121 おじさんお米を手に入れる
アミラがカラセベド公爵家の一員となって数日後のことである。
この数日でアミラは公爵家になじんでしまった。
使用人たちも愛らしい新しい家族に大喜びである。
おじさんはと言うと、今日も今日とて薔薇乙女十字団の面々と勉強をして帰ってきた。
そこに侍女のひとりから“お探しものが見つかりました”と声がかかる。
はて、とおじさんは首をかしげた。
お探しものってなにか頼んでいたかな、と。
「お米というものが見つかりましたの」
ああ! とおじさんは手のひらを合わせた。
お米だ。
確か王妃様の件のあとで、探してみようかと思ったのである。
そのことを公爵家の料理人や、侍女たちに聞いたのだ。
しかし誰も知らなかった。
それをまさか探していてくれたとは。
「ありがとう! 厨房にありますの?」
とおじさんは厨房にむかう。
すると顔見知りの料理人見習いの子を見つけた。
「リーお嬢様! おかえりになられたのですね」
と挨拶をされるも、おじさんはちょうどいいとばかりにお米のことを聞く。
「ああ! 知ってます、厨房の素材庫の中に納品されてましたから」
料理人見習いが“案内しますね”と先を歩いていく。
「これです!」
麻袋の中に大量に入っていたのは紛うことないお米であった。
ただし親しみのある短粒種ではない。
長粒種の方であった。
長粒種か。
おじさんは思いだした。
一時期は記録的な冷夏による米騒動とかで、スーパーでも販売されていたものだ。
ただ前世ではあまり評判がよくなかった。
なぜなら短粒種と同じように調理ができないからである。
しかし前世では広い視点で見ると、短粒種よりも長粒種の方が生産されていたはずだ。
アジアを中心に広い地域で食べられていた食材である。
ちなみにおじさんの前世で評判が悪かったのは調理の仕方が広まっていないからだ。
家庭にある炊飯器で長粒種を炊いても美味しくならない。
なぜなら含まれるでんぷんの成分に違いがあるからだ。
なので調理についても、はじめちょろちょろ、なかぱっぱではダメなのである。
だから売れなかった。
そして投げ売りされていたものを安く買えて、ホクホクしていたのがおじさんだ。
麻袋の中に手を入れて、少し米をすくってみる。
前世でよく見た長粒種であった。
少し香りを嗅いでみると、ココナッツのような独特な香りもするではないか。
“これはとてもいいお米だ”と思うおじさんであった。
せっかくのなのだから、これは料理をしなければなるまい。
おじさんは固く誓った。
誰に誓ったのかは知らない。
では何を作るのかである。
おじさんは頭を捻った。
自分がよく食べていたのは炒飯である。
しかし、ここで炒飯というのは芸がない。
そこでおじさん的には美味しいと思うアレを作ることにした。
アジア風の炊き込みご飯として有名な海南鶏飯である。
実はおじさんも幾度かチャレンジしたことがあるのだ。
結婚していた頃に得意の料理として振るまったこともある。
結果は箸すらつけてもらえなかったが。
だが海南鶏飯は美味しいのだ。
特にこちらの世界では地鶏が美味い。
なら地鶏をまるごと使って作ったら美味しいに決まっている。
そう思って、おじさんは海南鶏飯を作ることに決めたのだ。




