016 おじさん家族とのひとときを過ごす
特に大きなトラブルもなく野営訓練は終わった。
令嬢たちからのおじさんの評価は爆上がりである。
他方で王太子を含め、男子組の評価は爆下がりだった。
野営訓練で腕の見せどころとはいかなかったためだ。
女子組はとにかく思っていた。
“リー様、しゅごい”と。
野営訓練が終わったら三日間の休みに入る。
おじさんは王都にある公爵家の別邸に帰っていた。
そもそも王都生まれのおじさんにとっては、別邸こそが実家である。
領地の方には年に数回行くくらいだ。
それも学園に通うことになった今では、もっと回数が減るはずである。
おじさんにとって祖父母もまた大切な存在なのだ。
だから別邸に帰ったとき、祖父母も出迎えてくれたのには感動した。
感極まって、祖母の胸に飛びこんだほどである。
そのとき祖父は眉を下げて、悲しそうな顔をしていたがおじさんは気づかなかった。
「ねえさま、おかえりなさい!」
祖父母との挨拶を終えると、妹が飛びついてくる。
それをしっかりと抱きとめて、おじさんは頭をなでて愛でた。
公爵家最年少の愛らしい妹のことは目に入れても痛くないほどにかわいがっているおじさんである。
そんな様子を少し離れたところから見ている弟が寂しそうな顔をしていた。
おじさんは苦笑いしながら、弟にもおいでおいでと手招きする。
いそいそと近づいてくる弟のことも抱きしめて、頭をなでてやった。
にんまりと眩しい笑顔を見せる弟に満足するおじさんであった。
「リー、よく無事で帰ったね」
父親が姿をみせる。
母もその後ろで笑顔を見せていた。
「ただいま戻りました。お父様、お母様」
その夜、公爵家ではちょっとした祝宴が開かれていた。
おじさんが野営訓練から帰っただけなのに。
大げさなとは思うけれども、祝ってくれることが嬉しいおじさんであった。
おじさんは野営訓練であったことを家族に語る。
前世ではそんなことをした記憶はない。
笑顔でおじさんの話を聞いてくれる家族という存在。
それこそがおじさんの守るべきものだと、改めて認識したのである。
妹・母・祖母と一緒にお風呂に入る。
ここでもおじさんが野営訓練のために開発した石けんとシャンプー、リンスが大人気であった。
もともとこちらの世界では髪を洗うのにも石けんを使っていたのだ。
ただ香りはさほど良くない。
さらにはコンディショナーがなかったので、洗ったあとはキシキシした。
そこへおじさんが持ち前のチートを炸裂させたのだ。
前世の記憶にあったシャンプーとコンディショナーである。
液体状のよく泡立つシャンプーに、髪がサラサラになるコンディショナーだ。
加えて果物のような甘い香りがするのである。
おじさん以外の女性陣が一瞬で虜になってしまうのも無理はない。
祖母が中心になって、商会での販売も即決されてしまった。
そのためにはレシピも作らなければいけないが、おじさんにはお茶の子さいさいであった。
級友の令嬢たちからも求められている。
そんな話をすると、さもありなんという顔で祖母と母が頷いていた。
“ん?”
おじさんが寝ていると、いつの間にかベッドに妹が入りこんでいた。
かわいらしい寝顔を見せる妹のことを抱きしめながら、おじさんはゆっくりと目を閉じる。
家族という存在のありがたみをかみしめ、ゆっくりとおじさんは眠りに落ちていく。




