049 おじさん自慢のサンドイッチをお披露目する
おじさんが考えるイギリス式のアフタヌーンティーの準備は整った。
家具類や食器類もそろえ、料理も用意したのだ。
しかしまだ不安はある。
それは一度も本格的にお茶会をしたことがない点だ。
できるだけ事前準備を入念にしたいおじさんは母親に相談してみたのである。
「じゃあ準備のお茶会ってことで一度試してみましょう。ソニアにもいい経験になるわ」
ということで急遽、公爵家にて身内だけのお茶会が開催されることになった。
参加者はおじさんと母親、弟妹に加えて家令と侍女長もだ。
どうやら今回のお茶会は使用人たちの中でも、比較的に若手の練習台にするとのことだった。
もちろんおじさんが開く初めてのお茶会である。
そのために使用人たちも気合いを入れて準備をしていた。
最終的なチェックを家令や侍女長が審査するということである。
「では、用意をお願いしますわ」
おじさんの言葉を合図にして使用人たちがキビキビと動く。
ちなみにこの日のために用意されたのが、ティーカートである。
料理を運ぶためのワゴンを改良したもので、丸みと曲線を持たせたデザインにしたのだ。
おじさんに手抜かりはない。
ついでにお酒を運ぶ用のバーカートも作っている。
こちらは男性向けで重厚な作りだ。
テーブルの上に運ばれてお茶の用意が始まる。
じっくりと抽出するのだが、この間にテーブルに料理を用意していくのだ。
おじさんお手製の三段スタンドが置かれ、そこにケーキ・スコーン・サンドイッチの順で置かれていく。
ちょうどいいタイミングでお茶の抽出が終わる。
使用人たちもしっかりと計算された動きをしていたのだ。
ふわりと香るお茶に、目を惹く鮮やかな料理たち。
妹と弟はついに興奮を抑えられなくなった、“ふわぁ”と声をあげていた。
ついでに母親も“あらあら”と言いつつも、目がすでに釘付けになっている。
「リーちゃん! このお料理は食べる順番とかあるのよね?」
アメスベルタ王国のお茶会は、いわゆるバイキング形式である。
テーブルの上に軽食とケーキ類がならび、好きなものを給仕してもらうスタイルだ。
そこにおじさんは英国式を持ちこんだのである。
百戦錬磨の母親とて事前におじさんから聞かされていたものの、初めて見るタイプにとまどっていたのだ。
「はい。スタンドの下から順に味わっていただければと思います」
と母親の側についた侍女がサンドイッチをきれいに盛りつける。
「これはお魚なの?」
「はい。サバのサンドイッチですわ」
おじさんの言葉に妹が顔をしかめた。
サバは美味しい魚なのだ。
しかし青魚であるため、独特の臭みがある。
それが妹は苦手なのだ。
その点を料理人と試行錯誤して工夫したのである。
解決方法は色々とあったが、最も好評だったのが塩ヨーグルトに漬けたものだった。
プレーンのヨーグルトに塩味をつけたものである。
ヨーグルトに塩というのがアメスベルタ王国ではなかった調味料だったのだ。
これにサバをつけることで臭みが消える。
さらに身がふっくらと焼けるのだ。
これに定番のレモンとおじさんお手製のハーブソルトを用意した。
葉物野菜と薄くスライスしたタマネギ、トマトをセミハードのライ麦パンにはさんでいる。
たっぷりとレモンを搾って食べるのがおじさんのおすすめだ。
「美味しいわー。ソニア、臭みがないから大丈夫よ」
母親が真っ先に声をあげる。
「ほんとう?」
“ええ”と頷く母親に促されて妹もかぶりつく。
そしてご満悦といった笑みをもらしていた。
弟もニコニコしてサンドイッチを食べている。
他にも定番のローストビーフや、マスタードバターを使ったシンプルなタマゴサンドが用意されている。
いずれも好評だったのが、弟と家令の男性陣は肉のサンドイッチが気に入っていた。
母親と侍女長はシンプルなタマゴサンドが良かったと話に花が咲いている。
次のスコーンやケーキ類も特に問題はなかったようだ。
いや問題はあった。
「食べ過ぎちゃったわ……」
ぐったりした母親の言葉に弟妹たちが口を開くことなく頷いている。
子ども組の二人のお腹は、イカめしのように膨らんでいた。
そう。
おじさんが用意した料理は目新しいのと、味の良さでつい食べ過ぎてしまう問題を引き起こしていたのである。




