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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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046 おじさん妹がもふもふに狂喜する様を見て反省する


 微妙な空気に包まれているカラセベド公爵家の裏庭。

 空気をあえて読まずに、万象ノ文殿ヘブンズ・ライブラリーが口をはさむ。


『主よ、名づけも終わらせてしまうといい』


 それもそうかとおじさんは頭をひねった。

 

 クー・シーは暗緑色で、ケット・シーは少し黄色がかったクリーム色である。

 どちらも見た目の色からとるとして、とおじさんは考えた。

 あんこ、おはぎ、レモンパイ、カスタード。

 さすがに食べ物からは離れたいおじさんであった。


 しばらく考えて、おじさんは閃く。

 宝石でいこう、と。


「クー・シーはオブシディアン。ケット・シーはクリソベリルでいかがでしょう」


 オブシディアンは黒曜石のことである。

 クリソベリルは金緑石だ。

 金緑石はシャトヤンシー効果で猫目に光る。

 いわゆるキャッツアイというやつだ。


『わふん!』


『クリソベリルなのだ!』


 使い魔たちがおじさんの名づけを受けいれたと同時に光がぺかーと放たれる。

 姿かたちに大きな変化はなかった。

 いや、あった。


 これまでも素晴らしい毛なみだったのが、もっとふわっふわでもっふもふになったのだ。

 まるでトリミングされたてかのようなふわふわ加減である。


『我が同僚たちよ。我は万象ノ文殿ヘブンズ・ライブラリーのトリスメギストスである。主の使い魔筆頭だ』


『よろしくなのだ!』


 ということで無事に使い魔としての契約も終わった。

 おじさんもにっこりである。


「ねーさまー!」


 おじさんの耳に妹の声が聞こえた。

 見れば妹が目をキラッキラに輝かせて、こちらに向かって走っている。


 さすがに人払いをしたといっても、これだけ派手にやっていれば邸から注目を集めても仕方がない。

 特にクー・シーは大きいから、邸からでも十分に見えたのだろう。

 妹の後ろにはお付きの侍女たちもいるが、視線はもふもふたちに釘づけである。


「ソニア、危ないから走るのをおやめなさいな」


 少し待っていると妹が飛びついてくる。

 危なげなく受けとめて、おじさんは妹の頭をなでた。


「おかえりなさい、ねえさま」


「ただいま、ソニア」


「ねぇねぇ、ねえさま。おっきないぬさんがいるよ」


『お初にお目にかかりますのだ! クリソベリルというのだ!』


 ケット・シーが妹に向かって頭をさげる。


「わぁ! しゃべるねこさん! おっきないぬさん!」


 奇しくもおじさんが弟妹にプレゼントしたぬいぐるみと同じ組み合わせであった。

 そこにいたく感動したのであろう妹が目を丸くして、二頭を見ている。


『わふん』


『オブシディアンと言ってるのだ!』


「はじめまして、そにあです。ねえさまのいもうとです」


 おじさんとお付きの侍女たちの頬がゆるむ。

 このファンシーな世界はなんだろうか、と。


「ねえさま、なでてもいい?」


「聞いてごらんなさい」


 妹が話しかけようとしたら、オブシディアンがべろりと妹の顔をなめた。

 “きゃー”と言いながらも、笑顔を見せる妹である。

 オブシディアンに飛びつき、クリソベリルにも抱きつく。


 微笑ましい光景であった。

 しかし、とおじさんは思う。


 少し前までの自分もこんな感じだったのだろうか、と。


 クリソベリルが舌をだし、へそ天でお腹をもふられている。

 その間に侍女たちがきゃーきゃー言いながら、座ったオブシディアンの尻尾に巻かれていた。


 妹や侍女たちの顔もとろとろにとろけている。

 楽しいのだろう。

 わかる。


 わかるんだけど、人の振り見て我が振り直せ。

 そんな言葉がおじさんの脳裏によぎったのであった。

 もふもふの魅力にはかなわないことを理解しながら。




今年最後の投稿です。

明日は一話更新します。

皆様、よいお年を。


書いたと思ったら抜けてたので、名づけによるブースト場面を追加しました。

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