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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1102 おじさんの知らないところでの金級冒険者たち


「……まったく面倒な」


 深い息を吐きながら、コルリンダは旅路を急いでいた。

 港町イトパルサを拠点とする金級の冒険者である。

 緑の古馬という有名なパーティーのメンバーだ。

 

 彼女は聖樹国の出身。

 すなわちエルフだ。

 

 長身でスレンダー。

 そして――笹穂型の耳を持つ美人さんである。

 

 そんな美人さんの横にいるのは相棒のペゾルドだ。

 いつもはムダに高いテンションがすっかりなりを潜めている。

 

「いいじゃねえかよ……」


 おれぁ……とペゾルドが口を開く。

 

「イトパルサを離れられて満足さ……へへへ」


 歪んだ笑みを浮かべるペゾルドだ。

 

「気持ち悪いわね。なんて顔してるのよ。そんなだからフラれるのよ、バカ!」


「言うなあああ! それ言っちゃダメなやつうう!」


 うっうっと涙目になるペゾルドである。

 彼は娼館に勤めるストロベリーちゃんにお熱だったのだ。

 

 艶のある暗赤色の髪の女性である。

 二人は結婚寸前までいっていた、とはペゾルドの言だ。

 

 コルリンダはきっと嘘だと思っているが……。

 見栄を張っただけ、と喝破しているのだ。


 一般的に金級の冒険者ともなるとモテる。

 なにせ一流の冒険者と言えるからだ。

 

 それなりに資産もあるし、仮に冒険者を引退しても引く手数多である。

 例えば町の衛兵なんてのは、よくある話だ。

 

 他にも村の自警団を教導したり、なんだったら貴族家に仕えることもある。

 ちなみに、おじさんちの侍女がそのパターンだ。

 まぁおじさんとの相性もあったが。

 

「ストロベリーちゃん! なんでだよううう!」


 ペゾルドが急に叫びだす。

 なんだか情緒不安定だ。

 

「なんで、おれの財布取って逃げたんだよううう!」


「財布って……」


 思っていたよりも酷い話っぽい。

 そう思ったコルリンダは、口を噤んだ。


 いつものように軽口をきくことはできない。

 なにせ、ペゾルドの地雷を踏んでしまったのだから。

 

「二人の将来のために貯金しようねって言ったじゃないかああ」


「ちくしょうううう! なにが真実の愛だあああ!」


 うおおお、とペゾルドが走りだす。

 なにか良くないものでも思いだしたのかもしれない。

 

「死ねおらああああ! 魔物は殲滅だああ!」


 ちょっと先にいたオークに斬りつけている。

 ごろん、と首が転がった。

 オークの。

 

「弱すぎるんだろうがよおおううう」


 怒っているのか。

 いや、ちがう。

 

 ペゾルドは涙を流していた。

 泣きながら怒っていたのだ。

 

 ストロベリーちゃんに、ではない。

 お人好しな自分自身にだ。

 

「うっうっ……弟だって信じてたのにいい! 弟とぶちゅうってキスするかよおお!」


 ストロベリーちゃんはやり手なのだろう。

 いただき女子だ。

 

「その……ストロベリーちゃんっていくつの子?」


「うっうっ……今年で二十三って言ってたけど?」


 うさんくせーと思うコルリンダだ。

 だが、そのことには触れずに他のことを聞く。


「ペゾルドは?」


「三十六」


 ふっと笑うコルリンダだ。

 年齢だけでどうこういう気はない。

 そういうカップルだっているのだから。

 

 だけど――さすがに純真が過ぎるだろう。

 

「わらうな。人の恋路をわらうな」


「いや、そうじゃない。ペゾルド、うん。まぁがんばれ!」


 ぽんぽんと相棒の肩を叩くコルリンダであった。


「うっせ、うっせ、うっせ。万年処女のお前に言われたくねえわ!」


「誰が万年処女だ、ごるぁ! 男なんてなぁ……男なんてなぁ星の数ほどいるんだよ!」


「訳の分からないことを言わないでくださーい!」


 クスクスと笑う。

 そんな相棒の姿に火がつくコルリンダだ。

 

「戦争か、戦争するか! おおん!?」


「うっせー! ばーかばーか!」


 逃げだすペゾルド。

 それを無言で追いかけるコルリンダ。

 

 しばらく二人は道中で追いかけっこをした。

 まぁ仲良くケンカした訳である。

 

 二人は道から外れた木の根を枕に、空を見上げていた。

 冬の空は高く、青い。

 

 息を荒げながら、ペゾルドが言う。

 

「で、なにしに王都に行くんだった?」


「何回も説明したじゃないか」


「……すまん。ストロベリーちゃんのことで頭がいっぱいだった」


 素直に謝るペゾルド。

 コルリンダは半ば呆れながら言う。


「今回は同族の依頼だよ。って言ってもただ働きだけどな」


「え? ええ!?」


 冒険者への依頼は基本的に金銭をもってあがなう。

 が――今回は特別だ。

 

「今年の春からまた学園に通う同族がいるんだよ。うちとは氏族はちがうが、知らない仲じゃないから」


「へえ……そうなのか」


「私の妹と友だちなんだよ。で、その娘から頼まれたのさ。ちょっと王都にいるカラセベド公爵家のお嬢様とつなぎをとりたいってね」


「げええ! あのお嬢様と!」


 ペゾルドがハデに驚く。

 なにせ公爵家のお嬢様なのだから。

 ペゾルド自身は対校戦にて見た限りだが、かなりの実力者だった。

 

「ま、屋敷には私だけで行くよ」


「え? オレも連れてってくれよ。妹が働いてるんだろ? なんとかねじ込めない?」


 相棒をじっと見るコルリンダだ。

 その意図はどこにあるのか、と。

 

「い、いやあ……そ、その公爵家の侍女さんと知り合えたらなぁって」


 もう失恋の傷心からは立ち直ったのか。

 それはそれでいいとは思う。

 

 あのままだと辛気くさいったらないのだから。


「バカ。公爵家で働くってことは、基本的に貴族のお嬢さんじゃないの? しかもとびきり優秀な」


「う……」


 コルリンダの言葉に詰まってしまう。

 要はお前が相手にされるのか、という話である。

 

「い、いや。オレだって金級の冒険者だし……」


 語尾に従って、声が小さくなっていく。

 そんな相棒の様子を見て、コルリンダは笑った。

 

「まぁ相手に嫌がられない範囲なら、ね」


「ほんとか!?」


「ただ、私の迷惑になるようなら、次からは連れて行かないから」


「お、おう! まかせとけって」


 先ほどとは打って変わって上機嫌になるペゾルドである。

 

「さ、そうと決まれば王都へ行こうぜ」


 先に立ち上がる。

 そして、コルリンダに手を差し伸べた。

 その手をを握って、コルリンダも立ち上がる。

 

「しっかしよう、お前の話だとエルフってのは引きこもりだって話だったけど、色々と変わるもんだな」


 二人は並んで歩く。

 冒険者の仕事は歩くことだ。


「まぁ……あんまり詳しいことは話せないけどね。やっぱり御子……いや、あのお嬢様の影響が大きいんだろうね」


「ほおん……リー様って言ったか」


「ひとつだけ言っておくけど、あの御方には絶対に懸想するんじゃないよ?」


「ばっか、お前。オレをいくつだと思ってんのさ? あのお嬢様ってまだ十四か十五くらいだろ? いくらとんでもない美人だっていっても、そんなガキを相手にできるかっての」


「ガキとか言うな、バカ」


 というか、ストロベリーちゃんも若い範疇だろうに。

 二十三というのが本当なら。


「ま、オレの相手をするには十年早いわな」


 かかかと笑うペゾルドだ。

 

「王都に入ってからは絶対に言うんじゃないよ。どこで誰が聞いてるかわからないんだからね!」


「わーってる、わーってる」


 ぬははは、と上機嫌に笑うペゾルドだ。

 だが――次の瞬間。

 

 ペゾルドの姿が消えた。

 

 ふっと姿を消したのだ。

 同時に、ぬわあああと声があがる。

 

 地面の下から。

 見れば、落とし穴にはまっているペゾルドだ。

 

 全身がすっぽりと隠れるくらいの落とし穴。

 それがこんな街道に?

 

「助けてくれよー」


 周囲を警戒するコルリンダだ。

 だが、人の気配はない。

 

「コルリンダってばー」


「うるさい、ちょっと黙って」


 大きく息を吐いて、警戒をとくコルリンダである。

 

「襲撃じゃなさそう。助けてあげるから、ちょっと待ってなさい」


 そんな冒険者たちの頭上。

 見下ろすような位置で一匹の蝿がいた。


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