神の剣技
「うおぉぉお!」
バルのシールドバッシュは魔物を数体纏めてふき飛ばす。
「バル、前に出過ぎるな!殲滅は無理だ!
帝都からの援軍が来るまで戦線を維持するんだ!」
ジンの言葉に反応したバルは周囲の魔物を弾き飛ばし後退する。
「すまん。だが、援軍は間に合うのか?」
「さぁな。魔物の大発生が確認されてすぐに帝都に救援要請が出されているはずだが部隊の編成や移動などで10日は掛かるだろう」
「まぁ、間に合わんじゃろうな」
「はは、じゃあダメじゃねぇか」
「なに、どんな奇跡が起きて命を拾うか分からん。くたばる瞬間まで諦めんさ」
バッカスの槍がスケルトンを貫く。
膨大な魔物の群れは命掛けで戦う冒険者や兵士、傭兵、義勇兵達によってなんとか押し止められている。
しかし、それも時間の問題だろう。
休みなく続く戦闘で疲労が限界に近い人間に対して魔物は次々にやって来る。
次第に脱落する者も増えて来た。
それは魔物と人間との戦力の開きが更に大きくなると言う事だ。
更に悪い事は重なる。
魔物の群れの中から飛び出した3つの首が見えた。
「こりゃあマジでヤベェかもな……」
その首の主は3体の竜種だったのだ。
唯でさえ魔物に押され気味の状況で3体の竜種は致命的だ。
流石のジンとバッカスも自らの命を失う覚悟をした。
ズバババババッ!
覚悟をしたのだが……
「なっ!」
「なんじゃ!なにが起きておる⁉︎」
「わかんねぇ、どうなってんだ⁉︎」
3体の竜種を含む群れの中でも強力な魔物が次々と斬り刻まれて行く。
唖然とする冒険者達の前で魔物の命が狩られて行った。
それを成したのは1人の少年だった。
少年が剣を振るうと幾多の魔物が細切れになる。
「あ、あいつは!」
「知っているのかジン!」
「ああ、あいつは『神域の剣士』フィルだ!」
「……Sランク冒険者か⁉︎」
バルの声に反応したのか少年……いや少年では無い。
小人族の青年がジン達の方へとやって来る。
「おい、お前達。この防衛戦の指揮を執っている奴に連絡をとれ。
前線を防壁の側まで下げさせろ」
「わ、分かった!」
ジン達は本陣に戻り指揮を執っていたギルドマスターにフィルの指示を伝える。
するとギルドマスターは即座に指示を出した。
防衛戦に参加していた人間が防壁まで退がると笛の音が戦場に鳴り響く。
そして…………
リンッ!
…………視界に入る魔物は全て斬り裂かれた。
「おいジン! なんで剣を一振りしただけで見渡す限りの魔物が切り裂かれるんだ⁉︎」
「俺に聞くな!神域の剣士だからな、神の剣技が人間には理解出来る訳がないだろ」
目の前で起きた現象を理解する事は出来ない。
1つだけ分かることは俺達は今日も酒を口に出来ると言う事だけだ。




