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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1072 おじさんは自分も楽しんで講義をする


 教室に帰ったおじさんたち。

 それでもまだ薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)たちは、ぼうっとしていた。

 いや男子生徒たちも同じである。

 

 おじさんと蛮族たち以外は余韻に浸っていたのだ。

 

「ん~おまえらなー」


 男性講師の声も耳に入らないくらいだ。

 特に酷いのは狂信者の会である。

 

 三人がそれぞれ手を組み、祈りを捧げるかのようだ。

 ぶつぶつ譫言(うわごと)を呟きながら。


「星がぶわぁってなったもんに。あれがスゴかった!」


「わかってるじゃないの! でも、あの森もポイント高かったわよ」


 うんうんと頷くケルシーだ。

 

「あーもう、わかったからー」


 男性講師も苦笑いだ。

 あれだけの幻影魔法は見たことがない。

 

「ってことでだー!」


 珍しく声を張る男性講師。

 おじさんを手招きして、教壇の横に立たせる。

 

「もう知ってると思うがー、今学期から臨時講師としての立場のー」


 おじさんのフルネームを呼ぶ男性講師だ。

 

「よろしくお願いしますわね」


 にこりと微笑むおじさんだ。

 ガタッと音を鳴らして、全員が席を立った。

 

「こちらこそよろしくお願いいたします! リー先生!」


 ん~と思うおじさんだ。

 リー先生とかまたもやおかしな呼称がついてしまったから。

 

「後は頼んだー」


 と、そそくさと教室を出て行く男性講師だ。

 他にも仕事を抱えているのだろうか。

 

 初日からおじさんの出番ということだ。

 

「さて、任されてしまいましたが……どうしましょうか」


 さすがに初日からとは思わなかったおじさんである。

 つまり、ノープランだ。

 

「なにかやりたいことがある人はいますか?」


 はい、と手があがった。

 もちろん、こういうときに頼りになるのは蛮族である。

 

「はい、ケルシー、どうぞ」


「んとね! 魔法がいい! さっきの! ぶわぁってなったもんに!」


 身振り手振りを交えながら話すケルシーだ。

 興奮冷めやらぬというところらしい。

 

 はい、とまたもや蛮族が挙手をする。

 今度は一号だ。

 

「今日はリーんちでお茶会がしたい!」


「放課後ならかまいませんわよ」


「いよっしゃああ! 今日は美味しいもの食べるもんね!」


 というか、最近はおじさんちに入り浸りじゃないか。

 神殿のお偉いさんに怒られるくらいには。

 

「ズルいですわ! エーリカばっかり!」


 アルベルタ嬢が叫んだ。

 今回ばかりは狂信者の会のみならず、他の面々も頷いている。


「皆でうちにいらっしゃいな」


 おじさんは苦笑するしかなかった。

 

「他に意見はありませんか?」


 さっさと話題を変えてしまうに限る。

 

「リー様、とりあえず予定どおりに講義といきませんか? 座学は王国史と魔法陣学の二つです。午後からは実技となっています」


 セロシエ嬢が挙手をして言う。

 

「そうしましょうか。では、王国史から始めます」


 おじさんは学園に入る前に、かなり詳しい事情を教えられている。

 リューベンエルラッハ・ツクマーという変人に。

 

 おじさんと同じく頭のネジが外れた学者さんだ。

 その薫陶を受けたおじさんは、もはや学者レベルで詳しい。

 

 すらすらと王国史について解説していく。

 ただ、おじさんは脇の知識にも詳しいのだ。

 

 なので、ただ歴史の流れをたどっていくだけではない講義となる。

 その時代における雑学やら何らも交えていくのだ。

 

 しかも個人間で取り交わされた書簡などの話にも詳しい。

 つまり、歴史に興味がない蛮族たちにも面白い講義になったのだ。

 

「ほええ……それってつまり嫉妬ってこと?」


「ですわね。自分の愛した女性が他の男に奪われてしまった。だからこそ取り戻そうとして軍を動かしたというのが書簡に書かれています」


「NTR! NTR!」


 聖女が腕を振って叫ぶ。

 ケルシーもそれに続いた。

 

「というわけで、ロマニ辺境伯の乱というものが起こったわけですね」


 おじさんは華麗に蛮族たちの戯れ言をスルーした。

 

「ま、この辺りは試験には出ないでしょうが、歴史といっても人の営みが紡がれたもの。ただ反乱を起こしたというわけではないのです」


「リー様、ロマニ辺境伯の乱における、ラーダ平原の戦いについても解説していただけますか?」


 セロシエ嬢が目を輝かせている。

 彼女もまた色々と詳しいタイプだ。

 

「ラーダ平原の戦いですか……なるほど」


 にやりと笑うおじさんだ。

 それは異世界版カンナエの戦いとも呼べるものである。

 

 おじさん、前世ではそういうのも好きだった。

 三国志とかも。

 

 つまり、その笑いは同好の士を見つけたものだったのだ。

 

 あの戦いは……と解説を始める。

 黒板に両陣営の布陣を図にして、蛮族たちにもわかりやすく。

 

「王国内で軍事衝突が起こるという例は多くありません。そも魔物という敵がいる以上、貴族同士で争うことにあまり意味がないと言いますか。それでも退けないことがあるということですわね」


 丸っとお昼までの時間を全部使ったおじさんだ。


「うおおお! 面白かったー!」


 ケルシーは途中からだが、すっかり話にのめり込んでいた。

 おじさんの語り口も良かったのだろう。

 

「軍師になりたい!」


 蛮族軍師の誕生である。

 

「ばっかね、あんたに軍師ができるわけないでしょうが」


 さすがに一号からツッコミが入った。

 

「あんたの場合、真っ先に突っこんでいくわね」


 自己紹介をする聖女である。


「なにおー! 戦争かー」


 しゅしゅと拳を放って威嚇するケルシーだ。

 

「はいはい。もうそろそろ昼食の時間ですから、ここで切り上げましょうか。魔法陣学は後日ということで」


 おじさんが講義の終わりを宣言した。

 同時に蛮族たちは走り出す。

 いつものことだ。

 

 彼女たちは食堂棟の席を取りに行くのである。

 脳筋三騎士も一緒になって。

 

『偉大なる主殿、よろしいかな?』


 ザラクシスである。

 ちょうどいいタイミングだ。

 

『かまいませんわよ』


『魔物どもが我の巣に引っかかり始めたのですよ』


『承知しました。すぐに向かいます』


 セロシエにおじさんが声をかける。

 

「ロクロスに百鬼横行(パレード)が迫っています」


「え?」


 と絶句するセロシエ嬢だ。

 おじさん、ここまで心配をかけないように報せないでいた。


「心配ありません。今からわたくしが向かいますので。午後からの講義はバーマン先生に見てもらってくださいな」


 サイラカーヤと侍女を呼ぶおじさんだ。


「リー様! 私も、私も連れて行っていただけませんか? 役には立たないかもしれません。ですが、私も貴族なのですから」


 真っ直ぐにおじさんの目を見るセロシエ嬢だ。


「……危険かもしれませんわよ」


「承知の上です」


「いいでしょう。セロシエ、あなたの力もどこかで役立てることができるはずですから。がんばるのですよ」


 ふわりとした笑みを浮かべるおじさん。

 

「アリィ! 聞いていましたね? 後は任せます!」


「リー様の望まれるがままに」


 その返答に満足して、おじさんたちは転移するのであった。


誤字報告いつもありがとうございます。

助かります。

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