048 おじさんの苦手な食べ物が判明する
おじさんがイメージするお茶会とは、英国式のアフタヌーンティーである。
そのために必要なのは雰囲気作りからだと密かに気合いを入れていた。
おじさんは使用人に頼んで素材を集めてもらい、家具作りからスタートさせる。
英国式ということなら、やはりヴィクトリア様式の家具だろう。
ちなみによく混同されるロココ調は、仏国の家具になる。
ヴィクトリア様式は落ちついたデザインに、シックで深みのある色合いが特徴だ。
かつての記憶を思いだしながら、優雅な曲線を描いた家具を作っていく。
テーブルにソファー、一人がけの椅子などだ。
さらにはシルバーのポットやスプーン類、ボーンチャイナのデザインを参考にした磁器も作った。
伊万里焼などの記憶にある装飾もしてみる。
おじさんお茶会への参加経験が少なかったので知らなかったのだ。
アメスベルタ王国では陶器はあっても磁器がない。
磁器を焼成するための必要温度が陶器に比べると高いからだ。
そこでおじさんの錬成魔法が火を吹く。
“えいや”と気合い一発で、なんとかしてしまうのである。
おじさんの持つチートも相まって、アメスベルタ王国に磁器が爆誕した。
「これ、とってもいいわねー」
母親もニコニコである。
乳白色の器に鮮やかな赤で描かれる植物の模様。
縁は金で彩られた豪華な作りである。
おじさんが公爵家で使う分も作ったのは当然のことであった。
アフタヌーンティー特有ともいえる三段スタンドも作る。
最下層になる三段目にはサンドイッチを、二段目にはスコーン、最上段にケーキ類。
これが正しいスタイルである。
おじさんはこだわりがあるタイプだが、ひとつだけ変更したいところもあった。
なぜか。
おじさん、実はきゅうりが苦手なのだ。
かつて英国ではきゅうりは高級品であった。
そのためアフタヌーンティーではキューカンバーサンドイッチが常道なのだ。
だが、である。
おじさんはきゅうりが苦手だ。
あの青臭さが鼻についてしまう。
無理をすれば食べられなくはないのだが、それでも嘔気をもよおすこともある。
ポテトサラダにホンの少量入っているだけでも、おじさんは眉をしかめるほどだ。
なのでそこだけは変更したい。
おじさんだって苦手を克服しようとはがんばったのだ。
しかしきゅうりの壁は高かった。
どうにもならないほど高くて、克服を諦めたのである。
英国式にこだわりたいのだが、おじさん的にはきゅうりはノーセンキューなのだ。
とは言えである。
今生においておじさんはきゅうりを口にすることがなかった。
生野菜のサラダでも葉物野菜がメインである。
唯一、きゅうりっぽいものだと言えるのがピクルス的な酢漬けの野菜だろう。
ただ、おじさんはピクルス的なものなら大丈夫なのだ。
青臭さがないから。
ということで。
きゅうりがあるかないかを調べる気はおじさんにはなかった。
ただきゅうりに代わるサンドイッチを考案せねばと思い至ったのである。
家具や食器類類などをあらかた作り終えたおじさんはメニューを考えた。
ケーキ類はフルーツタルトをメインにするつもりである。
ここはいいのだ。
なにせアメスベルタ王国はなぜかケーキ類が豊富なのだから。
季節があえばモンブランでも作ろうかと思うくらいだ。
スコーンについても問題ないだろう。
付けあわせにするためのジャムやクリームチーズなども含めて、食卓にものぼるからだ。
つまりサンドイッチをどうするか。
おじさんは大きな問題に頭を悩ませるのであった。
最終的に試行錯誤した結果、おじさんはサバサンドイッチを作ることにしたのである。
サバは自身が持つ消化酵素の影響で腐りやすい。
しかしそこは魔法がある世界だ。
とれたてのサバを冷凍保存して王都へと輸送する方法が確立されていたのである。
おじさん、実は缶詰のサバを使ってよくサンドイッチを作っていた。
しかし新鮮なサバがあるのであれば、それを焼けばいいと。
そして料理人たちとの試行錯誤の上で、納得のいく一品が完成したのである。




