028 おじさん無性に和食が恋しくなる
本日二話更新の一話目です。
二話は19時更新予定です。
おじさんが意識を失ったあとの話である。
祖父母がおじさんをともなって退出したあと、国王と宰相は速やかに動いた。
王妃に毒を盛ったのは誰なのか。
それは誰の依頼で行われたのかを調べるためだ。
遠大なる死毒は邪神の呪毒薬である。
そんなものは早々に用意できるものではない。
しかし放っておいては、次の毒が盛られるかもしれない。
王族たるもの毒や状態異常に対して耐性を持つ魔道具を身につけている。
その耐性を突破することは難しいのだ。
だが一度あったのだ。
再び起こるかもしれない。
その可能性は高いと考えるべきだろう。
なにもなければそれでいいのだ。
笑い話にすればいい、と国王と宰相の考えは一致していた。
王城に勤める者は多いが、王妃の身の回りと限れば限定される。
結果として一人の侍女が犯人としてうかびあがったが、既に命をなくしていた。
そうした諸々のことが進んでいく中でも朗報はあった。
王妃が健康を取り戻したのである。
他方でおじさんはと言うと、のんびりとした日々を過ごしていた。
おじさんが目を覚ましたのは、王城から戻った二日後のことである。
既に野営訓練後の休暇も終わり、学園では授業が再開されていた。
ただ貴族であれば、お家の事情で学園を休まざるを得ないことがある。
おじさんの場合は国王や公爵家が絡んでいるのだ。
アメスベルタ王国内では黒いものも、白とできる権威がある。
そういう事情もあって、おじさんは元気だったのだが七日ほど休むことになったのだ。
ちなみに祖父母はおじさんが目覚めたその日に領地へ帰っていった。
やはり領地の経営というのは大変なのだ。
「ねえさま、これおいしいね」
妹がおじさんに向かって、にんまりとした表情で微笑みかける。
その小さな手に持っているのは、件のクアトロフォルマッジだ。
平たく言えば、チーズとハチミツのピザである。
「美味しいわね」
と言いつつ、おじさんちょっと飽きがきている。
塩味と甘みのコラボレーションが楽しめるメニューは美味しいのだ。
しかし、ここまで家族がドハマリするとは思わなかった。
母親と妹、それに弟も加わって、連日のようにメニューに加えられている。
おじさん的にはちょっと別のものが食べたいのだ。
もちろん公爵家の料理人もピザばかり作っているのではない。
ないのだが、前世の記憶を刺激するようなメニューを食べたことで、無性に和食が恋しくなっていたのだ。
アメスベルタ王国では、いわゆる洋風のメニューが一般的である。
安定した気候と肥沃な土壌を持つ国土があるので、食糧事情そのものは悪くないのだ。
主食としてはパンが食べられている。
発酵させた柔らかいパンだけではなく、無発酵のパンや揚げパンなどのバリエーションもあるほどだ。
さらにはマッシュポテトを主食とする地域もある。
意外と食生活は豊かなので、おじさんとしても不満はなかったのだ。
だが和食を意識すると食べたくなる。
前世となじみのある食材が多いこの国でも米は見たことがなかった。
そのことを不思議に思いながら、おじさんは意識を引き戻す。
「お米、さがしてみようかしらん」
おじさんは心のメモにとどめおくことにした。




