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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
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11. うさぎの踊り

「ひなみひなみひなみひなみ~!」

『大変なんだぽー!』



 にぎやかな夜も終えて、ベッドの中で夢を見始めようとしたときに……それはきた。そう、まろとロロだ。

 どたどたと階段を下りている音が聞こえ、その足音は私の部屋の前で止まった。そのままドンドンドンと、まろが私を呼びながら扉をノック、もとい叩く。

 せっかく眠れそうだったのにと思いつつも、慌てたまろなんてめずらしい。もしかして、何か事件でもあったのだろうかと首をかしげる。



 そろりとベッドを抜けて、「どうしたの?」と声を掛けつつ薄手のカーディガンを羽織る。ガチャリとドアを開ければ、なんだかそわそわしているまろと泣きそうなロロ。



「ロロ?」

『た、た、たいへんなんだぽ~!!』

「いいからくるのであるっ!」

「えっ!? ちょ、まろ……っ!」



 いったい何がと、そう問いかけようとする前にまろが私の腕をぐいぐいとひっぱり、一緒に階段を駆け上がる。どうやら、目指しているのは屋上のようだ。

 今日増築したばかりの梯子に登らされて、少し肌寒い夜空の下に私とまろとロロの3人で立つ。月と星の明かりがあるとはいえ、今は夜。森が広がっていて、少し遠くに小さく街が見えるくらい。特に変わった様子もないけれど……そう思っていれば、望遠鏡を見るようにと背中を押される。

 震えるロロが『早く!』と私をせかし、やはりただ事ではないと慌てて望遠鏡を覗き込んだ。



『大変なんだぽ。まろ、逃げないと駄目ぽ……!』

「ここはたぶん大丈夫なのである。でも、うぅん。とりあえず、ひなみの判断を待つのである!!」 



 なんだか背後で物騒な話をする2人に不安を覚えつつ、望遠鏡を動かしながら見つけなければいけないらしい何かを探す。逃げないといけないようなものとはいったい何なのか。わからない……と、思ったのもつかの間で。



「…………あれは、まもの?」

「そうなのである! すごい数の……クロバットである!」



 クロバットと呼ばれたそれは、ぱっと見た限りは蝙蝠(コウモリ)だ。黒い翼をバサバサさせて、おそらく数百の群れで飛んでいる。

 普通は洞窟の中にいるもんじゃないのかー! と、心の中で叫びつつもその数の多さから足が震えた。



『あいつは、洞窟の中に生息している魔物ぽ! 外にでてくるなんておかしいぽ!』

「ここは森だからいいけど、街に行ったら混乱するのである……!」



 クロバットは家から見て、北西方向からこちらに向かってきていた。最終目的地がわからないけれど、このままだとラリールの街へ直撃してしまう進路だ。

 ここはスキルである神様の箱庭があるから、おそらく大丈夫だろうとは思うけれど……こんなにたくさんの魔物に襲撃されたことがないので、正直なんとも言えない。



「どうしよう。街では寝てる人も多いだろうから、すぐに対応するのも難しいんじゃないかな」

『モモも、きっとねてるぽ!』

「とりあえず、街に、アルフレッドさんに知らせないと……!」



 ここからでは無理でも、街に、ひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)に行けばシアちゃんと連絡を取ることができる。

 通信のできるコンパクトは、自室の机だ。すぐに取りに行かないとと、望遠鏡から顔を上げたところで……庭に佇むサリナさんを見つけた。



「え?」

『どうし……って、庭にいたらあぶないぽ!』



 ロロもサリナさんを見つけたようで、慌てて『逃げるぽー!』と叫ぶ。

 しかし、剣を構え前を見据えるサリナさんはぴくりとも動かない。

 気配をさぐっているのか、どうしているのか。もちろん、サリナさんが強いことは知っている。

 ……けれど、数の暴力が強いということくらいは、私だって知っている。



『あ、あぶないぽ!』

「サリナさん‼︎」



 先行して飛んでいたクロバット5匹が、サリナさんに向かって急降下を始めた。

 大きく広げたその羽は、夜空を大きく切って風の音をたてる。剣を手に、クロバットへとまっすぐ視線を送るサリナさん。間違いなく、戦うつもりだ。

 うさぎの耳がぴくりと動き、風の音を読んでいるように……ゆらりと身体が動く。



「サリナさん……!」



 とんっ、と。軽やかに地面を蹴り上げ、サリナさんが急降下してきたクロバットへ攻撃を仕掛け……ようとしたが、サリナさんの剣は届かなかった。



「な、どういうこと!?」



 サリナさんの驚いた声が、夜空に響く。理由をしっている私は、サリナさんに視線を向けられて……なんとなくそらしてしまう。

 そう。クロバットは、神様の箱庭によって、弾かれた。侵入を、許可されなかったのだ。



「ひなみちゃん! これって、どういうことー!?」

「ええと、えっとー……結界的なものは、張ってあって?」



 なんと説明したらいいのかわからず、とりあえずなんとなく笑ってみることにします。不服な顔をしているサリナさんが、私のところに来ようとして、足を止める。

 なぜなら、頭上を大量のクロバットが通過したからだ。いけない! そう思うけれど、私には何かできる手段がない。とりあえず、急ぎアルフレッドさんのところへ。そう思ったところで、サリナさんの叫び声が耳に届く。



「街には、行かせないからっ!」

「サリナさん!?」



 声を張り上げて、サリナさんが切り株の家に足をかけて大きくジャンプする。家から出ている枝を上手く足場にして、屋上まで駆け上ってきた。

 思わず「すごい」とつぶやいて、しかしどうするのだろうとはらはらする。



「サポートするのである! サリナ、飛んで!!」

「まろちゃん! ありがとう、行くよっ!」

「サリナ、飛べなのであるううぅぅぅっ!!」



 まろが手を組み、それを踏み台としてサリナさんが大きく宙に舞った。剣を横に構え、一線、綺麗に振り上げた。



「雪よ! クロバットの動きを遅らせ、うさぎに祝福を与えよ! 《うさぎの踊り(ラビットダンス)》」

『う、うさぎがでたぽ!!』



 まろが踊るように魔法を唱えれば、雪の結晶が吹雪いてすぐに小さなうさぎへと姿を変え踊り始めた。ぴょんぴょんと跳ねるうさぎはとても可愛らしく、攻撃魔法だとは思えない。

 いったいどんな効果があるのだろうと、空を見上げる。サリナさんの剣によってかなりの数のクロバットが倒されたはいたけれど、まだ数は多い。

 そのクロバット1匹ずつに、雪でできたうさぎが飛び乗り動きを鈍らせていた。



「すごい……! あのうさぎが、クロバットを足止めしてるんだ!」

「それだけじゃないのである! もっと早く、踊れっ!」



 まろの踊れというかけ声に、小さなうさぎたちは耳をぴぴっと動かした。宙を自由に走り回って、サリナさんの周りを回る。

 本当に祝福しているようで、サリナさんは雪の結晶をあびてきらきらと輝いていた。



「あ、立てる!」



 屋上へ着地、ではなく。雪の結晶で出来た足場がサリナさんを支援する。これもあの小さなうさぎが作っているのかと考えると、なんて万能なのか。



「すごい」



 思わず声をもらせば、まろがドヤ顔で胸を張る。

 そして、まだまだこれからと言わんばかりに大きく空へ手を掲げた。



「サリナ! うさぎの力はこんなものじゃないのである!」

「まろちゃん!?」



 くるくるとハイスピードでうさぎが回りだして、雪の竜巻が吹き荒れた! いったい魔法はどんなことまで出来てしまうのだろうか。あろうことか、その竜巻はサリナさんの剣へと纏いついた。

 構えた剣の切っ先に、雪の竜巻。驚いたサリナさんが剣を見るけれど、それも一瞬だった。



 おそらく、雪の竜巻がどういったものかを瞬時に判断したのだろう。

 剣を振るいに行くサリナさんに迷いはなく、一直線にクロバットへ剣を向ける。雪の竜巻はその風でクロバットの翼を凍りつかせ、地に落とす。しかしそれも、空中の段階でまろが仕留めるため、落ちてくることはない。

 いっそう大きな風が吹き、雪の竜巻は……全てのクロバットを飲み込み消失させた。



「うそ……あんなにたくさんいたのに!」

『すごすぎるぽ! クロバットは、数百匹はいたぽ!? それを、2人で倒してしまうなんて信じられないぽ!』



 私とロロが一緒に驚くなか、やりきった顔をしたサリナさんとまろが笑顔でハイタッチをした。ちっとも息を切らしていない2人を見て、うさぎという種族はとてつもないのだと心に刻む。

 これが、勇者であるサリナさんと、雪うさぎの精霊であるまろの本来の力なのだろう。私とは違う、圧倒的な強さ。



「ひなみちゃん、大丈夫? 怪我はしてない?」

「はい! 私は大丈夫です。サリナさんこそ、怪我はないですか?」

「まろは大丈夫なのである!」



 心配して身体を見るけれど、どうやらサリナさんは無傷なようで安心した。無事を主張するまろにいたっては、ずっと私の横で魔法を使っていただけなので確認をせずとも問題はないだろう。

 大量の魔物を見たときはあせったけれど、誰も怪我をしなくてよかった。というか、よくこれだけ大量の魔物を2人で倒したなぁと……今更ながらしでかしたすごさに驚く。



『2人ともすごいぽ! それに、怪我がなくてよかったぽ~!!』

「わぁっ! ロロくんも無事でよかった!」

「大活躍だから、お菓子をご褒美でもらうのである!」



 ロロが2人に突撃して、まろは魔物よりもお菓子に目を輝かせているようだった。なんだか笑ってしまえば、まろに「ぷんぷんなのである!」と怒られてしまう。

 でも、そんなまろらしさが、魔物がいたという恐怖を打ち消してくれているのだろうと思う。



「あぁもう! みんな大好きだー!」

「わわっ! サリナさんってば」



 全員を抱きしめるように飛びついてくるサリナさんとじゃれあって、本当に今まで魔物と戦っていたことを忘れてしまいそうになる。

 このまま楽しく眠れたらいいのに……あ、そうか!



「ちょっとまってて!」

「『ん?』」



 いいことを思いついた!

 私は急いで部屋にもどって、交換日記をひらく。何をするのかっていうと……。



【鉢植え:小】 1

【鉢植え:中】 10

【鉢植え:大】 20

【野菜の種セット】 10

【果物の種セット】 10

【ハーブの種セット】 10

【小麦の種】 50

【稲の種】 100

【レンガ:1個】 5

【噴水 - バージョンアップ】 2,000

【テラス席セット】 3,000

【瓶:100個】 3

【部屋】 50

【お風呂 - 増築】 10,000

 New!【部屋ひなみ - 増築】 50,000

部屋イクル - 増築】 2,000

部屋まろ - 増築】 2,000

部屋サリナ - 増築】 2,000

【屋上 - 増築】 30,000

【地下室 - 増築】 1,000,000

【調合室 - 増築】 15,000

【箱庭の扉 - 増築】 300,000

【無詠唱】 50,000

【文通:1往復】 300,000


部屋ひなみ - 増築】 =2000ポイント使用

部屋ひなみ - 増築】 =5000ポイント使用

部屋ひなみ - 増築】 =10000ポイント使用


【合計:17000ポイント使用】


【所持ポイント:999,236,602】



 私は自分の部屋を一気に3段階増築した。

 それにより、私の部屋だけで1階分のフロアを占拠するという、すごい部屋ができあがった。けれど、私のお目当ては部屋の広さではない。



「……うん、予想した通りだ!」



 私は満足気に頷いて、まろたちを部屋へと呼ぶ。

 広くなった私の部屋は、奥に広いベッドの寝室ができあがったのです。ここなら、みんなで一緒に寝ることができるから。

 私はなんとなく、この嬉しい気持ちのまま、仲間という絆が出来たようなこの瞬間のまま……今は過ごしたい。そう思ったのです。

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