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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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王国の戦力【Others Side】

 第一種指定災害が討伐された後では、バルディア王国は非常に忙しい日々を過ごすことになりました。

 フルフュールは現代の人類では誰も遭遇経験がなく、未知の要素にも警戒が必要だからです。大昔の資料では不明点も多いので、警戒は厳にしなければなりません。


 特に警戒すべきは、ほかの個体は存在しないのか、本当に一匹だけなのかということになります。

 倒された魔物につがいがいたら?

 親や子がいたら?

 あるいは仲間だっているかもしれません。


 それに別の魔物たちが刺激を受けてしまった可能性も十分にあります。

 森に潜んでいた魔物が平地に溢れ出てしまっては、往来の危険性も上がりますので、通商の安全性の確保も王国としては気にします。

 動かせる戦力は総出で警戒に当たる必要に迫られていたことになります。


 民間は別にして、公務員としての騎士と兵士がその戦力として任務にあたっていました。



 国家防衛の要となる騎士団は、大別して二つに分けられます。


 ひとつは近衛騎士団で、王宮を守護するのが主な役割です。

 忌憚のない意見を述べる者たちによって囁かれる真実として、彼らは実質的には戦闘部隊ではなく儀礼的な存在です。

 ただし、近衛の中でも王族を警護する者たちだけは、例外的に実力者が務めることになります。必然でもあるでしょう。


 結局のところ、近衛騎士は式典などの時のみに召集される予備役を含めても三百人程度しか存在せず、一部の例外を除けば実力も数の上でも戦力としては大きくありません。戦力というよりは王宮の警備組織と考えるのが無難です。

 細かいことはさておき、近衛騎士というのは対外的な有事において動かせる戦力には該当しないということになります。


 また、近衛騎士団は編成の全てが騎士の身分であり、貴族、あるいは貴族の系譜に連なる者にのみ資格が与えられます。

 王宮を警備し、王族や機密に近い場所に出入りする関係上、身元の確かな人物でなければならない事情もありました。



 もうひとつは王国守護騎士団で、こちらのほうは強大な軍事力そのものです。

 通常は正式名称で呼ばれることはなく、王国騎士団、もしくは単に騎士団と呼ばれます。

 その規模は大きく、およそ五千から七千人で編成される軍団が、公表されているだけでも第四十七軍団まで存在します。

 軍団は王都に駐留する部隊以外にも国境や魔物への警戒が必要な土地など、国内の各地に散らばっています。例外的には各地を巡る軍団も存在しています。


 騎士団長のアルノーと副団長のグリューゲルは、各軍団長を支配下に治める王国守護騎士団のトップを務める者となります。

 刑死者の勇者とは気軽に話していますが、実はかなりの地位に就く者たちであり、その気さくな態度は驚くところかもしれません。


 大戦力をまとめ上げる騎士団長とはいえ、指揮権の上位には軍務卿が存在しています。

 政治的な意味で騎士団をどのように動かすかを考えるのが軍務卿ですが、その更に上には王もいますので、実質的に王の意向を受けた軍務卿の命令に従うのが王国騎士団となります。独自の判断で騎士団を動かすのは緊急時に限られました。


 王国守護騎士団は多数の人員が必要になる関係上、全員が騎士の身分とはなりません。

 各軍団の編成はおよそ五千から七千ですが、八割程度は平民から募集した兵士で構成されます。

 残りの二割程度が騎士の身分となりますが、こちらもほぼ全てが平民であり、一部の上級騎士だけが貴族で構成されます。

 危険の最前線にいると称しても過言でない騎士団ですので、代々武門と呼ばれる家を除き、身分の高い者は必然的に望まない職場となっています。


 兵士は常時募集があり、余程大きな問題を抱えている者でもなければ、年齢制限はあっても基本的には誰でも就くことが可能です。

 騎士は年に一度の試験があり、募集人数も都度で決められていますが、合格することができれば平民でもなることが可能です。


 実力主義の王国守護騎士団は、能力があれば平民でも出世が可能な職業です。

 王族や閣僚と接しなければならない団長や副団長、そして軍団長クラスは貴族でなければなりませんが、軍団長に次ぐ位であれば、平民でも至る例は何人もいました。




 現在の王国守護騎士団はどの軍団も忙しくしています。

 短いスパンで指定災害クラスの魔物が多く出現している現実があった上、ここにきて歴史的な事件レベルの第一種指定災害の登場です。それは警戒もするでしょう。


 フルフュールの出現した地域に向ける警戒はもっともですが、それ以外の場所でも他国への警戒やさらなる指定災害の出現に備え、気を引き締めていました。


 厳戒態勢に近いものですから、危険な魔物などは姿を現せば即座に倒されてしまいます。

 よって、魔物退治を請け負っていた刑死者の勇者には出番が回っていかないことになります。


 今現在、仕事はなくても金には当てのある彼でしたが、このままでは商売あがったりになってしまいます。

 もっとも、心配性とは無縁の男です。のんびりとした日々を過ごしていました。



 月の勇者と死神の勇者は大きな戦闘を経て思うところがあったのか、自主練に力を入れる日々を送っていました。

 少し前までは戦闘訓練など最小限の義務を果たす程度にしかしていなかったにもかかわらずです。人間、変われば変わるものです。


 刑死者の勇者は偉そうにアドバイスをしていましたが、やはり特殊能力の使い方については個々で大きく違うこともあり、アドバイスにも限界があります。

 少女二人はなにかに目覚めたかのように、馬でどこかに移動しては秘密特訓に明け暮れていました。



 暇を持て余した刑死者の勇者でしたが、そうなればそうなったで遊び惚ける男です。

 お気に入りの娼婦の元を毎日のように訪れ、仲良くなったワッシュバーン組系コロンバス会の男たちと遊んだりと楽しくしていました。


 そんな折、彼が心の友と呼ぶ男が訪ねてきました。

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