてきてもすぐに対応できるようにしなければ。



「とはいえ……実は道に迷ってしまったんですよね。帰り道が、わからないんです」

「え?」

「いや、帰り道がわからないというよりも、帰り道を気にしていなかったというほうが正しいでしょうか」

「ええと?」



 道に迷ってしまったというのは仕方がないにして、帰り道を気にしていなかったとはどういうことだろうか。

 ごつごつしている岩肌の地面からゆっくり立ち上がって、少し困ったように微笑むサイネさんを見る。穏やかすぎて、帰り道がわからなくて困っている人にはどうしても見えない。

 少し悩んだ様子で、「うーん」と首をかしげながら、サイネさんが私にどう説明をするか考えている。



「そうだね。ひなみさんには、こういったほうがいいのかな。私は、神託のスキルを持っているんですよ」

「え? それって、もしかして……!」



 リグ様と会話ができるかもしれなくて、この世界で3人しか使うことのできないとても希少なスキル! 今はイクルが取得しているから、おそらく4人になっているはずだ。

 そういえば、イクルは結局神託スキルを使っていなかったように思う。まぁ、私に付き合ってくれただけなので、イクルにとっては不要のスキルだったのだろう。



「そう。ひなみさんがこの泉に現れるから、導いて欲しいと。神託があったんです」

「……っ!」



 それはいったい、どういうことなんだろうか。リグ様から、それとも、レティスリール様? 私が知っている神というのはその2人だけ。

 でも、どちらにせよ私を気遣ってくれたという事実はうれしかった。

 けれど……。



「どうして、私はここからでてきたのでしょう?」

「うーん。そこまでは、私にもわからないんですよね。とりあえず、歩いてみましょうか。地面は岩が多く不安定なので、気を付けてくださいね」

「はい。ゆっくりあるけば……ひゃあぁっ!?」

「ひなみさん!?」



 ゆっくりと1歩を踏み出そうと、私は横にある岩に手をかけて……派手に転んだ。どうして掴まっていたのに転んでしまったのか! そう叫ぼうとして、はっとする。

 私が転んだのではなく、掴んだ岩が崩れた。いや、崩れたのではなく、壁の向こう側にずれ込んだと言ったほうが正しいかもしれない。

 すぐに「大丈夫ですか!?」と、サイネさんが私の後に続いた。手を貸してもらい立ち上がり、とりあえず怪我がなくて安心した。

 そしていったいどうしたのだと、自分が転げ入ってしまった洞窟の横穴を見れば……一面に、青い色の、泉に咲いていた花がここにも咲いていた。



「すごい……」

「見たことのない、花ですね」



 少し水が流れているようで、歩くとぴちゃんと水音がした。

 中央にある茎は、天井の岩を突き抜けて真っ直ぐと空へ向かっていた。もしかしたら、ここは泉の真下なのかもしれない。

 サイネさんは、アルフレッドさんたちと同じようにこの花を見たことがないと言う。この洞窟の奥深くに生えている特殊な花なのか、それともまったく新しい新種のような花なのか。



「私も今日始めてみたんですけど、森の泉の中央に、これと同じ大きな花が咲いていました」

「あの泉にですか? 花が咲いているのを見たことはなかったけれど……それはなんだか、興味深いですね」



 突然咲いた花。地下にある洞窟に繋がった泉。神託によって導かれた治癒術師のサイネさん。

 いったい、今ここに。私に。何が起こるというのだろうか。



『ホッホー』

「わひゃっ!」

「魔物! ……では、ない?」

「え? ……ふくろう?」



 がさりと音がした、そう思って目を向ければ。天井近くの葉に、ふくろうがちょこんと座ってこちらを見ていた。それは小さいふくろうで、おそらく雪うさぎのまろと同じ……いや、それよりも少し小さい。

 でも、森にいる鳥がなぜこんな洞窟の奥にいるのだろうか。



『よくきたホッホー』

「しゃべった!」

『わしはこの花の守護をするもんじゃホ。ちぃと助けて欲しくての、お呼びさせてもらったのホッホー』

「ひなみさんに、助けをですか?」



 もう1度『ホッホー』と鳴き、ふくろうさんが頷いた。大きく翼を広げて羽ばたき、せまい天井を大きくとんだ。そしてその後、翼を休めるためなのか……私の頭へと着陸した。



「えぇと? 私に、何か頼みがあるんですか?」

『ホッホー……この花を、地上へともっていって欲しいんじゃ。太陽の下で、咲かせて欲しいのじゃ』



 ふくろうさんは、そう言って私の足元に咲いている1番小さな花を翼で指した。

 確かに、ほかの花よりも少し元気がなくてへたっとなってしまっている。洞窟の中で、太陽の光がないからあまり成長していないのだろうか。

 でも、それならばほかの花がきちんと成長しているのも不思議だけれども。



『お願いできますかホッホー?』

「ええと、はい。家の庭でもいいですか?」

『それが一番ですじゃ。よろしくおねがいしますホッホー』

「どういたしまして」



 嬉しそうに揺れ動くふくろうさんに、なんだか私まで嬉しくなってしまう。とりあえず、花を土ごと持っていかないとと思っていればふたたびがさりという音がして驚いてしまう。

 サイネさんにくすりと笑われてしまい、少し恥ずかしい。



『ポッホー』

「おや。またふくろうですね」

「本当だ。こっちのふくろうさんは、白色なんだね」



 私の頭に乗っている赤みがかったふくろうと同じ大きさくらいの、純白のふくろうが茎の後ろから羽ばたいてきた。今度は私の肩にとまって、もふもふした身体で私にすりよってきてくれた。か、可愛いです!



『僕がついていくポッホ! よろしくポッホ!』

「えぇと、うん。よろしく?」



 突然のことに思わず頷いてしまえば、ポッホと変わった鳴き声のふくろうは地面に下りて元気のない花を摘んだ。くちばしで器用に砂を掘り返してくれたので、私は持っていた袋へと青い小さな花をしまった。

 サイネさんが泉で濡らしてくれたタオルを貸してくれたので、申し訳ないと思いつつ手を拭かせてもらった。



「ポッホとは、不思議な鳴き方ですね。お名前はあるんですか?」

『名前はないポッホ。花の護りに、名前は必要ないポッホ!』

「そうなの? でも、それだとなんだか寂しいね……今度、いい名前を考えるね!」

『ありがとうポッホー』



 嬉しそうに翼をぱたぱたさせてくれるので、どうやら名前を付けることに関して嫌悪感はもっていないようだった。むしろ喜んでもらえたのが嬉しかった。

 手に持った青い花を見て、しかしいったい何の花なのだろうかと思う。きらきらしているそれはとても神秘的で、どんな不思議な効果を持っていたとしても納得をしてしまいそう。



『とりあえず、地上に帰るポッホ おじいちゃん、行ってくるポッホ!』

『気をつけていってくるのじゃ。強くなって帰ってくるホッホー』

『オッケーポッホ!』



 2羽のふくろうは、どうやらおじいちゃんと孫のようだった。かなりゆるい挨拶をして、もう私たちと一緒に地上を目指すらしい。もう少し、別れとかはないのかと思いつつも、おそらく花が元気になったらここにもどってくるのだろう。

 それならば、期間は1ヶ月とか、それくらいかもしれない。孫をちょっとだけ旅行にだす、といった間隔だろうか。確かにそれならばさらりとした別れも頷けます。



 青い花が咲き乱れる洞窟の深い場所を背にして、私たちは地上を目指し……アルフレッドさんたちと合流をすることにした。

お知らせ

活動報告にて、キャラクターラフイラストなどをちょこっと公開いたしました。

もしよければ、ぜひ見てみてくださいな!

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