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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1087 おじさん秘匿通信概論の講義をする


 明けて翌日のことである。

 いつものルーティンで侍女がニコニコしていたのが印象的だった。

 昨日の対戦で手応えを感じていたのだろう。

 

 おじさんはといえば、のほほんとしていた。

 ただ、おじさんと侍女のハイレベルな運動についていけない女性騎士たち。

 

 体力自慢のオリツも膝をついて息を荒くするくらいだ。

 

「さて、今日はこのくらいにしておきましょう」


 おじさんが清浄化をまとめて使う。

 そして――朝食の席へと向かうのだ。

 

「むほほほ」

 

 食堂ではケルシーが奇妙な声をあげていた。

 なまずを使ったバーガーを食べていたのである。

 

 ちなみにおじさんは、サラダと肉まんを食べるだけでいい。

 もうお昼までお腹が空かないのだから。

 

「ケルシー、その辺りにしとかないとまたお腹がぽっこりしますわよ」


「大丈夫! エルフ、嘘つかない!」


 堂々と嘘をつくケルシーであった。

 

 

 本日もおじさんは講師を任されている。

 今回の講義は国語だ。

 

 と言っても、王国では詩を作ったり、文章を書いたりすることが多い。

 貴族としての読み書きを習う訳である。

 あと暗号文とか。

 

「本日の秘匿通信概論ですが、暗号の取り扱いについての講義ですわね」


 王国でも基本的に情報漏洩を考えて、貴族間のやりとりでも暗号が使われる。

 ただし、政治や軍務で使われるような実践的な暗号は上級生になってから。

 

 一年生の間は基礎素養についての講義となる。

 

「今回は暗号表の扱いについてなのですが……」


 おじさんはケルシーを見る。

 

「ケルシー、暗号表はなにかわかりますか?」


 はい、と元気よく返事をするケルシーだ。

 

「わかりません!」


 素直でよろしい。

 そんなことを思うおじさんだ。

 

「かんたんに説明しますわね。暗号にも幾つか種類があるのですが、換字式暗号で使われます。王国ではこれが一般的ですわね」


「か、かえじ?」


 この講義も試験範囲だったのだが……。

 もうすっかり忘れているのだろう。


「ん~ものすごく基礎的な暗号だと、三文字ずらして書くというものですわね。例えば、“A”という文字だと、三つずらして“D”になります」


「なるほど……」


 うんうんと頷いているケルシーだ。

 その隣で聖女も頷いていた。

 

「では、少し復習をしておきましょうか。本日の朝食で何を食べたのか。今言った暗号で書いてくださいな。隣同士で交換して、確認してくださいな」


 蛮族たち以外の生徒は一斉に筆を動かす。

 このクラスは男子も含めて、全員がガラスペンを使っている。

 おじさんが宣伝になるからと持たせたのだ。

 

「ちょっと、ケルシー! あんた、肉まん食べてきたの?」


 聖女が言う。

 

「三つ食べた! あとカレーまんも三つ食べた! んと、お魚のハンバーガーも食べた!」


 にこにこするケルシーだ。

 美味しかったーと思いだしている。

 

「ズルい! アタシも食べたいのに!」


 聖女が立ち上がる。

 さすがに昨日は帰らされたのだ。

 養家に。

 

「で、エーリカはなに食べたのさ?」


「そこに書いてあるでしょ? 読みなさいよ」


「ん? これ字がまちがってて読めないもん」


 はぁとため息をつく聖女だ。


「そういや、こっちのも暗号で書いてないわね」


「リー! どうする? 二号はぜんっぜんわかってないわよ!」


 聖女に呼ばれて、おじさんも確認してみる。


「そうですわね。ケルシーは論外ですが、エーリカも間違ってますわ」


「うそだー!」


「ほら、この三文字目。ずらす文字が間違ってますわ。これだと二つずらしになります」


「げえええ!」


「というか……エーリカは試験を受けなかったですものね。ん~この際ですから、お勉強しておきましょう。特にエーリカは軍役に就くこともありますし、人任せにしていられないことも出てきますわよ」


「……ぐぬぬ」


「今日の学生会の会合で行ないましょう。わたくしが教えますから」


 他の者はどうですか? できましたか?

 おじさんの質問に頷く学生たち。

 

「リー様! 何人か怪しいですわ!」


 ニュクス嬢が告げる。

 

「では、今日の学生会で特別講義をしましょう。講義を先に進めますわね」


 おじさんは教壇に戻る。

 

「このずらして書くというのはものすごく有名ですからね。もはや暗号としては使いにくいのです」


 そうだーそうだーと蛮族たちが声をあげる。


「なので、よりわかりにくくするために、文字を数字や記号に置き換えたりするのですわ。ただ複雑になればなるほど覚えるのが難しくなりますわよね?」


 そうだーそうだーと蛮族たちが同意する。


「ですから、ケルシーやエーリカのように間違ってしまわないように、対応する文字や数字、記号などを記した暗号表を作るのですわ。ですが、ここでひとつ大きな問題が起きてしまいますわよね?」


「ど、どどど、どういうことだってばよ!」


 ケルシーに微笑んでみせるおじさんだ。

 

「この暗号表が盗まれてしまったとしたらどうします?」


「うーん……バレる?」


 そのとおりですわ、とお菓子を転移させるおじさんだ。

 ケルシーがうひょうと喜ぶ。

 

「ですから、暗号表は大切にしないといけません。無くしてしまうのもダメですし、ずっと同じものを使い続けるのもいけません」


 はい! と聖女が手を挙げる。

 

「バレるから!」


 ケルシーに乗っかった聖女だ。

 それでもおじさんはお菓子を転移させる。

 講義の邪魔をされるよりはよほどマシだ。

 

「エーリカの言うとおりですわね。せっかく苦労して暗号文を書いたとしても、暗号表が敵の手に渡ってしまうと何の意味もなくなります。あるいは暗号を解読されてしまっても同じですわね」


 ふんふんと頷く蛮族たちだ。

 暗号表の重要性を理解したのだろう。

 

「では、しっかり管理するためにはどうしたらいいのでしょう?」


 おじさんはぐるりと教室をぐるりと見渡す。

 

「番人をおく!」


 聖女が言う。

 

「それではここに暗号表がありますと言っているようなものですわね」


「隠す!」


 実にシンプルな答えを言うケルシーだ。

 

「正解です。保管場所を考えておく必要がありますわね」


「暗号表の場所を知る者も管理しておく必要があるよね」


 セロシエ嬢が言う。

 暗号表を見る権限を持つ者の管理のことだ。

 ここを明確にしておく必要があるだろう。

 

 情報の重要度によっては、当主しか読めない。

 あるいは家令は読めるなどの階級によっても制限すべきだ。

 

「暗号表を更新する間隔を決めておくのも大事ですわ」


 ニュクス嬢が言う。

 

「あとは……改ざん防止のために開封するときや、回収するときは必ず複数名で確認することでしょうか」


 アルベルタ嬢も正解する。

 

「いいですわね。皆の言うとおりです。ちなみに! 更新するのが面倒だということが原因で、滅んでしまった町がありますのよ?」


 おじさんの言葉に目をくわっと見開く蛮族一号と二号だ。

 

「今、ここにめんどくさーいと思っていた者がいますわね。二名ほど」


「だ、だれだー! そんなことを思うのは!」


 ケルシーが立ち上がって叫んだ。


「そうよ、そうよ! ははーん、さてはパティね?」


 聖女が罪をなすりつけようとする。

 だが――。

 

「エーリカ、それは無理があるのです」


「な、ななな、なんでさー?」


「今日から暗号文を使った日記のやりとりをするです。暗号の対応表は毎日更新するのです!」


「え~めんどくさーい!」


「語るに落ちるとはこのことなのです!」


「だ、だましたなー!」


 教室が爆笑に包まれるのであった。


誤字報告いつもありがとうございます。

助かります。

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