019 おじさんの小さな恩返し
本日二話更新の一話目です
二話目は19時に更新します
浴衣を着用して露天風呂を家族で満喫した。
祖父は壺湯の縁に膝をかけ、まるでハマったような体勢で大いびきをかく。
父も寝湯でうたた寝をしていたし、弟と妹ははしゃぎ回っていた。
祖母と母はほどほどに浸かり、四阿で休憩をしている。
どうせだからと使用人たちにも入ってもらっていた。
やはりおじさんの石けんとシャンプー・コンディショナーが大好評だ。
たっぷりと露天風呂を満喫したおじさんたちは、ログハウスでのんびりと過ごした。
おじさんが作ったレシピによる料理も振る舞われた。
特に妹はチョコレートフォンデュを前にして、テンションが振り切れてしまう。
「ふぉおおおお! ふぅおおおお!」
妹がなにかよくないものに変身しそうな勢いである。
両手にフォークを持ち、天に掲げるようなポーズをとった妹は愛らしかった。
食事も終わり、人心地つくと弟妹はすでに船をこぐようにこっくりと首を縦にふっている。
そんな二人を使用人に頼んで部屋まで運んでもらう。
「しかし、ここまでくると陛下にも話をとおした方がいいか」
おじさんも含めて大人だけになると、本邸から持ってきた酒を片手に祖父が口火を切った。
「そうねえ。これだけのものを体験したとなると令嬢の口にも戸は立てられないわね」
祖母が答えて家令を呼ぶ。
「アドロス、この時間だけど王城まで使いをだしてちょうだい。明日にでも甥……エスター陛下と会いたいと」
「畏まりました。ハリエット様の名義で申しこんでおいてよろしいでしょうか?」
「わしとの連名にしておいてくれ。あとリーも連れていく」
祖父の言葉に頭を下げてアドロスがさがった。
彼に任せておけばまちがいがない。
それだけ公爵家の面々に深く信用されているのだ。
「リーちゃん」
と呼ばれておじさんは母の方を向いた。
「ママ、このソファーが欲しいんだけど。とっても座り心地がいいわ」
「ヴェロニカ……」
父が気をつかったのだろう。
母をたしなめようとしたところをおじさんがとめた。
「かまいませんわ。お母様だけではなく、お父様も欲しいものがあれば仰ってくださいな。お祖父様もお祖母様もです」
「大丈夫なのかい?」
父の問いにおじさんはこくりと頷いた。
そして可憐な笑みを見せる。
「ここにあるものはわたくしが錬成術で作りましたの。予備もございますわ」
とおじさんは宝珠次元庫を開放する。
テーブルに椅子、ソファなどを空いたスペースに取りだしていく。
「他にもベッドも用意してありますわ。もしお気に召したのなら仰ってくださいな」
母と祖母は既に動いていた。
そして自分たちのお気に入りの調度品を選んでいく。
父と祖父も遠慮しながらも、やはりおじさんの作った調度品が欲しかったのだろう。
次々とこれがいいと声があがる。
その姿におじさんは少しだけ、恩返しできたような気がした。




