060 おじさん丸投げされて丸投げする
初級ダンジョンの未踏破区域を攻略したおじさんは色々と面倒な処理が待っていた。
もう攻略し尽くされたと思われていたダンジョン。
そこに未踏破区域があったことは、王城へも報せがいった。
もうこの時点で女性講師は、自分の手に負えないとぐったりしていたのだ。
そんな姿を見てしまうと、おじさんは放っておけなくなる。
学園長から求められたドロップ品を含む獲得したお宝の情報はおじさんが対応することにした。
どのみち宝珠次元庫を解放しないといけないのだ。
おじさんが対応した方が早いと思ったのである。
「ううむ……これがエリアボスのドロップ品なのか」
自慢の白髭をしごきながら、学園長があの黒いローブを凝視している。
「トリちゃん……わたくしの使い魔によると、冥府のローブというそうですわ」
「冥府のローブか。手にとってみてもいいか?」
「もちろんですわ」
「これは高度な魔法が付与されておるのう。ううむ……」
学園長が怪しい手つきでローブを触っている。
その様子を見ておじさんは、ひとつ息を吐いた。
「よろしければ差しあげますわ」
「なぬぅ! それはいかん! いかんぞ!」
「わたくし、そのローブをいただいても使いませんわ」
おじさんには似合いそうにないのだ。
服に着るではなく、着られるになってしまいそうな物である。
それに言葉にはしなかったが、おじさんは自分で魔法を付与できるのだ。
冥府のローブよりも強力なものだって、トリスメギストスがいれば問題なかったりする。
なのでここは必要としている人に使ってほしいと思ったのだ。
“むぅ”と学園長がうなる。
その表情はとても真剣味のあるものだった。
「では、言い値で買いとろう。さすがに生徒からもらうわけにはいかんからの」
「学園長がそう仰るのならそれでかまいませんわ。ただわたくしでは相場がわかりませんの。ですので、そのお話はお父様を通していただけますか?」
「うむ。ではそうさせてもらおうかの」
ご満悦といった表情で白髭をしごく学園長であった。
これで終わりにしたいところであったが、まだまだ話は続く。
なにせ成人男性の拳大はある宝珠もあれば、金銀財宝といったお宝もあるのだ。
これらの所有権はどうするのかもおじさんはよくわかっていない。
ということで学園長に質問してみた。
「それらはすべてリーとメーガンのものじゃが……」
と学園長がそこで少しだけ思案した。
「メーガンは学園から派遣しておる講師で、あくまでも補助的な役割を担うものじゃからなぁ」
「しかしメーガン先生が財宝のある部屋を発見されたのですわ」
「うむ。それも理解しておるよ。じゃがリーの使い魔でも発見できたのではないか? 少なくともわしが聞いておる報告からはそう判断できるがの」
確かに学園長の言うとおりだろう。
アンドロメダのアンちゃん、あるいはトリスメギストスでも発見したはずだ。
とは言えである。
おじさんとしては、半分でも十分な報酬だと思うのだ。
「まぁそのあたりも含めて、スランと話しておこうかの」
「かしこまりましたわ」
その方がいいとおじさんは思う。
こういう話は苦手だからだ。
「ところでリーよ」
「なんでしょう?」
「最近耳にしたのじゃが、珍しい茶器を持っておるそうだの」
おじさんの作ったボーンチャイナの陶器のことである。
先日のお茶会でお披露目された話が広がっているのだろう。
「こちらですわね」
おじさんは宝珠次元庫に収納していた予備の茶器を取りだす。
「うほ! それじゃそれ! 噂には聞いておったが素晴らしいデキじゃの!」
「こちらは後日、当家の商会から売りにだされるものですわ」
「なぬ! いつからじゃ!」
「そのあたりのお話もお父様にお願いしますわ」
やはり政治的なものも含む話し合いは、おじさんの苦手分野だ。
学園長との話で緊張したのもあってか疲労の色が濃くでてしまう。
そこで父親には申し訳ないが“がんばってもらいましょう”と丸投げすることにしたのであった。




