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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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思わぬサポートの真実

 ヘビを倒した後には、真っ直ぐ屋敷に戻ることにした。

 王都で騎士団かマクスウェルあたりに報告はするが、別に俺は急いでいないし、多少の疲れもあった。それに服もボロボロだ。


 戦闘が終わった直後に、慌てて馬を取りに戻ったキョウカとシノブだったが、ヘビの死骸の上に立つ俺のところまでやってきてくれたのは、いま考えれば助かった。

 二人が俺の馬を連れた状態で逃げてしまえば、徒歩で帰るしかなかったのだ。第一種指定災害との戦闘後にそれをやるのは精神的に少々辛い。


 移動は助かったが、やはり気になるのはシノブの特殊能力と思われる現象だ。拳闘無比の感覚がおかしくなった原因は確認しておきたい。

 先頭で楽しそうに馬を走らせるシノブに追い付き、問い質す。


「シノブ、ちょっと待て。お前、俺に何をやった?」

「あっ、さっきはごめんなさい!」

「ちょっと! シノブに因縁つけてんの!?」


 うるせえ奴だ。シノブとの間に割り込むようにして、キョウカがしゃしゃり出た。


「そうじゃねぇし、怒ってるわけでもねぇ。シノブ、何をしたのか教えろ」


 本当に怒っていないし、悪党面を少しでも柔らかく見せるよう、特別に努力してやる。大して変わらんだろうが。

 努力が報われたのかキョウカが黙り、シノブは強張った表情を和らげて話を続けてくれた。


「その、大門さんは時間制限つきの特殊能力を使ってるのかなと思って、最初はその時間を引き延ばしてみました」

「引き伸ばす、だと? そんなことができんのか?」

「はい。失敗しちゃったみたいですけど」


 どういうことだ。時間が延ばされた代わりに弱まった?

 そうか、そういうことか。


「だったら、その次は時間を縮めてみたわけか?」

「そうです。キョウカちゃんに逆をやってみたらって言われて」

「ふふん、そのおかげで勝ったじゃん」


 得意げな様子のキョウカがなんとなくムカつく。


「……さすがはシノブだな! お前は良くやってくれたぜ。まああれがなくても勝てただろうが、早く終わったのは助かったぜ」

「ちょっと、あたしのアイデアもあるって言ってんのに!」

「シノブなら自力でも思い付いたろうよ。で、キョウカ。お前はほかにどんなサポートをしてくれたんだよ?」


 結果的に楽に倒せたはしたが、急な能力の変化には俺だってかなり焦った。

 やられる身としては勘弁して欲しいのが本音だが、せっかく役に立ったと喜んでいるシノブに言うのも大人げない。

 だが妙に得意げなキョウカには一言いいたくもなる。実際、能力のサポートはシノブしかやっていないように思えたからな。


「は? あんた、気付いてなかったわけ?」

「あ? なにをやったってんだよ?」


 あれ、キョウカの奴もなにかやってたのか?

 本当に分からんのだが、ちょっと気まずいな。


「あの、フルフュールは幻影を見せる能力を使っていました。キョウカちゃんはそれを無効化してくれてたんですよ?」


 マジかよ。いや、全然、分からなかった。

 ナイスフォローだとは思うが、自覚がないとありがたみが感じられない。


「……お、おー、あれな! キョウカ、お前も良くやってくれたもんだぜ。助かった!」

「全っ然、心がこもってない! バカには見えない幻影だったのかもね! なんか損したような気分になったじゃん!」


 即座に見抜かれた。鋭い奴め。


「いや、あれだ! お前の能力が凄すぎて、ヘビ公がその幻影を使ってることにすら気づかなかったってことだ! すげえなあ、キョウカはよ」

「本当に! キョウカちゃんは凄いよ!」


 笑顔で本音を言うシノブと、苦し紛れに言う俺の対比が自分でも辛い。

 実際に気付かないうちにそんな幻影とかいう能力の応酬があったとは気づきもしなかった。


 幻影とやらがどんな効果を及ぼしていたのか謎だが、果たしてそいつを使われた状態でも俺は勝てたのか?

 全く予想がつかない。普通にキョウカも重要な役割を果たしていたことになりそうだ。


「……悪い、今回はキョウカとシノブのお陰で勝てたことになるな。マジで助かったぜ」

「そんな」

「当然。あたしらのサポートのありがたみ、忘れないでよ」


 偉そうに言う奴だ。

 前線で体を張ったのは俺なんだがな。まあいいか。


 シノブの胸元に収まって眠るクリーム色のウサギを何となく見ると、ごちゃごちゃ言うのも考えるのも馬鹿らしくなってしまった。

 早く帰って俺もひと眠りしたいものだ。

以前にもありましたが、誤字報告ありがとうございます。とても助かります。

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