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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1173/1194

1140 おじさんラケーリヌ本家を訪れる


 王妃の部屋から自宅へと転移したおじさんである。

 当然だが、ククノも連れて、だ。

 

「お母様はどちらに?」


 出会った侍女に尋ねるおじさんだ。

 

「お、お嬢様? そちらの方は?」


「ああ――こちらは聖樹国からのお客様でククノと言います。少しの間になりますが、うちに逗留する予定ですからお願いしますわね」


「畏まりました。奥様は先ほど自室で休まれる、と」


「……そうですか」


 と、ククノを侍女に預ける。

 そのまま母親の自室に向かうおじさんだ。

 

「お母様、失礼しますわね」


 母親は自室で寛ぎながら読書をしていた。

 ぱたん、と本を閉じておじさんを見る。


「あら? リーちゃん、もう帰ってきたの?」


 夕方くらいまでは帰ってこないと思っていた母親である。

 それが今は昼前くらいの時間だ。

 なにかあったのかと察する。

 

「それが……」


 と、ククノのことをかんたんに話すおじさんだ。

 

「なるほど。そういうこと」


「それともう一つ。先ほど王妃様のところへ行ってきたのですが、お母様のお父様がお倒れになったと報せがあったそうですわ。直にうちにも報せがくるでしょう」


「ほおん……お父様が?」


 すぅと目を細める母親だ。


「王妃様も詳しい事情はわからないようですので」


「わかった。私も行くわ」


「お母様?」


「だって、リーちゃんはラケーリヌに行ったことないでしょう?」


 確かにその通りである。

 一応、霊山ライグァタムはラケーリヌの領内にある。

 あと、セロシエ嬢の実家があるロクロスも該当するだろう。

 

 逆に言えば、それ以外の地域には行ったことがない。

 

「お姉さまは最近、動くのがしんどくなってきてるって言ってたしね。私がいれば問題ないわよ」


「ですわね」


「それとお兄様のところには行ってみたのかしら?」


 宰相のことである。

 首を横に振るおじさんだ。

 

「王妃様にお話を伺って、すぐに戻ってまいりましたので」


 言われてみれば、と気づくおじさんだ。

 なんなら報せにきた使者は宰相のところにいるのだろう。

 その後で、うちにくる予定のはずだ。


「いいでしょう。リーちゃん、王城へ。いちおうお兄さまに話をとおしてからにしておきます」


「承知しました。お母様、服はそのままでよろしいですか?」


 なんとなく口にしてしまうおじさんだ。


「ん~ちょっと地味かしら?」


 地味というほどではない。

 ただ、それはおじさんが作った部屋着だったから。

 そのままだと不味いかなと思ったのだ。


「お母様、そのままで」


 おじさんが魔法を使う。

 換装の魔法だ。

 

 おじさんの宝珠次元庫には、様々なタイプのドレスが収納されている。

 だいたい自分で作ったものだ。

 

 今回選択したのは、コクーンタイプのドレスである。

 ワンピースタイプのもので、スカートの裾が広がらず、すぼまっているものだ。

 

 色は鮮烈な青。

 王国では上位の貴族にしか許されない色だ。

 

 肩から腕にかけてはレースになっている。

 腕の袖も広がっているようなデザインだ。

 

 どこかで見かけたドレスのデザインを再現したのだ。

 王国風に。

 

「あら、これはいいわね」


 ゆったりとしているのでお腹も目立たない。

 ただ、おじさんよりも少し背の高い母親なので、少し丈を魔法で直す。

 このくらいなら手間ではない。

 

「お外にでると寒いので、こちらを」


 真っ白な毛皮のコートだ。

 母親が着ると、とってもゴージャスになる。

 正しくセレブだ。

 

 いや、実際にそうなのだけど。

 

「ミーマイカ、サイラカーヤ、お母様の御髪(おぐし)を整えてくださいな」


 はい、と侍女長とおじさんの侍女が動く。

 

「リーちゃん?」


「わたくしが王城へ行って宰相閣下にお伝えしてきますので。お母様は準備を」


「……わかったわ」


 では、とおじさんは転移をするのであった。

 

 再びの王城である。

 転移したのは父親の居場所だ。

 父親の魔力は馴染みがあって感知しやすいから。

 

「お父様!」


「ん? リーちゃん?」


 そこは国王の執務室であった。

 宰相に父親、国王が揃っている。

 

「まったく、余の執務室にまで転移が自由にできるとは」


 少し呆れる国王だ。

 セキュリティ的には大問題である。

 が、こんなことができるのもおじさんのみだ。

 

 おじさんなら間違っても国王に手をかけるようなことなどしない。

 

「うちの父親の件だね。さっきアヴリルからも話を聞いたところだよ」


 宰相が言う。

 それに頷くおじさんだ。

 

「お母様とわたくしで様子をうかがってきます。宰相閣下にも話を通しておくように、とのご指示ですわ」


「……なるほど。ヴェロニカとリーの二人なら任せられるね」


 思わずといった形で、苦笑する宰相だ。

 

「よろしいですわね?」


「ああ、任せる。うちの父親のことをよろしく頼むよ」


「任せられました。お父様、そういうことですので」


「無茶はしちゃダメだよ、リーちゃん」


 ぎゅうとおじさんをハグする父親であった。

 

「では、行ってきますわね!」


 再び姿を消すおじさん。

 

「ま、リーに任せておけば問題なかろう」


 国王が続ける。

 

「なにせ死病であった師父までも治したのだから」


「詳細はよくわかりませんけど」


 宰相にも報告はあった。

 しかし、その内容はとても曖昧なものだったのだ。

 

 ただ、倒れた、と。

 

「お母様、準備は整いまして?」


 母親の自室に戻ってくるおじさんだ。

 ばっちり整った母親を見る。

 

 なにかしら魔道具などの用意もしていたようだ。

 

「ええ……行きましょうか、リーちゃん」


 では、とトリスメギストスを召喚するおじさんだ。

 

「トリちゃん! ラケーリヌ家の領都を地図で示してくださいな」


『うむ。既にランニコールが移動しておる。むろん、我からの指示でな!』


 ぬわはははと哄笑するトリスメギストスだ。

 

「ああ――なるほど。確かにランニコールの魔力が、ここですわね!」


 ぱちんと指を鳴らす。

 おじさんと母親。

 侍女長と侍女。

 トリスメギストスの姿が消える。

 

 おじさんたちが転移したのは町中であった。

 

 恐らくは町の中心であろう。

 巨大な鐘楼の側であった。

 

「ランニコール。あなたも執事として同行を」


 おじさんの指示に頷く使い魔だ。

 

「お母様、お屋敷はどこでしょう?」


 と、母親は鐘楼からの景色に目を奪われていた。

 懐かしいという感慨。

 それに加えて、感動であろうか。

 

 いつかは登ってみたいと思っていた場所だったから。

 

「あまり代わり映えはしないのね」


 スッと指を伸ばす母親だ。

 鐘楼からは南側に少し離れた場所のひときわ大きなお屋敷を指す。

 

「あそこね」


 では、と今度は短距離転移で移動するおじさんであった。

 ラケーリヌ本家、正門の前に。

 

「げええ!? え? あ!?」


 腰を抜かす門衛である。

 いきなり貴人の集団が現れたのだから。

 

「あなた……見かけたことがあるわね」


「いいぃぃいい!? も、もしやヴェロニカお嬢様でしょうか!」


 微笑む母親である。

 お嬢様とか久しぶりに言われたから。

 ただ、咎めるようなことはしない。

 

「は! 光栄であります! お通りくださいませ! すぐに伝えてまいりますので」


 と、踵を返して詰め所へと走る。

 そこからさらに走って行く門衛たち。

 

 音もなく立派な正門が開かれる。

 

「懐かしいわね……」


 ラケーリヌ本家の前庭を通りながら、母親が言う。

 

「きれいなお庭ですわね」


 と、おじさんが微笑む。

 

 その頃、ラケーリヌ本家の家令は門衛から話を聞いていた。

 

「なにいいい! ヴェロニカ様がお戻りになったと!?」


 ヒクヒクと頬を引き攣らせる家令だ。


「私はお出迎えの準備を整える! 少し時間を稼いできてくれ!」


 無茶ぶりをされて、白目をむきかける門衛であった。


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