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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1186/1194

1153 おじさんは一仕事を終えて遁走する


 その日、おじさんは王国中を駆け回ったと言えるだろう。

 王宮には地下城を作り、転移陣を設置する場を整えた。

 

 ラケーリヌの本家にも地下に転移陣を設置するための部屋を作る。

 まずはここを結んだ後に、カラセベド公爵家の領都にも転移した。

 

 領都でも転移陣を設置し、さらに王都へ。

 王都のタウンハウスにも。

 

 それを繰り返したわけである。

 

 結果、王宮と各公爵家のタウンハウス。

 そして領都の本邸へと行くための転移陣が完成した。

 

 加えて、おじさんはひとつ心遣いを見せていたのだ。

 温泉地とも各家から転移できるように、と。

 

「ふぅ……これで完了ですわね」


 おじさんが最後の転移陣を設置し終える。

 労力としてはさほどのことではない。

 

 が――色々と気を使う作業が多かった。

 

「お疲れさまです、お嬢様」


 侍女が労ってくれる。

 そんな侍女に微笑むおじさんであった。

 

 一仕事終えたという心地よさを感じていたのだ。

 

 で、今である。

 

 おじさんちの誇る温泉地。

 そこは王家と三公爵家が共有する形になった。

 

 ただし、運営の費用や人員の配置などは王家と三公爵家で分担する。

 ということになっていた。

 

 もちろん土地の権利などはおじさんが保有している。

 ただ実務面で、色々と融通し合うようにしたという話だ。

 

「リー、ご苦労じゃったのう」


 途中から参加したのは学園長だ。

 転移陣の設置と、サムディオ公爵家に関する色々な許可をするためである。

 

「まぁ……今後のためにもあった方が良いでしょうから」


「うむ。非常に助かるな」


 とは言え、だ。

 学園長は内心では、おじさんの功績にどう報いればいいのかを考えていた。

 

 またもや前人未踏の功績である。

 王国において各地方と中央がここまで緊密になったのは初めてのことだから。


「ふははは。師父よ、これで気兼ねなく温泉が楽しめるというもの」


 国王が鷹揚に笑っている。

 そう――今は王家と三公爵家の関係者で温泉地にいるのだ。


「ふん。よくもうちのリーちゃんをこき使ってくれたわね!」


 母親が国王と学園長を相手にツッコむ。

 王国広しと言えど、そんなことができるのはおじさんと母親だけだろう。

 

「そう言うな、ヴェロニカ。リーには報いてみせる」


 若干、困りながら言う学園長だ。

 

「大公の地位でもなんでもな」


「……そんなもの欲しくないのですけど」


 おじさん爵位とかは欲しくない。

 と言うか、受け取ったとしてもどうしていいかわからないのだ。

 中の人は小市民だから。

 

「ま、良いではないか。今日のところは楽しもうぞ」


 かかか、と笑う国王であった。

 

 王家と三公爵家。

 建国王の時代から、家族ぐるみの付き合いである。

 

 実際に婚姻関係を結んだ人間もいれば、養子に入るということもあった。

 つまりは親戚のようなものだ。

 

 それが一堂に会したわけである。


「わたくしは……少し疲れたので下がらせてもらいますわね」


 なんだか関係者が多い。

 そのことに気疲れしたのだ。

 

 褒賞だのなんだのという話も苦手だったりする。

 だから――おじさんは撤退を選択したのだ。

 

「うむ。リー、ご苦労であった」


 国王が頭を下げる。

 それだけのことをしたと言えるだろう。

 

「では、失礼しますわね」


 と侍女とともに転移するおじさんであった。

 

 王家と三公爵家の関係者が集まる。

 これまでは物理的な距離の問題があった。

 だが、これで距離がなくなる。

 

 その件における利点を皆で相談しておく必要があった。

 大人たちは大人たちでやることがあるのだ。

 

 一方でおじさんである。

 自室に戻って、ぼふっと寝台に寝転がった。

 

 ぎゅうと枕のひとつを抱きしめる。

 

「ふぅ……」


 大きく息を吐く。

 そんなおじさんの頭を侍女が優しくなでる。

 お姉ちゃんだから。

 

「本当にお疲れさまでした」


「これで王国の距離が近くなったとは思います」


「と言うかですね、学園長とか転移陣を設置できるようになればいいのですわ」


 そうすれば、おじさんの負担を減らせるというものだ。

 もちろん大人たちもがんばっている。

 

 おじさんの祖母と母親は設置できるのだ。

 ただ、精度と早さの面では及ばない。

 あくまでも設置できるだけだ。

 

「ま、これからですわね。ラケーリヌではヴァネッサお祖母様が、先の話だとルルエラが使えるようにはなるでしょう」


 なるほど、と頷く侍女だ。

 

「サムディオだと誰でしょう?」


「学園長とキルスティ先輩ですわね」


 ちなみにと続けるおじさんだ。


「うちの場合は、お母様とお祖母様は既に設置できますし、ソニアもできるようになるでしょう」


「どこも将来有望ですわね」


「ま、相当にがんばってもらわねばいけないでしょうが……意外とソニアがいちばん早いかもしれませんわね」


 ふふと笑うおじさんだ。

 

「お茶でも淹れましょう」


 侍女が気を利かせる。

 

「今日はいつもの香り茶がいいですわ」


「畏まりました」


 しばしの間、のんびりするおじさんと侍女であった。

 

「うぇいうぇいうぇーい!」


 ただいまんもーすと言う暢気な声が響いてくる。

 蛮族が帰ってきたのだ。

 ドタドタと足音が聞こえる。

 

「リー! いるー?」


 ゴンゴンとドアが叩かれた。

 ノックというにはあまりにも乱暴な叩き方である。

 

「まったく。こういうところも教えないといけませんわね」


 やれやれと侍女が対応する。

 

「げええ! お、お師匠様!」


「今日はお嬢様が少しお疲れですからお静かに」


「むい! お腹痛いの?」


 部屋の中をのぞき見るケルシーだ。

 

「べつにお腹は痛くありませんわ」


「そっか。よかった」


 にぱっと笑って椅子に座るケルシーだ。

 

「んとね、後でエーリカたちもくるって」


「ほおん……なにかありましたか?」


「わかんにゃい!」


 なんだか癒やされるおじさんだ。

 蛮族たちには気を使わなくていいから。

 

 くだらない会話をケルシーとする。

 侍女が時折くわわって、とても楽しい時間だ。

 

 そこへ聖女たちが到着した。

 と言うか、学生会の面々が揃っている。

 

「リー様、押しかけてしまい申し訳ございません」


 いつものサロンにて、アルベルタ嬢が代表して声をかける。

 

「かまいません。皆の顔を見て元気がでました」


 きゃっと女子組から声があがった。


 比喩的な話ではない。

 おじさんの中の人は小市民だ。

 

 なのでお友だちの顔を見られて満足なのである。

 というか、今日は偉い人たちと会いすぎたから。

 

「さて、ビブリオバトルの件はどうなりましたか?」


 書類を提出していたのだから。

 開催が近いだろう。

 

「はい。とりあえず三日後から告知を始める予定です」


「あら? 思っていたよりも早いですわね」


「それが……」


 と苦笑するアルベルタ嬢だ。


「実は講師の皆さんも面白そうだから参加したい、と」


 それもそうかと思うおじさんである。

 だって講師になるくらいには勉強ができる人たちなのだ。

 故に紹介したい本の一冊や二冊はあるのだろう。

 

「バーマン先生とも相談しまして……結果、学年ごとの開催、加えて特別編として講師編も開催することに」


 なるほど。

 日程を詰めるわけである。

 恐らく毎週開催だとしても四週もかかってしまう。

 

「まぁ……本好きは多いですものね」


 そんな話をしていると、ドアが開く。

 顔を見せたのはクロリンダだ。


「あの……申し訳ありませんが、私たちも参加させていただいてもよろしいでしょうか?」


「ええ……かまいませんわ。皆、こちらが聖樹国から留学する予定のククノですわ。クロリンダのことは知っていますわよね?」


 おお、と声があがった。

 ククノが恥ずかしそうにしながら自己紹介をする。

 

「皆さん、初めまして。ククノと言います。よろしくお願いいたします」


「おー! 蛮族三号ね! よろしく!」


 聖女が真っ先に声をかけた。

 

「三号! ククク」


 ケルシーが笑っている。

 なんのことやらわからないククノが不思議そうに首をかしげていた。


「エーリカ、ククノは蛮族じゃありませんわよ?」


「うっそだー! だってエルフは蛮族だって相場が決まってるじゃない!」


 と、ケルシーを見る聖女だ。

 

「だ、だれが蛮族だー! 戦争かー」


 しゅしゅと拳をくりだすケルシー。


「エーリカ、それは風評被害というものですわ。うちだってエーリカが代表して留学していれば、王国人は蛮族だーと言われるのと同じです」


「だ、誰が蛮族だー!」


 どうやら聖女とケルシーは通じ合っているようだ。

 

「ま、蛮族かどうかはさておきです。ククノは学園に通いますの?」


「う……実は学生としてではなく、講師としてとお誘いいただいています」


「ほおん……講師としてですか」


 ちょっと驚くおじさんだ。


「よろしいでしょうか」


 と、手を挙げるクロリンダだ。

 

「ククノは王国でいう学園を卒業している身ですし、実は聖樹国の歴史を専門に研究していまして」


「それはいいですわ!」


 ジリヤ嬢である。

 彼女は薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)きっての文学少女だから。

 

「ケルシーから話を聞こうと思っても、ぜんぜん聞けなかったのですもの」


「なんだとー!」


 はいはい、とケルシーの腕を引くおじさんだ。

 すぐに立ち上がろうとするから。

 とりあえず、妹にするように後ろからぎゅっとハグしたのだ。

 

「び、ビッグバンが当たってる!」


 ケルシーの言葉に、きぃいいいとなる狂信者の会であった。

 聖女も羨ましいのか、立ち上がって文句を言う。

 

 そんな様子を見て、なんだか面食らうククノだ。

 人のことを蛮族とか言ってる場合ではないのでは、と。


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