第百四話 俺と小由里ちゃん
優七郎との話は続く。
「小由里ちゃんと付き合い始めたこと、居駒さんにもいうんだろう?」
「もちろんそのつもりだ」
「でも話を聞く限り、彼女もお前のことをあきらめそうなタイプじゃなさそうだが」
「そうなんだ」
「それでも言わなきゃならないと言うことだよな」
「彼女があきらめてくれるかどうかはともかく、言わなきゃならないと思う」
「彼女の方は、部活でいつも一緒だということだから、気まずい思いをすることになるかもしれないな」
「それは仕方がない。つらいところではあるけど」
「ただ逆に夏音ちゃんのように、もっと積極的になる可能性があるな」
「そんなことって、いや、あるかもしれない……」
「お前としてはどう思っているんだ?」
「俺は彼女とは仲のいい友達、そして先輩後輩でいたい」
「それが出来ればいいんだけどな」
「俺も彼女とこの二か月ほどで結構親しくなった。恋というわけじゃないけど、一緒にいて楽しいし、好意は持っているんだ。疎遠にはなりたくないなあ……」
「気持ちはわかる」
「このまま仲のいいままいければいいと思っているんだけど」
「ただお前の話を聞く限りじゃ、夏音ちゃんと同じで、お前を恋人にしたいと思っているようだ。いい友達、先輩後輩でいたいという気持ちはいいと思うんだけど、彼女の熱い気持ちは充分心に入れておいた方がいい」
「ありがとう」
「まあでも小由里ちゃんと相思相愛になれて、よかった。俺も幼い頃からお前達を応援していたんだぜ」
「ありがたいと思っている」
「でもこれからが大切だぜ。これからどんどん仲を深めていって、結婚するんだ」
結婚。そうなったらいいなあ……。
「お前と鈴菜ちゃんの間も応援させてくれ。二人の結婚式、楽しみにしているぜ」
「ありがとう。期待していいぜ、って、俺達は友達だって」
顔を赤くする優七郎だった。
部活の時間。
裕子先輩には部活の後、話をさせてください、とお願いをした。
弥寿子ちゃんには、裕子先輩と話をした後、これからの関係について話をさせてほしいと言った。
二人に小由里ちゃんと付き合い始めたということを伝えるのだ。
つらく、気が重くてしょうがないが、言わない方が彼女達を傷つけることになってしまうだろう。
弥寿子ちゃんは部活の間、いつもほど体を寄せてはこなかった。
そして、「好きです」というささやきもない。
ちょっと残念な気がした。いや、残念がっていてはいけない。
「これからの関係について話をさせてほしい」
と俺が言った後、彼女の方もいろいろ悩み始めているようだ。
俺は胸が痛くなってくる。
まず裕子先輩。
俺が小由里ちゃんと付き合い始めたことを言うと、
「それはよかった。幼馴染で恋人どうし、素敵じゃないか」
と祝福してくれた。
俺はホッとしたのだが……。
「でもわたしはきみのことが好きだ。今はその子が好きで、恋人どうしなのかもしれないが、わたしは決してあきらめない。いつか、きみと相思相愛になる」
そう力強く言うのだった。
裕子先輩も俺のことをあきらめる様子はないなあ……。
そう思いながら、待っていてくれた弥寿子ちゃんに、今度は話をする。
弥寿子ちゃんは、小由里ちゃんのことを聞いた瞬間、涙目になった。
涙を流しそうになるのはなんとかこらえていた。
申し訳ない気持ちになる。
「ごめん。今度こそあきらめてほしいんだけど」
俺は頭を下げながらそう言った。
それから、
「部活の後で一緒に行っていた喫茶店も、これからは行けない」
と言うことも伝えた。
俺も彼女と一緒にに行くのが、だんだん楽しくなってきていたので、行けなくなるのはつらいものがある。
しばらく涙をこらえていた弥寿子ちゃんだったが、やがて、涙を拭くと微笑んだ。
「先輩、以前もいいましたけど、わたしはあきらめません」
「弥寿子ちゃん……」
「今よりもっともっと先輩を好きになって、恋人どうしになります!」
そして、
「今日一緒に喫茶店に行くのはあきらめますけど、またお誘いします。わたし、先輩のことが大好きなんです」
と言う。
弥寿子ちゃんも、俺のことがますます好きになったようだ。
これで、夏音ちゃんも裕子先輩も弥寿子ちゃんも、俺のことを嫌いにになってあきらめるどころか、好意がますます上昇することになってきた。
うれしいことではある。
好意はとてもありがたい。このまま仲良くしていきたいと思うし、疎遠にはなりたくない。
今の関係を維持していくのが一番いいんだけど……。
家の前に来ると、小由里ちゃんがいた。
一旦家に帰って、着替えてきている。白いブラウスと白いスカート。清楚だ。
今日、
「よかったら晩ご飯作ってあげるよ」
と言ってくれたのだ。
俺も彼女の手料理が食べたくてしょうがなかったので、喜んでOKした。
それで、家の前で待ち合わせをした。
おいしいと評判の彼女の料理。とても楽しみ。
「森海ちゃん、おかえりなさい」
最近全く言われなかった言葉だ。うれしい。
一緒に俺の家に入る。
彼女が俺の家に来たのは何年ぶりだろう。
これからは、たくさん来てもらって、やがてはこの家に一緒に住んでもらおうと思っている。
俺は着替えた後、小由里ちゃんと一緒に買い物に行く。
「じゃあ、出かけよう」
「森海ちゃん、好き。愛しています」
小由里ちゃんが微笑む。素敵だ。
「俺も小由里ちゃんが好きだ。愛してる」
俺と小由里ちゃんは、抱きしめ合い、唇を近づけていく。
ああ、いい匂い。柔らかいからだ。
ずっとこうしていたい。
俺達は、お互い幸せな気持ちになりながら、唇を重ね合わせていった。
今回が最終回になります。
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「先輩に振られた俺。でも、その後、いとこと幼馴染が婚約して結婚したい、という想いを一生懸命伝えてくる。俺を振った先輩が付き合ってほしいと言ってきても、間に合わない。恋、デレデレ、甘々でラブラブな青春。」
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