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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第3章 呪いの歌
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42. 女神の帰還

 イクルの目が治ったことと、とてつもなく疲れていたこと。

 この2つが重なり、私は朝まで深い眠りについた。もう目覚めないんじゃないかっていうくらい、熟睡した。けれど、身体に染み付いた習慣とは怖いもので、私は朝になって普通に起きることができた。

 けど、嬉しさのあまり泣きすぎてしまって目はかなり赤かった。

 ……目薬の回復薬(ポーション)とか、つくれないのかな。



「……はふっ」



 思わず息をはきつつ、ベッドに上半身を起こしてぐっと伸びれば……若干筋肉痛だった。いや、昨日はいろいろなことがあったから仕方ない。

 もし可能であれば、この村で数日休めたらいいな。それに、森の探索をすれば新しい薬草が見つかったりするかもしれない。

 あまり回復薬(ポーション)の種類は知らないけれど、王子の実と花があるといいなと思う。それくらいしか、材料になるものを知らないというだけだけれど。



 人様の家ということもあり、先にさっと服を着替えて顔を洗う。

 それから、鞄にしまっておいた交換日記をめくる。疲れ果てていたため、昨日は「助けてくれてありがとうございます」という1文しか書けていない。その分、今日の夜はいっぱい書こうと眠りながらそっち誓った。



「あ、これ……!」



 私は思わず目を見開いて、食い入るように交換日記をみた。それはポイント交換などが書かれたページで、リグ様との交換日記の前にあるページ。そこには、いろいろと追加されているものがあった。



【交換日記】 =3ポイント加算

【《呪》の消滅】 =1,000,000,000ポイント加算


【鉢植え:小】 1

【鉢植え:中】 10

【鉢植え:大】 20

【野菜の種セット】 10

【果物の種セット】 10

【ハーブの種セット】 10

【小麦の種】 50

【稲の種】 100

【レンガ:1個】 5

【噴水 - バージョンアップ】 2,000

【テラス席セット】 3,000

【瓶:100個】 3

【部屋】 50

【お風呂 - 増築】 5,000

【部屋ひなみ - 増築】 2,000

【部屋イクル - 増築】 2,000

【部屋まろ - 増築】 2,000

【屋上 - 増築】 10,000

【地下室 - 増築】 30,000

【調合室 - 増築】 15,000

【箱庭の扉 - 増築】 100,000

【無詠唱】 50,000

 New!【文通:1往復】 300,000


【所持ポイント:1,000,003,763】



 まずは、凄まじいほどのポイント加算。

 イクル以外の呪奴隷はキルト君しかしらなかったけれど、ポイントがもらえているということは本当にこの世界から呪がなくなったのだろう。

 使い切れないほどのポイントがある。箱庭の扉を増築して、いつでも〈アグディス〉へ来れるようになるのはいいかもしれない。それをしたとしても、ポイントはあまる。



 ……いや、そんなことよりも。新しく加わっているこの文通とはなんぞ、という話だ。しかも1往復あたりのポイント消費がとてつもなく高い。これでもかっていうほど高い。だって、交換できるものの中で1番高い。

 いったい誰と文通ができるのかは書いてないけれど……ポイントのことを考えると遠くにいる人に送ったりすることができるのかもしれない。例えば、海の無向こうにいるシアちゃんとか。あとは……深い森やダンジョンで迷子になっても助けてーと手紙を送れるのだろうか。

 それならば確かにこのポイントの高さも納得です。



 - - - - - - -


 よく眠ってたね。おはよう、ひな。

 それから、呪の解放おめでとう。

 僕が思っていたよりもすぐに成し遂げるから、驚いたよ。これもひなが頑張ってきた成果だね。


 あぁ、でも……そうだね。

 しばらくは、身体を休めるんだよ? 思っているよりも身体は疲れているだろうから。もちろん、精神的にもね。

 今はもう少し、ゆっくりおやすみ。


 - - - - - - -



「もう少し、ゆっくり……」



 リグ様のおめでとうという言葉と、私の身体を気遣う言葉。

 あいかわらず、私は甘やかされているなと思うけれど……それを嬉しく思ってしまうのも事実。それに、疲れているのもまた事実。

 エルフの人たちに挨拶して、ゆっくり村を見れたらいいなぁなんて気楽に考えてしまう。

 文通のことも気になるけれど……これはまた後で聞いてみよう。それに、リグ様が交換できる物が増えるってそれとなく言っていた。きっとそれがこれなのだろう。



「そういえば……レティスリール様はあの後どうしたのだろう」



 村の人たちに囲まれていたけれど。

 そう思いながら階下の食堂へ足を伸ばせば、レティスリール様が数人のエルフさんと朝食を食べていた。



「あら、ひなみ! おはよう。よく眠れた?」

「おはようございます、レティスリール様。とってもよく眠れました。部屋を貸していただいて、ありがとうございます」



 レティスリール様の隣にいるのは、口ひげが立派な年を取った男性のエルフさんと、墓守のエルフさんと、それから……!



「ミルルさん!?」

「お久しぶりですぅ、ひなみさんっ!」



 そう、そこにいたのはラリールの街であったミルルさん。タクトのパートナーさん? なのか、片思いなのか。思いを抱いてる可愛いエルフの女の子。蜂蜜色の髪をお団子にしていて、リボンを結んでいる。

 嬉しそうに手を振ってくれて、私も嬉しくなる。タクトと別れてから、ひとりで故郷に戻ったと聞いて少し心配していたのだけれど……無事に戻れたようでよかった。

 だって、ここまでくるのにかなり大変だったから。しかも、ミルルさんは女の子の一人旅。いや、もしかしたらタクトの一人旅よりは安心かもしれないけれど。強さ的に。



「おや、ミルルの知り合いかい? わしはエルフの長老である、ジーヌじゃ。レティスリール様をお救いいただき、ありがとうございますじゃ。薬術師殿」

「いいえ、私こそ……! ええと、ひなみです」

「私のお爺ちゃんです。ひなみさんとは、ラリール王国でお会いしたんです」

「そうじゃったか」



 慌てて挨拶をして、握手をする。エルフの人は人間へあまり友好的ではないから……と、そう思っていたけれどレティスリール様のおかげでとても友好的だった。

 となりでにこにこ笑っているレティスリール様に感謝しなければ。



「俺はソラ。墓守をしていたのだけれど……薬術師殿、いや。ひなみさんのおかげでもう必要はないようだ。感謝する、ありがとう」

「いえ、私なんて……全然。ソラさんこそ、ずっとお墓を守っていたことがすごいです。だから、レティスリール様もこうして無事なんですよ。ありがとうございます」



 話してみれば、みんなレティスリール様を慕っていることがよくわかる。

 まるで王様のように……って、女神様だった。そうか、王様より全然偉いんだ! そんな人と仲良く話をしたりしていたことを思い出して、なんだか急に緊張してしまう。

 それはソラさんが1番激しいようで、若干汗ばんでいた。そうだよね、お墓とはいえレティスリール様をお護りしていたんだもんね。緊張もしますね。



「ほら、ひなみも朝食をいただきなさい。イクルはもう済ませて、少しでかけているの」

「え、そうだったんですか?」

「そう。なんでも、温泉が少し歩いた森の奥にあるから調べたいって」

「……そうでしたか」



 あれ? イクルさん、もしかしてひとりで温泉へつかりにいってます……よね? 調べるといいつつ、絶対満喫しているに違いない。

 ずるいと思いつつも、私は疲れてるから森の奥へ行くのは少し厳しいかなと考えて無理矢理納得することにした。



 レティスリール様の向かいの席につけば、すぐに朝食が用意された。悪いと思いつつ「ありがとうございます」と言えば、「英雄ですから!」といい笑顔をソラさんに返された。

 …………何ですか英雄って。とりあえず聞かなかったことにして、ミルルさんと少し話をしながら朝食をいただくことにした。



「タクトからは、ちゃんと連絡がきたです。信頼できる師匠を見つけたから、修行をしていると」

「そう……よかった。きっと、タクトだって強くなりますよ!」

「はいです。タクトも、男の子だったんですね。弱いから守らないとって思っていたのに、どんどん先へと歩いてしまうのです」



 少し心配していたけれど、どうやらちゃんと連絡を取ることができたらしく安心した。

 タクトは人形になって、そのまま光の精霊さんのところへ修行へ行った。むしろ修行してもらえるから、人形になっちゃってラッキーくらいに思っていたタクトを思い出す。

 スライム1匹をやっと倒せるくらいだったタクトは、今頃どれくらい強くなれたのだろうか。もしかしたら、スライムはとっくにクリアしてハードウルフですら倒せるようになっているかもしれない。



「私は、王家の実をタクトにもらいました。……これは、長老になるために必要なものだったんです。ひなみさんに協力してもらったと、聞きました。ありがとうございますです」

「あ……えと、いいえ。それは、タクトが手に入れたものですから」



 一瞬、びくりと肩が震えてしまった。ミルルさんに、ばれたりはしなかっただろうか。少し不安になるが、笑顔のミルルさんを見る限り問題はなさそうだ。

 王家の実。これは、王家の木となってしまったタクトから、みのった実。まさか人間が木になってしまうなんて、思い返しただけでもぞっとしてしまう。

 ミルルさんにはその事実を話さないと決めたけれど、きっとその判断は正しい。今の私と同じで。15歳くらいの女の子に、この話は少し残酷だ。たとえ結果がよかったとしても。



「ふふ。タクトも、少しは強くなってくれるといいです。スライムにやられてしまうなんて、情けないですからね」

「そんなこと言うと、タクトに怒られそうですね。大丈夫、きっと強くなって帰ってきますよ」

「ですです。私は、信じて待ちます」

「ミルルさん……」



 なんて健気な女の子なのか。

 やっぱりタクトとミルルさんは相思相愛のじれったい関係なのかもしれない。タクトも、自分が弱いから告白に踏み出せなかったに違いない。

 今度会ったら、背中を押してあげようかな? いや、それこそ余計なお世話と怒られてしまいそうだ。



 ちょっと笑いながらデザートのヨーグルトに蜂蜜をかけて口に含む。なんというか、エルフの村で作っている蜂蜜はすごく甘くて美味しい。今度パンケーキを作って、この蜂蜜で食べたいな。

 まろのお土産にもって帰ろうと思った。



「美味しいわよね、ここの蜂蜜」

「はい。レティスリール様もお好きなんですか?」

「ええ、とっても。……っと、ひなみ。食べ終わったら、回復薬(ポーション)を作るわよ」

「あ、はい?」



 ぴしっと指をひとつ立てて、「たくさん必要なの!」とレティスリール様が胸を張った。長老であるジーヌさんに部屋を用意してもらうお願いをして、材料も伝えていた。

 その材料は、私も覚えがあるもの……記憶の花と、蜂蜜と、瓶。そう、記憶の回復薬(メモリー・ポーション)の材料だ。



「あ、レティスリール様! ええと、記憶の花と瓶なら私が持っています。なので、蜂蜜を」

「本当? さすがはひなみ、優秀ね。じゃぁ、蜂蜜をたくさんお願いできるかしら」

「もちろんですじゃ。レティスリール様のために、最高級のものを用意させましょう」

「ありがとう」



 すぐに蜂蜜だけと指示をだして、回復薬(ポーション)を作るために用意してもらう部屋へと運ぶように指示をだした。

 私はといえば、レティスリール様が記憶の回復薬(メモリー・ポーション)をなんのためにつくるのかわからず、ただただやりとりを見ていることしかできない。

 いったい記憶の回復薬(メモリー・ポーション)で何をするというのだろうか。

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