066 おじさんちょっとしたショックをうける
学園長と魔法談義をした翌日のことである。
おじさんはアルベルタ嬢をつかまえると、話の内容を伝えた。
そのときに学生会への打診があることも伝えたのだが、アルベルタ嬢も予測はしていたようだ。
主に成績が優秀な上位貴族家から学生会に任命されるからである。
つまりアルベルタ嬢は既に副代表の候補も選出してくれていた。
仕事のできる令嬢なのだ。
アルベルタ嬢が候補として名をあげたのが、パトリーシア=ミカエラ・リンドである。
リンド伯爵家の次女で、おじさんとも同じクラスだ。
明るめの金髪でゆるふわのウェーブヘアが特徴の女子である。
同級生の中では小柄なので、お人形さん的な愛らしさがあるのだ。
ただ愛らしいだけではない。
使い魔ガチャではきっちり自力で使い魔をゲットしている優秀な子である。
おじさんとしてもパトリーシア嬢で何の問題もない。
アルベルタ嬢が推薦してくるのだから、二つ返事で了承したわけである。
その日の講義終わりであった。
クラスメイトたちが帰り支度をしている時におじさんはアルベルタ嬢に声をかける。
アルベルタ嬢も心得たもので、すぐに件のパトリーシア嬢をつれてきてくれた。
「リー様、改めましてパトリーシア=ミカエラ・リンドですわ」
華麗なカーテシーをばっちりと決める。
その可憐な姿は令嬢と呼ぶのにふさわしい少女であった。
「こちらこそ改めてよろしくお願いいたしますわね、パトリーシア嬢」
「副代表の件、喜んでお引き受けさせていただきますわ」
“でも”とパトリーシア嬢はおじさんを上目づかいで、ぢっと見つめた。
「私のことはパティと愛称で呼んでくださいませんか?」
「パティ……」
つい勢いに呑まれて、おじさんはぼそりとつぶやいてしまった。
その声に反応してパトリーシア嬢はぴょんと跳ねる。
「やりましたわ! リー様、いいえリーお姉様!」
お姉様って。
おじさんは同級生である。
そう呼ばれることには違和感がものすごくあった。
「ちょっと待ったー!」
そこへアルベルタ嬢が割りこんできた。
「私も! 私もアリィと呼んでくださいませんか?」
「え? あ? アリィですの?」
“きゃああ!”と女子特有の甲高い声が響いた。
愛称で呼ばれるのは、そんなにも嬉しいことなのだろうか。
おじさんは疑問に思った。
では自分はと考えると、リーが既に短縮した愛称みたいなものである。
これ以上は短くできないのだ。
しかし、おじさんだけ敬称づけというのも寂しい。
「ではわたくしのことも、リーと呼んでくださいます?」
「それはできませんわ!」
アルベルタ嬢とパトリーシア嬢が声をそろえて即座に否定した。
おじさんはちょっとしたショックをうけて、頬がひくついてしまう。
「私ごときがリー様を呼び捨てにするなどできませんわ!」
アルベルタ嬢の言葉尻を喰い気味にパトリーシア嬢が続く。
「そうですわ! リーお姉様はリーお姉様なのですから!」
“ねー”と二人の令嬢たちは盛り上がっていた。
おじさんはと言うと、ちょっと精神的なショックが大きかったのだ。
気を抜くと、その場に膝をついてしまいそうなほどに。
その後に三人で男性講師のもとに訪れる予定だったのだ。
薔薇乙女十字団設立の申請をするためである。
だがおじさんはその日はそこで切り上げた。
一抹の寂しさを胸に抱き、家に帰ってもふもふで癒やされようと思ったのである。
誤字報告いつもありがとうございます。
修正しました。
アルベルタ嬢の愛称がリーと判別しにくいので、「アリー」から「アリィ」に変更しました。




