023 おじさん邪神の呪いとたたかう
王妃の寝室を優しい光が満たしていく。
まばゆい光なのに眩しくはない。
冬の日に浴びる陽光のように温かく、慈愛を感じるものである。
それは神威が具現化したものであった。
おじさんは女神の愛し子である。
愛し子の純粋な祈りは女神にとどく。
その祈りに呼応した力があふれたのだ。
【女神の癒やし】
おじさんの手から王妃の身体へと神威の光が注がれていく。
時間を逆に進めたように王妃の肌に生気が戻り、肌にも赤みがさした。
「おお!」
王が跪き、両手を組んで祈りを捧げる。
祖父母も同じポーズを取り、女神の神威に感謝を示す。
「まだですわ!」
おじさんが叫ぶ。
王妃の身体の中心になにか引っかかりを感じるのだ。
それは遠大なる死毒の核たるものである。
おじさんには理解できた。
だからこそ神威を強める。
王妃の健康を願い、女神への感謝を祈る。
茫洋たる大海のごとき、おじさんの魔力が奔流となってほとばしった。
しつこいシミを落とすように、おじさんはイメージする。
女神がこの場にいれば、邪神の呪いをシミと同じにするなと言うだろう。
だがおじさんにとっては、それが正しく思えたのである。
おじさんの額から汗がにじむ。
膝がカクカクと震える。
それでも決して休むことはしない。
休めば、最初からやり直すことになるのだ。
おじさんの魔力は膨大である。
しかし無限ではないのだ。
魔力が少なくなれば体調も悪くなる。
それを気合いでごまかすのだ。
前世では死にかけたことが何度かある。
それを思えば、まだまだいけるとおじさんは理解していた。
「邪神の呪いはお呼びでないのですわー!」
遠大なる死毒の核はしつこかった。
それでもおじさんはがんばる。
助けたいのだ。
助けたいからがんばるのだ。
そこでふとおじさんの頭によぎったのはタコである。
海釣りをしていたおじさんは、タコを釣ることもあった。
小さくともタコの吸盤は強い。
釣り針から外そうとしたときに、ぎゅぎゅと巻きついてくるのだ。
これをうまくはがすコツは足の先から根元に向かってはがしていくことだ。
おじさんはにやりと唇の端をつり上げた。
シミを落とすことから、タコの吸盤をはがすイメージで魔力を練り上げる。
【女神の癒やし】
重ねて魔法をかける。
おじさんの魔力が遠大なる死毒の根っこの先端にも広がっていく。
ぽたりと額から顎を伝って汗が落ちる。
「これで……きれいさっぱりですの!」
おじさんの魔力が呪いの根をしっかりとはがした。
そして核を魔力で包んで圧縮していく。
女神の大いなる神威が、呪殺の邪神ゾユを上回ったのだ。
王妃の身体の中から、遠大なる死毒の影響が消えたことを確認する。
おじさんの膝から力が抜けた。
ペタンと女の子座りになったおじさんが宣言する。
「もう大丈夫ですわ!」
汗にまみれ、髪がおでこに張りついているおじさんであった。




